夏の花粉症

花粉症といえば「スギ」を思い浮かべる人も多いと思います。スギ花粉が飛散するピークは2月から4月。この時期を過ぎれば後の季節は花粉症とは無縁、と思っていませんか?実は、5月から10月の夏秋の季節にも花粉症の原因となる植物が多くあります。これらの植物の花粉は、飛ぶ距離が短いことが特徴。夏や秋に花粉症の症状が出たときには、意外と近くで花粉症の原因になる植物の花が咲いているかも?代表的な植物と夏ならではの対策をご紹介します。

<内容>

夏の花粉症

夏の花粉症とは

花粉症といえばスギやヒノキ、2月から4月にかけて症状のピークというイメージがありますが、5月から10月ごろといった、夏や秋に症状が出る花粉症があることをご存知でしょうか?夏の花粉症の原因となる植物は、スギのような大きな木ではなく雑草が多いため、“草本花粉症(そうほんかふんしょう)”とも呼ばれます。草本花粉症は、スギやヒノキの花粉症と同じ季節性アレルギー性鼻炎の一種です。スギ花粉による花粉症と同様に、花粉が鼻や目の粘膜に付着すると、アレルギーを引き起こす物質が放出されるため、くしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの症状が出ます。

花粉症の症状を持つ人は、いくつもの種類の花粉に反応することが少なくありません。東京都が10年に1回行っている詳細な調査では、スギ花粉症の人のうち、3割近い人が初夏にはカモガヤの花粉にも反応し、2割近い人が秋にはブタクサにも反応するという結果が報告されています。

つまり、スギ花粉症の症状で困っている人のうち、4、5人に1人は夏にもくしゃみや鼻水、目のかゆみなどの辛い花粉症の症状が出る可能性があるということです。スギ花粉症ならば、天気予報でも「花粉が多く飛びます」などの情報があるので注意することができますが、夏の花粉症にはこうしたサポート情報がほとんどありません。

5月以降に、「くしゃみが止まらなかったり、目がかゆくて辛いことがあるけど、スギ花粉のせいじゃないよね…?」といった悩みを抱えている人は、夏にも花粉症の症状が出ている可能性を考えてみましょう。

何の花粉に反応しているのか確かめるには、スギ花粉症と同じように耳鼻咽喉科などの診療科を持つ病院で血液検査を受けることでわかります。血液検査の費用は健康保険の種類によりますが、3000円~5000円程度かかることが多いようです。また、血液検査をしてから結果が出るまでに1週間ほど時間がかかります。
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夏の花粉症の原因

夏の花粉症の原因となる草花は、多くが背丈の低い雑草です。これらの草花は、道ばたや河川敷、草地などに生えていることが多く、スギやヒノキのように人工的に植えられているわけではありません。したがって、花粉症の原因となる草花が生えている場所は、はっきりとはわからないことがほとんどです。しかし、スギやヒノキの花粉は風に乗って数十kmも飛んでくるのですが、草花の花粉は飛んでも数十mから、数百mくらい。つまり、夏に花粉症の症状が出たとすれば、原因になる植物がすぐそばにあると考えられるのです。

花粉症の症状を軽くするには、なんといっても花粉に接しないことが大切です。そこで、代表的な草本花粉症を引き起こす植物と生えやすい場所をご紹介しましょう。

5月から7月に花粉が飛ぶイネ科のカモガヤは、“オーチャードグラス”とも呼ばれる外来植物です。高さは0.5m~1.2mほどで、茎の先に小さな穂のようになった緑色の花がついています。牧草や斜面の緑化などの目的で日本各地で利用されており、北海道から九州まで、ほぼ日本全国で見られます。道ばた、草地、河川敷などにも広がっているため、カモガヤで花粉症の症状がある人は、家や普段よく行く場所のすぐ近くにカモガヤが生えていると考えられます。たとえば、東京都世田谷区では、多摩川の近くでカモガヤ花粉症の人が多い、というように特定の地域で花粉症の原因になることもあるといいます。(▼イメージ写真:カモガヤ)
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身近な雑草が原因に

5月から8月に花粉が飛ぶイネ科のオオアワガエリ(別名“チモシーグラス”)も、牧草としてヨーロッパから輸入された外来植物です。高さは0.5m~1mほどで、茎の先端に穂になった花をつけます。この花穂の形から、英語ではcat's tail(猫のしっぽ)とも呼ばれています。牧草として利用されたことから、今では道ばたや空き地など全国に生息しています。

8月から10月に花粉が飛ぶキク科のブタクサとオオブタクサ(別名“クワモドキ”)も外来植物で、ブタクサは明治時代に、オオブタクサは第二次世界大戦後に日本に入ってきました。ブタクサは高さ0.3m~1.5mほど、オオブタクサは3mほどにもなり、茎の先についた穂のような黄色っぽい雄花から花粉が飛びます。道ばた、空き地、河川敷など日本全国どこでも生えており、線路の内側などに桑に似た葉をつけてたくさん生えているところが見られます。

8月から10月に花粉が飛ぶアサ科のカナムグラは、針金のように強いつるを伸ばして他の植物に覆いかぶさるように茂る、生命力の強い植物です。道ばたや空き地、林や藪のへり、河川敷などどこにでも生えて、緑色の雄花から花粉を飛ばします。

9月から10月ごろに花粉が飛ぶキク科のヨモギは、和菓子の草餅でおなじみの食べられる植物です。春になり暖かくなってきて、まだ丈が低く葉が綿毛に包まれているころに摘んだ葉が美味しい草餅の材料になります。綿毛が葉の裏に密生して白っぽくなるため、葉を裏返してみると見分けやすいでしょう。秋になって高さ0.5m~1mまで伸びると、茎の先に茶色っぽい穂になった花をつけ、花粉を飛ばすようになります。河川敷や道ばた、空き地や土手など日本全国に生えています。(▼イメージ写真:ブタクサ)
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花粉症の症状を軽減するために

スギ花粉症と同じように、夏の花粉症にもマスクや花粉予防眼鏡で対策することができます。ただし、夏の時期にはマスクをつけると暑い、眼鏡の周囲に汗がたまりやすいなどの問題があります。こうした予防グッズを使うのは、症状の出やすい場所に近づくときだけにするなど、適度に利用するようにしましょう。また、汗はこまめに拭いて、あせもなどの皮膚トラブルが起きないようにしましょう。

寒い冬と同じように、夏もエアコンをつけるために窓を閉めきり、換気の回数が減ってしまいがちで、室内の空気の環境が悪くなりやすいシーズンです。また、梅雨の時期は湿度が上がってカビが増えやすくなったり、ホコリやその中でダニが増えたりするシーズンです。カビアレルギーやホコリ、ダニによるハウスダストアレルギーは、花粉症と同じようにアレルギー性鼻炎を引き起こします。これらのアレルギーは、花粉症と同時に症状が出ることでひどくなることがあるのです。

また、夏はゴキブリやガなどの虫に対するアレルギーによって鼻炎の症状が出ることもあります。夏の花粉症対策のひとつは、こまめな掃除といえるかもしれません。エアコンを使うシーズンでも、適宜、窓を開けて換気しながら、ホコリなどをしっかり掃除しましょう。空気清浄機や除湿機を使って空気をきれいにし、カビの発生や繁殖を抑える対策も大切です。

季節にかかわらず、規則正しい生活をして睡眠をしっかりとることは花粉症の症状を抑えるために大切です。喫煙やお酒の飲みすぎはアレルギー症状をひどくしてしまいますから、症状を自覚したら控えるようにしましょう。腸の健康を整えること、ヨーグルトなどの発酵食品やきのこなど食物繊維たっぷりのバランスの取れた食事、そして運動などといった生活習慣は、夏のアレルギー性鼻炎対策にも続けたいものです。
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気をつけたい口腔アレルギー症候群

花粉症の一部は、野菜や果物などのアレルギー症状と関連している場合があります。“口腔アレルギー症候群:OAS”といい、生の野菜や果物を食べると、口の中や喉がかゆい、刺すように痛む、顔が腫れるなどの症状が出ることがあるのです。口腔アレルギー症候群を引き起こす原因となる物質は、花粉の中に含まれるアレルゲンと構造が似ているので、スギ花粉症、夏の花粉症のどちらとも関係があります。また、夏が旬の野菜や果物が多く、生で食べることも多いため、夏の花粉症関連症状として意識しておいたほうがよいでしょう。

夏の花粉症を持っている人の場合、メロンやスイカ、ズッキーニ、キュウリ、トマトやジャガイモ、キウイ、オレンジ、ピーナッツ、バナナ、セロリやニンジン、マンゴーなどの野菜や果物でアレルギーの症状が出ることがあります。これらの食べ物でアレルギー反応が出たときは、医療機関に相談しましょう。生食をやめて火を通すなど、食べ方を工夫すれば、多くの場合、症状が出るのを避けることができるので、医師の指導の下で気をつけて食べるようにしましょう。

夏の花粉症には暑い季節ならではの事情もあります。しかし、何の花粉に対して症状が出ているのか知り、花粉の入ってこないきれいな室内環境を守り、バランスの取れた食事をするというアレルギー性鼻炎対策の基本は同じです。5月以降に鼻や目の症状が続くことがあり、「おかしいな?」と思ったら夏の花粉症の可能性を考えて対策をしてみましょう。
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<参考文献>
■鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会編、ライフ・サイエンス
『鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症-』

■金田初代文、金田洋一郎写真、西東社
『季節・生育地でひける 野草・雑草の事典530種』

■斎藤博久著、講談社
『アレルギーはなぜ起こるか』

■環境省
『花粉症環境保健マニュアル2014』

■厚生労働省
『平成16年版厚生労働白書』

■厚生労働省 リウマチ・アレルギー対策
『第5章 アレルギー性鼻炎 花粉症』

■東京都福祉保健局
『平成19年 花粉症患者実態調査報告書』

■国立研究開発法人 国立環境研究所
『侵入生物データベース』

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