放っておくと危険!キラーストレスが招く病気と対策

ストレスコントロールで病気予防


心理的・社会的なストレスが、心の健康だけでなく、体の健康にも影響を与えるという認識は一般的になってきています。特に、心理的ストレスが長期間にわたって続く“慢性的ストレス”は、うつ病などの心の病気を引き起こす原因にもなりますが、免疫力を低下させる原因にもなるので、風邪などの感染症にかかりやすくなります。
他にも、慢性的ストレスは、胃潰瘍や下痢・便秘などの消化器の病気、心筋梗塞やがんなどの重大な病気につながることもあります。このような病気になる前に、自分でストレスを自覚してストレス源をとりのぞいたり、そらしたり軽くしたりして対策することが大切です。ストレスマネジメントの方法を身につけて、重大な病気を引き起こしかねない“キラーストレス”から身を守りましょう。

<内容>

放っておくと危険!キラーストレスが招く病気と対策

キラーストレスとは?

「ストレスで病気になる」「ストレスで体を壊した」など、ストレスは心の健康(メンタルヘルス)だけでなく、体の健康にも影響を与えます。この認識は一般的になってきており、NHKスペシャル『キラーストレス』シリーズによって紹介されるなど、大きな関心を呼んでいます。

ストレスが引き起こす体の不調は、下痢や便秘、風邪といったものから、十二指腸潰瘍などの治療が必要な病気、脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気まで、多岐にわたります。このような重大な病気、不調につながるストレスを“キラーストレス”といいます。重病の原因になるストレスはもちろんですが、命に関わらない症状であっても、便秘や下痢で起きる腹痛のせいで日常生活や仕事、学業などに支障が出ているとすれば、これも社会生活上のキラーストレスと呼んでもいいかもしれません。
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ストレスを受ける期間の長さで異なる、ストレスの種類

ストレスとは、もともとは物理的な力や圧力を意味しています。重いものを乗せておくと、その重みで下になっているものがひずんだり壊れたりすることがありますね。これが転じて、人の心身に影響を与える重圧をストレスと呼ぶようになりました。ストレス(重圧)には,物理的ストレスと心理的・社会的ストレスの2種類があり、ストレス(重圧)を与えるもと(ストレス源)を、“ストレッサー”と呼びます。

物理的ストレス


暑い、寒いなどの温度変化や音、光、物理的接触などがストレッサーになっているストレスを、物理的ストレスといいます。軽い刺激であれば誰しも日常的に体感しているものですが、たとえば大きな温度変化に急にさらされると病気の発作のきっかけになります。冬場に浴室やトイレなどの寒い場所で高血圧症の人が発作を起こす“ヒートショック”などがその一例でしょう。また、肌に繰り返し触れるものがあると、その場所がかぶれたり腫れたりすることがあるのも、物理的ストレスから発生する症状といえます。

心理的ストレス・社会的ストレス


さまざまな心理的プレッシャーなどがストレッサーになっているストレスを、心理的・社会的ストレスといいます。アメリカ心理学会によると、心理的・社会的ストレスは、ストレスを受ける期間とストレッサーの種類によって、次の5つのタイプに分類できるといいます。


  1. 急性のストレス:ごく短い時間で受ける一過性のストレスです。人前で話すことや、暗算などもストレッサーになります。

  2. 短時間のストレス:入学試験など、何かに挑戦するときのプレッシャーなどです。

  3. 連続するストレス:配偶者の死や大きな災害に遭うなど、困難なできごとが連続して起きる場合のストレスです。ストレッサーによる重圧は大きいのですが、終わりがあります。

  4. 慢性的ストレス:明確な終わりが見えないストレスの連続を指します。体に大きな障害を負う、長期間にわたる介護などがストレッサーとして挙げられます。

  5. 遠い過去に受けたストレス:いわゆる“トラウマ”の原因になるような過去の重大な経験のことです。虐待された経験などが挙げられます。

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ストレスの影響で起こる病気

ストレスの感じ方で異なる症状


ストレスによる心身への影響は、ストレスの続く時間によって異なります。ストレスを感じた直後の時期は、心身がストレスに対抗しようとして、自律神経の働きは交感神経が優位なほうへと切り替わります。このストレスへの対抗は、「戦うか逃げるか反応(闘争か逃走か反応)」とも呼ばれ、目が覚めて心拍数や血圧が上がり、肝臓では体を動かすエネルギー源であるブドウ糖を作るようになります。また、食べたものを消化する活動が抑制されるので、腹痛などの症状となって現れることもあります。

また、カッと怒りがわくような急激な感情の起伏は、心臓の病気や不整脈などのきっかけになることがあります。多くの場合は、もともと心臓に持病を抱えていた人に起こりますが、健康診断で心臓や血管の症状が見つかっていなかった人に起こることもあります。

「抵抗期」と「疲弊期」


ストレスがしばらく続くと、体は「抵抗期」と呼ばれる時期に入り、ウイルスや細菌から起きる風邪、インフルエンザなどの感染症に対する免疫の機能を強めてくれるようになります。ですから、急性のストレスまたは短期のストレスであれば、適度な緊張が体を守ってくれるともいえます。ただし、こうした防御機能には限界があり、人間ではこの抵抗期は1週間~10日ぐらいまでといわれています。この後は、疲弊期と呼ばれる、ストレスへの反応で体の防御機能が弱ってしまう時期に入っていきます。

疲弊期に入ってもストレスフルなできごとが続いたり、慢性的にストレスを抱えているなど、ストレスが長期間続くと、免疫力が低下し、病気につながることがあります。風邪といった誰でも毎年のようにかかる可能性のある病気や、うつ病、喘息、心筋梗塞などの虚血性心疾患などの重大な病気につながることもあります。

胃や腸への影響


胃潰瘍や十二指腸潰瘍がストレスから起きることはよく知られていますが、胃にピロリ菌が感染していると、これらの潰瘍ができるリスクが高まってしまいます。また、下痢や便秘を3ヶ月以上の長期にわたって繰り返す過敏性腸症候群(IBS)もストレスによって発症したり、症状がひどくなったりすることがあります。
胃腸など消化器の病気とがストレスと関連するのは、“腸は第2の脳”といわれるように、腸への刺激は中枢神経を介して脳とつながっており、不安や抑うつといった感覚と連動しているからであるといわれています。

さらに、ストレスがウイルスに対する防御機能や傷ついたDNAの修復機能、細胞の老化などに影響することから、慢性的なストレスはがんにつながるのではないかとも考えられています。
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危険なサインを見逃さない!ストレスセルフチェック

ストレスがどの程度たまっているかを知ることが、ストレスからくる病気を防ぐ第一歩です。簡単なセルフチェックをしてみましょう。

ストレスセルフチェックシート




  1. 最近、ひとつのことに集中できない(1・2・3・4・5)

  2. 胸が圧迫される(1・2・3・4・5)

  3. 顔がピクピクひきつる(1・2・3・4・5)

  4. 毎日忙しくてくつろぐ余裕がない(1・2・3・4・5)

  5. 体がだるい(1・2・3・4・5)

  6. おなかが張る(1・2・3・4・5)

  7. 風邪をひきやすい(1・2・3・4・5)

  8. 胸焼けがする(1・2・3・4・5)

  9. 最近考えをうまく整理できないことがある(1・2・3・4・5)

  10. 胃が痛む(1・2・3・4・5)

  11. 最近気分が沈んで憂うつになることがある(1・2・3・4・5)

  12. 最近落ち着かずじっとしていられないことがある(1・2・3・4・5)

  13. めまいがする(1・2・3・4・5)

  14. 最近職場で緊張することが多い(1・2・3・4・5)

  15. 最近ちょっとしたことでいらいらする(1・2・3・4・5)

  16. 最近常に気が張り詰めている(1・2・3・4・5)

  17. 肩がこる(1・2・3・4・5)

  18. 息切れがする(1・2・3・4・5)

  19. 最近なぜが元気が出ない(1・2・3・4・5)

  20. 心臓の鼓動が速く感じることがある(1・2・3・4・5)

  21. 最近仕事に対して気分が乗らない(1・2・3・4・5)

  22. 頭痛がする(1・2・3・4・5)


このチェック表を、1(いいえ)~5(はい)までの5段階でチェックしてみましょう。
終わったら、22問の回答結果の数字を合計してみます。

合計点と評価



  • 35点以下…A:心と体の疲れは特にたまっていないようです

  • 36~49点…B:心と体の疲れがほんの少したまっているようです

  • 50~67点…C:心と体の疲れが少したまっているようです

  • 68~87点…D:心と体の疲れが比較的たまっているようです

  • 88点以上…E:心と体の疲れがかなりたまっているようです


※出典:『メンタルタフネスな会社のつくり方』株式会社アドバンテッジリスクマネジメント編 ダイヤモンド社

いかがでしたでしょうか? 肩こりや胸やけといった比較的軽い症状であっても、他の症状と共にいくつも感じている場合は、ストレスが心身に影響を与えている可能性があります。(このチェックシートはあくまでも簡易なものです。強い症状を感じているようであれば、医療機関を受診するようにしてください。)

ストレスチェック制度


また、2015年12月から、労働安全衛生法にもとづいて職場におけるメンタルヘルス(心の健康)を守るための「ストレスチェック制度」が始まっています。従業員50人以上の職場であれば、調査票をもとに職場におけるストレスの度合いを判定することができます。ストレスチェックの内容は、本人の同意がない限り会社に開示されることはないため、こうした制度を利用してみることもストレスの度合いを調べる目安になります。
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ストレスは自分で対策できる

心理的ストレスは、自分で対策することでそらしたり、軽くすることができます。ストレッサーに対処する方法のことを“ストレスコーピング”といいます。ストレスコーピングには2種類あり、ストレス源と接触しないようにする、直接解決のための働きかけをする、などストレッサーそのものを変える方法を“問題焦点コーピング”といいます。ストレス源が人間関係であったりする場合、すぐに相手を変えることは難しい場合もありますので、準備や時間を必要とする場合が少なくありません。

もうひとつ、ストレスに対する自分の感じ方を変えてストレスをそらす方法を“情動焦点コーピング”といいます。新しいことを学んだり始めるのはストレスになり得ますが、「ここを攻略すればうまくクリアできる」とゲームのように楽しむ、といった方法も情動焦点コーピングのひとつです。

ストレスコーピングでうまくストレスを軽くするためにとり入れたいのが、瞑想をベースとして作られた、自分の感情を落ち着かせる“マインドフルネス”というプログラム。ゆったり座る、仰向けに寝るなど、楽な姿勢で腹式呼吸を行い、自分の感じている気持ちや自分の行動をひとつひとつ意識して確かめなおす、といったことを行うのもマインドフルネスのひとつです。こうすることで、ストレッサーに対する感情を落ち着かせるヒントを得るといった効果があります。

さらに、アメリカ心理学会は、心身への影響を軽くするストレス対策として、次の5つの方法をすすめています。

1.ストレスの原因を整理しましょう
何がストレスの原因になり、それに対してどのように感じているのか整理してみましょう。メモに書いてみると、絡み合ったストレス源を解きほぐすことができるかもしれません。また、書いているうちに頭も整理され、対処法を見つけるヒントを思いつくこともあります。

2.親しい人とのつながりを大切にしましょう
家族や親しい友人に、抱えている困難な問題やそのときの気持ちについて落ち着いて話してみましょう。共感や賛成の言葉を聞くだけでも心の支えになりますし、ストレスに対処する新しい方法や視点を提案してくれるかもしれません。

3.怒りを感じたら、少し歩いてみましょう
カッと怒りの感情を感じたとき、すぐにそれを人やものにぶつけるのではなく、まずは少し数を数えて感情の高ぶりをそらしてみましょう。軽く歩いたり、少し体を動かすと、気分が変わります。ウォーキングや散歩を日課にすると、ストレスを軽くすることができます。

4.目をつぶって体を休めましょう
不安を感じてよく眠れない、という悩みを抱えている人も多いのですが、眠れなくとも目をつぶって横になり、心と体の休息をとりましょう。刺激になるようなテレビやスマートフォンなどは、いったん消すのがコツです。

5.助けを求めましょう
病院やカウンセリングサービス、公的機関の電話相談窓口など、不安や悩み、ストレスからくる不調について話を聞いてくれる機関はいろいろあります。厚生労働省『こころの耳』に掲載されている情報などを参考に、1人では解消しきれないストレスに助けを求めることは、キラーストレスから心と体を守るために大切なことなのです。

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<参考文献>
■厚生労働省 e-ヘルスネット
『ストレスコーピング(すとれすこーぴんぐ)』
■アメリカ心理学会
『How stress affects your health』
■アメリカ心理学会
『Psychological Stress and the Human Immune System:A Meta-Analytic Study of 30 Years of Inquiry』
■ストレス科学研究
『脳腸相関とストレス』
■文部科学省 CLARINETへようこそ
『第2章 心のケア 各論』

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