“温活” 美と健康をつくる体の温め方

「冷え性」は明確な医学的定義がなく、日本独自の考え方だともいわれています。ですが、冷えを感じて生活上困るという感覚があるのも確かです。冷え性は、月経に伴う症状や肩こり、頭痛、下痢やストレスなどさまざまなつらい症状と結びついているもの。体を温める温活で、毎日を活動的にすごし、生活の質を高めましょう。

<内容>

“温活” 美と健康をつくる体の温め方

“温活”とは?

「体を温めるとよい」ということは、東洋医学の考え方の元となった中国の医学書『黄帝内経』にも記されています。東洋医学的には、珍しくない考え方ということですね。

日本では、2012年以降、“婚活”や“妊活”のように“温活”とよぶようになりました。“温活”とは「美容や健康の効果を期待して、日常的に体の内外からさまざまな方法で体を温める活動」のこと。

最近では、すっかり定着してきていますし、「腸温活」のように、体の一部に着目した言葉もありますね。温活ブームで体を温めることのメリットが知られてきて、最近では女性だけでなく、男性にも注目されています。具体的には、冷え性の改善や低体温の治療、免疫力の強化などの効果が得られるといわれているんです。

冷え性と温活


温活と聞いて一番に思い浮かべるのが、「冷え性」対策。実は、冷え性についての研究は日本以外の国には少ないんです。冷え性は日本特有の考え方なんですね。そのため、冷え性対策となる温活は、日本独自の発展をとげています。

「冷え性」は、体の芯から冷えるような感じがするため、実際に体の奥の温度が低くなっているのではと思っている人もいるかもしれません。しかし、人の体の奥、内臓があるあたりの“深部体温”はだれでも37℃程度に保たれていて、ほとんど変わりません。これよりも深部体温が下がったら大変!低体温症で治療が必要になってしまいます。人の体には体温を一定に保つ働きがあるので、内臓の機能を維持する深部体温がそんなにかんたんに変化したりはしないのです。

じゃあ、「手足や腰が冷えてつらい、という私の感覚はウソだっていうの?」「ストレスが溜まると、体がずーんと冷たくなって、お腹も壊しやすいんだけど、これは気のせい?」もちろんそんなことはありません。

「冷え性」「冷え症」に関するさまざまな調査を見ると、冷えを感じている人は、暖かいはずの部屋でいつまでも寒さを感じたり、肩こりや体のこわばりなどの不快感を感じたりします。また、女性であれば月経痛などの症状が、男性であれば慢性的な下痢などの症状と関連するといったことがあります。冷えは生活の質を悪くし、ほかのつらい症状とセットになっていることが多いもの。食事や睡眠、ストレスマネジメントなどといった“温活”によって生活を改善することで、「ほかの人は平気なのに私だけ寒い」「手足が冷たくて寝つけない」「お腹を壊しやすい」「肩がこる」といった生活をつらくする症状の改善にもつなげることができるといえます。
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体を温めることのメリット

体を温めると、どんな点がよいのでしょうか?まずはなんといっても、血行が促進され毎日を元気よくすごせるということです。

先に説明した冷え性ですが、「ほかの人よりも寒さを感じやすい」「手足や腰が冷えて、生活がつらい」「冬場は体を温める器具がかかせない」といった生活上の困難を抱えやすくなります。翌日の朝早く起きなくてはならず、睡眠時間はあまり取れないのに、なかなか寝つけない…こんな症状が続いたら疲れが取れないですよね。

また、冷え性はダイエットの敵ともいえます。食生活や睡眠などの問題によって活動量が低下すると、健康的なダイエットができなくなってしまいます。。健康的な体重を維持しながら、好きなことにどんどんチャレンジできる活発な体を作るために、温活が必要なのだともいえます。

「ケガをしにくい」は、温活にとって重要な目標といえます。これは特に運動する人にとって大切。体が冷えて関節がこわばっていると、運動で十分なパフォーマンスを出せず、転倒などケガにつながりやすくなります。柔軟で動ける体を作るために、ストレッチなどを取り入れ、「関節がしっかり動く体」を作りたいものです。

そして、「肌のくすみ」などの美容面。冷えは、ビタミンやミネラルなどからだの調子を整える栄養素を十分に取れていない状態ともかかわりがあります。全身に酸素を運んで細胞を働かせるのに必要な鉄が足りないと、熱を生み出す働きも悪くなる上に、目の下にクマができて顔色が悪い状態に見えてしまうなんてことも。また、体が硬く肩がこっていると猫背で姿勢が悪くなり、魅力的に見えないといったこともありえます。

ただし、病気やケガをしているときには要注意。こうした体を温める活動は、平時の不調のないときに行いましょう。病気や怪我によっては患部・患部周辺を温めると症状が悪化する場合があります。疾患のある人は、まず主治医に確認してくださいね。
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我慢はいけない!体の冷え・冷え性

「冷えに慣れている、我慢できる」と薄着や低い室温で我慢したり、手足の冷えをそのままにしたりしていると不調をきたすことも。また、冷え性の人は、室温が21℃以上の暖房が効いた部屋でも、1時間以上も体があまり温まらず、「部屋は暖かいのに冷えてつらい」と感じるという報告もあります。冷え性を自覚している人は、心理的ストレスを感じている人が多いという報告もあり、心のストレスに加えて寒さ、冷えという体のストレスも加わるということになってしまいますね。

女性の場合、冷え性と月経痛や月経不順などの症状は大きく関わりがあります。女子大学生を対象にした調査では、7割近くの人が月経痛を、3割近くの人が月経不順を抱えており、手足の冷えやだるさを同時に感じていると報告されています。また、同じように若い女性を対象にした調査では、冷えの症状を感じている人は4割近くいて、冷え性と関連しやすい生活習慣に「甘いものをよく食べている」「生活習慣(主に睡眠)が乱れている」「麺類での単品の食事が多い」「ストレスをよく感じている」「野菜はたっぷり食べているものの、たんぱく質の摂取が少ない」などがあることがわかっています。

身長と体重の関係を表すBMIでは、冷え性の人は平均で20.2、冷え性症状のない人は平均で21.2という違いがありました。これは、身長が158cmの人の場合では、BMI20.2で約50.4kg、BMI21.2で約52.9kgになります。2.5kg程度の体重の差があるということになりますね。

こうした生活習慣と冷えとの関係を考えると、冷え性の人は標準の範囲ではあるものの、どちらかというと痩せていて、月経に伴う症状がつらく、食事の内容が偏りがちで睡眠は乱れやすく、ストレスをよく感じている、ということになります。冷えやすい生活習慣が、ほかのさまざまな病気ともつながっていると考えられるのです。

最近では、男性でも冷え性を自覚している人が多いといわれます。冷え性の男性の場合、慢性的な下痢や便秘がおきる過敏性腸症候群のうち、下痢を繰り返すタイプになりやすいとされています。過敏性腸症候群はストレスとも関連があり、ストレスから冷えを感じ、お腹の調子が悪くなりやすいとも考えられます。
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体の芯から温活

それでは、体を温めるにはどうすればよいのでしょうか?上で紹介した大学生などの若い女性と冷えに関する調査では、冷え性と普段の食事に関連があるとしています。それは、肉や魚、卵などのたんぱく質をとる量が少ないこと。実は、たんぱく質は温活に欠かせない栄養素なのです。

人の体は、食事を取ると食べたものを消化吸収する働きによって熱を作り、体を温めるというしくみを持っています。温かい食べ物を食べたときだけではなく、常温や冷たい食べ物でもこのしくみは働きます。中でも、たんぱく質は摂取エネルギーの30%が熱の発生に使われることがわかっています。ちなみに糖質は約6%、脂質は約4%です。さまざまな栄養素が合わさった食事をとると、平均して摂取エネルギーの10%くらいが熱になります。

ですから、ダイエットをしている人でもそうでなくても、たんぱく質をしっかり取っておくことが大切です。体を温めてエネルギーの消費を増やすので、「太るから」と心配しなくても大丈夫。また、たんぱく質をできるだけ朝のうちに食べるようにすると、体のリズムを調整するホルモンを作る材料になります。夜の寝つきが悪くて困っているなど睡眠の質でお悩みの場合、たんぱく質をちゃんと取る温活で生活を改善できるので一石二鳥です。

また、よく噛んで食べると、食事による熱発生効果が食べると高まります。麺類のような単品の食事は、つるつるとすすって食べるので噛むことが減り、どちらかというと体を温めるには不向きです。また、たんぱく質・糖質・脂質のバランスが糖質に偏りがちになりますから、温活を考えると、麺類のような単品の食事を日常的に食べるのは考え物です。

温活というと、しょうがを入れたジンジャーティーなど温かい飲み物が思い浮かびますね。しょうがなど体を温めるとされるスパイスやハーブを使った飲み物はおすすめです。ただし、冷え性の人は甘いものよく食べていて、間食が多いという報告もあります。砂糖をたくさんいれた甘い飲み物はエネルギーの取りすぎになりやすく、冷え性とも関連しますから、無糖のお茶などを選びましょう。胃腸が弱い人ならば、朝の食欲のないときはまず刺激の少ない白湯をゆっくり飲んで、体を内側から温めてあげるとよいですね。

東洋医学では「体を冷やす」とされるコーヒーですが、コーヒー文化の本場イタリアには、コーヒーが体を温めるという研究もあります。コーヒーにはゆるやかにお通じを促すという効果もありますので(個人差があり、効果を感じる人は全体の3割ほどです)、便秘などの不調で困っている人は温活にコーヒーを取り入れてもよいかもしれません。

体の熱を生み出すのは主に筋肉なので、運動はぜひ取り入れたいものです。寒い季節は、いきなり外へ出て運動するのはつらいので、ストレッチでゆっくり体をほぐしたりヨガなど室内でできる運動したりするのもおすすめです。

しっかり体を動かしたいなら、朝のウォーキングやジョギングなどがよいでしょう。外で運動する場合でも、温かい室内でストレッチや準備運動を十分にして、柔軟さを取り戻してから行いましょう。ダイエットしたい場合、先に筋力トレーニング、続いてジョギングなどの有酸素運動の順で行うとエネルギー消費の効果が高まります。室内で軽めのダンベルを使った運動やスクワットなどの筋力トレーニングをしてから外で有酸素運動をすれば、体が温まって運動効果もアップです。
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体の外から温活

温活を始めて「冷え」の体質や生活習慣を改善するには少し時間がかかります。そこで、外から体を温められる便利な器具を積極的に利用し、冷えの不快感を減らしましょう。

入浴は、全身をしっかり温められる大切な健康習慣です。心のストレスを減らす効果もあるので大切にしたいですね。より体を温められるように入浴剤を加える人も多いと思います。炭酸の発泡入浴剤は体を温める効果に加えて、関節を動かしやすくなる効果もあるとされています。市販の重曹とエッセンシャルオイルを使って手作りできますから、入浴の楽しみを高めてしっかり温まるのにもよいですね。また、入浴中に、浴槽で脚のリンパ節をゆっくり上にさするようにマッサージすると、脚のむくみを取ることができます。

入浴後は湯冷めしないように、冬場はしっかり準備しましょう。室温を15℃、できれば18℃以上にしておくと、体の表面が不快感を感じる温度になりにくくなるという報告があります。浴室暖房を使ったり、洗面所に小型の暖房器具を入れたりして適度に暖めておけば不快な湯冷めを防げるというわけです。しかし、部屋をただ暖めておくだけではダメ。しっとりした浴室とは違って室内が乾燥していると、美肌の敵になります。乾燥したシーズンはインフルエンザなどのウイルスが活動しやすくなってしまいますから、加湿器などを適度に使って美と健康のために湿度を調節しましょう。

カイロなどを使っている人も多いと思いますが、市販の使い捨てカイロは鉄と酸素の反応を使ったものが多いので、使用を中断する間はチャック式の密閉できる袋に入れておくと、反応をゆるやかにして長持ちさせることができます。朝、通勤中に使って、日中暖かいオフィスにいるときは中断、帰宅時にもう一度使うといったこともできます。ただし、カイロは下着の上から貼り付けるタイプ、直接触ってもよいタイプなどさまざまあります。低温火傷のような事故につながらないよう、使用前に注意をかならず確認しましょう。

また、「寒いと風邪をひきやすい」という古くて新しい話題もありますね。風邪の原因の半数以上を占めるライノウイルスの場合、どうやらこれは本当のよう。鼻の中(体全体からすると表面)の温度が深部体温より低い、33℃程度になってしまうと、免疫のバランスが崩れてしまい、ウイルスが増えやすくなって風邪をひきやすくなる、という研究があるのです。マスクやマフラーぐるぐる巻きで鼻や口元まで温めておくことは風邪予防になるのかもしれません。
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<参考文献>
■日本食生活学会誌
『若年女性の冷えと食および生活習慣との関連』

■テルモ体温研究所
『知っておきたい体温の話』

■リンク・デ・ダイエット 世界の最新健康・栄養ニュース
『風邪ウイルスは、低温で増える?』

■厚生労働省 e-ヘルスネット
『食事誘発性熱産生/DIT(しょくじゆうはつせいねつさんせい)』

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