心臓病や糖尿病にもつながる!?異所性脂肪(エイリアン脂肪)を減らそう!

気になるお腹まわりや太ももなど、脂肪がつきやすい場所は決まっているものと思いますよね。ところが最近では、もともと脂肪をためる細胞があった場所ではない、内臓や筋肉の中、心臓の血管の周りにまでたまる「異所性脂肪(エイリアン脂肪)」が問題になっています。どんな危険があり、対策はどうしたらよいのでしょうか?

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心臓病や糖尿病にもつながる!?異所性脂肪(エイリアン脂肪)を減らそう!

体に潜むエイリアン 異所性脂肪とは

体重や脂肪を減らすダイエットが多くの人の課題となっていますが、“脂肪”は、人の体に欠かせない存在です。脂肪は体が活動するために必要なエネルギーをたくわえるだけでなく、体温を維持したり内臓の位置を適切に保つという役割も持っています。脂肪をたくわえる細胞(脂肪細胞)は、種類や存在する場所によって、いくつかの呼び名があります。代表的なのが、“白色脂肪細胞”と“褐色脂肪細胞”です。

“白色脂肪細胞”は、血液の中の中性脂肪(トリグリセリド)を細胞の中に取り込んで風船のように膨らみ、たくわえる役割があります。成人では、全身に400億個ほど白色脂肪細胞が存在するといわれています。しかし、白色脂肪細胞の数は、おもに思春期に増えるため、このころに肥満を経験すると、もっと数が増えてしまうことがあります。

いっぽう、同じ脂肪細胞という名前でありながら、むしろ脂肪を熱に変えてエネルギーを消費する役割を持っているのが“褐色脂肪細胞”。褐色脂肪細胞は、首の周りや肩甲骨のあたり、心臓や肝臓の周辺など上半身に集中して存在しています。この褐色脂肪細胞は、赤ちゃんのころにもっとも多く、小さな体を温める大切な役割を担っています。大人になると褐色脂肪細胞は減ってしまい、40歳前後では大幅に減少します。褐色脂肪細胞の減少によってエネルギーの消費量が減ることが、“中年太り”のひとつの原因になると考えられています。

さて、褐色脂肪細胞はもともと数が少ない上に存在する場所が限定されていますが、白色脂肪細胞は全身のどこにでもあります。代表的な場所は、下腹部(お腹周り)、お尻や太もも、背中、腕の上部など。こうした、皮膚の下に存在する白色脂肪がいわゆる“皮下脂肪”です。女性のほうが男性よりも皮下脂肪が多くなります。もうひとつ、肝臓などの内臓の周りについているのが“内臓脂肪”です。

皮下脂肪にしろ内臓脂肪にしろ、白色脂肪細胞は女性ホルモンのひとつ“エストロゲン”の働きに関わったり、炎症を抑える物質を分泌したりといった、体の機能を調節する大切な役割も持っています。もちろん、これは脂肪が適量存在する場合。肥満で脂肪が多くなりすぎてしまうと、こうした大切な働きは悪いほうに変わってしまいます。たとえば、血流を調節する物質が過剰に分泌されるようになり、高血圧の原因になってしまうこともあるのです。

このように、脂肪は「あるべき場所に」「適量」存在することが大切です。ところが、最近では皮下脂肪や内臓脂肪など通常の脂肪の増えすぎに加えて、本来は脂肪があるべきところではない肝臓やすい臓の中、筋肉、心臓血管系といった場所に脂肪がたまる、“異所性脂肪”が問題になってきています。異所性脂肪は、「3番目の脂肪」や「エイリアン脂肪」ともよばれていてます。異所性脂肪は、運動不足や高脂質な食事、過食などが原因で、脂肪がうまく燃焼できなかった結果生まれてしまいます。やっかいなことに、目立つところにつくわけではないので、一見やせている人でも異所性脂肪がついているおそれがあります。
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たまりすぎは命にかかわる病気にも・・・

異所性脂肪は、通常では脂肪がつきにくい場所に脂肪がついてしまうため、筋肉や心臓や肝臓などの本来の機能を妨害してしまうことになります。また、血糖量をコントロールするホルモン“インスリン”の働きを弱めてしまいます。この状態を放っておくと、動脈硬化や糖尿病、脂肪肝などの生活習慣病が引き起こされることも。これらの病気が重症化すると、命にかかわることもあるのです。

異所性脂肪の代表的な症状が、肝臓の中に脂肪がたまる“非アルコール性脂肪性肝疾患:NAFLD”です。肝臓が糖を分解してエネルギーに変える仕組みが弱まったり、やがては肝臓の組織が繊維化して“非アルコール性脂肪肝:NASH”につながったりするなど、重大な病気にかかわります。

すい臓に脂肪がたまる“脂肪膵(しぼうすい)”も軽視できません。すい臓の重要な機能であるインスリンの分泌が弱まり、血糖量をコントロール機能が下がってしまいます。糖尿病などの重大な病気につながるだけでなく、多すぎる量の血糖が血管を傷つけ、血管や心臓の病気につながるリスクが高まってしまいます。

また、筋肉に脂肪がたまってしまうこともあります。筋肉の中でも、骨と骨をつないで「立つ」「歩く」「走る」「ものを持ち上げる」といった意思で行う動作をコントロールするのが“骨格筋”です。骨格筋は糖をエネルギーとして消費する大事な役割を持っているのですが、この中に脂肪がたまると、全身の細胞の、糖を取り込む機能が低下します。余った糖は脂肪に変えられてまた蓄積され…と悪循環に。筋肉の中に脂肪がたまるというのは、いわゆる「霜降り肉」状態です。すき焼き用の牛肉ならば美味しい肉のイメージですが、人の筋肉でこうなると健康を損なうことになってしまいます。

また、異所性脂肪が心臓の周辺の筋肉に増えると、冠動脈など大きな血管の健康を損なってしまいます。糖尿病と同様に血管を傷つけ、動脈硬化や心筋梗塞といった重大な病気につながるのです。
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異所性脂肪のチェック方法

異所性脂肪の問題を判断する重要な指針は、やはり肥満です。すい臓の脂肪は、BMIが高くなるほど増えることが知られています。「体重kg÷身長m÷身長m」で表せるBMIが25以上(肥満)の人は、特に気をつけなくてはなりません。

とはいえ、皮下脂肪は少なくても内臓脂肪が多いなど、やせている人にも異所性脂肪は蓄積している場合があるので、体型だけでかんたんには判断はできません。

本気で脂肪の蓄積具合をしっかり調べるならば、病院のMRIやCT検査で脂肪の蓄積を検査する「MRI心臓周囲脂肪測定」といった方法があります。非アルコール性脂肪肝の場合、肝臓に針を刺して組織の一部をとって調べる検査をします。とはいえ、患者側への負担も大きく、医療機関でなければ行うことができない検査ですから、誰でもかんたんに受けられるというものではありません。

まずは、毎年受けている健康診断などをしっかりチェックしましょう。血液検査で、ALT(GPT)や血管の中にある中性脂肪(TG)やLDLコレステロールの値が正常値より高い、HDLコレステロールが正常値より低いといった、肝機能や脂質代謝などの生活習慣病に関係する数値に異常がある人は、異所性脂肪が多く蓄積している疑いがあります。

家庭用の体組成計(体重計)には、内臓脂肪の量のめやすを表示してくれるタイプがあります。内臓脂肪は異所性脂肪の量と関係していることが多いので、これも参考になります。家庭用体組成計は電気抵抗を利用して、ごく簡単に測っているものなので精密な値ではありません。ですが、できるだけ毎日決まった時間に測るなど条件をそろえて測り続け、数週間から数ヶ月の変化を見たときに高い値が続いたり、内臓脂肪の量が増えていくなどの変化があったら注意しましょう。
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異所性脂肪対策その1 適切な食事

異所性脂肪だけをターゲットにして減らす、対策するということは難しいのですが、幸いにして内臓脂肪を減らす方法とかなり共通点があります。内臓脂肪の削減は生活習慣病の予防の基本ですので、参考にできる資料がたくさんあるのです。

まずは、極端にエネルギーが多かったり脂質や糖質が多い食生活をしていないかチェックしましょう。農作業のような重労働をしていない成人の場合、1日に必要なエネルギーは女性であれば1800~2000kcal程度、男性ならば2200~2400kcal程度になります(個人差がありますので、健康診断などで指導される数値も参考にしましょう)。たとえば、揚げ物のように、1食で1000kcal以上の高カロリー・高脂質な食事を取ったとすると、これだけで1日に必要なエネルギーの半分程度を取ってしまうということになります。あと2食を普段と同じように600~800kcal程度ずつ食べると、カロリーオーバーになってしまいます。

また、食べ方にムラがあると血糖量コントロールがうまくいかなくなり、余った糖が脂肪になりやすくなります。また、「朝食抜きだからカロリー減」という思考は、実は落とし穴。朝食を食べない人では、無意識のうちに昼夜の食事のボリュームが増え、1日で取ったエネルギー量は朝食を食べたときと変わらないという報告があります。そもそも人は食べたものを少なく見積もりが」。「こんなに減らしたからダイエットできている」は意外とあてにならないことが多いのです。どちらかといえば、「1日3食、腹八分目」が達成できた日を基本パターンにして繰り返すほうが、食べすぎを防ぎやすくなります。

バランスのよい食事でカロリー控えめを目指すならば、農林水産省の「食事バランスガイド」を参考にしたり、「1日の目標の野菜と果物の量350g、うち200gは緑黄色野菜」といった目標を取り入れる方法があります。生活習慣や食品の入手のしやすさなどは人によって異なるため「1日30品目を食べなければ」といった高い目標はむしろ挫折につながりやすくなります。

異所性脂肪を気にしている人が控えたほうが良いものといえば、残念ながらお酒と脂質たっぷりの食事です。アルコールは、肝臓が糖を分解する仕事を妨害し、脂肪肝につながってしまいます。1日あたりビール中瓶500ml以下、といった節度ある飲み方をしましょう。また、脂質(あぶら)の味は本当にくせになる美味しさだといわれます。せめて、バターやクリーム、チーズを乗せたり、マヨネーズをたくさんかけたり、ラーメンに背油をかけたり、シンプルな調理法で美味しく食べられるものを揚げ物にしたりするといった「脂質プラス」はひかえるところから始めましょう。
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異所性脂肪対策その2 運動と定期的な体重・血液検査

異所性脂肪とリンクしている内臓脂肪は、比較的短期間で減らしやすいというありがたい特徴があります。これらの脂肪を減らすためには、運動でエネルギーとして使ってしまうことが一番。特に、食後2時間での軽い運動は、血糖値のコントロールにもつながるのでおすすめです。ウォーキングやスロージョギング、外食の後はいつもより少し遠回りして歩く、階段の上り下りを取り入れる、などもいつでも実践しやすいですね。

反対に、「普段はなかなか時間がとれないけれど、週末はゆっくり運動できる」という人にも朗報です。みっちり筋力トレーニングをしたり、長距離のランニングや水泳といった強度の高い運動を定期的にまとめてする場合でも、毎日少しずつ派と同じように運動の効果があるそう。ウォーミングアップやストレッチをしっかりして取り組みましょう。

内臓脂肪、そして異所性脂肪はすぐに減少しやすい反面、気を抜くとすぐに増加してしまいます。一時の運動や食事制限で数字に表れたとしても、安心してまた同じ生活習慣に戻っては意味がありませんね。定期的に体重や体脂肪を量り、健康診断等で血液検査結果を確認して、良い生活習慣を継続させるようにしましょう。
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<参考文献>
■日本内科学会雑誌
『Ⅳ.最近の話題 1.肥満症と異所性脂肪,脂肪毒性』

■一般社団法人加古川医師会 健康一口メモ
『No.191 「異所性脂肪について」』

■株式会社ヤクルト ヘルシスト215号
『第3回 肥満 脂肪細胞の正体』

■農林水産省
『「食事バランスガイド」について』

■厚生労働省 e-ヘルスネット
『メタボリックシンドロームを防ぐ食事』

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