食事と運動で花粉症ケア生活

日本人の3割近くが症状を持っている花粉症。身体を守る免疫のしくみから起きてしまうアレルギー症状だけに、対策が難しいですね。マスクや鼻炎薬などの対処療法に加えて「ヨーグルトは効くの?」「NG食品はある?」などさまざまな疑問、情報が溢れています。食事や運動、睡眠など生活習慣の改善ポイントをおさらいしましょう。

<内容>

食事と運動で花粉症ケア生活

花粉症のメカニズム

花粉症とは、鼻や目から身体の中に入ってきた花粉を、免疫のしくみが異物とみなして身体の外に出そうとするときに起こる症状です。花粉の増える時期にくしゃみや鼻水など鼻を中心とした症状が出ることから“季節性アレルギー性鼻炎”というアレルギー症状のひとつとされています。アレルギー症状を起こす元になる花粉を“抗原”と呼び、抗原に接してからすぐに症状が出てきます。

花粉症の症状は、くしゃみ、水っぽい鼻水、鼻づまり、目のかゆみや充血などがあります。くしゃみや鼻水は、身体の外に花粉を追い出そうとする働きです。そしてしばらく時間がたつと、鼻の粘膜が腫れてきて鼻づまりを感じるようになる…といったように、さまざまな症状が続けて起きてくるのです。

花粉症を防ぐために大切なことは、なんといっても抗原となる花粉を身体に入れないことです。不織布のマスクでは花粉の量を6分の1~3分の1に、眼鏡を使うことで目に届く花粉の量を3分の1程度に減らすことができます。
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花粉症患者が増える原因

日本で花粉症の症状を持つ人の割合は、花粉症全体で29.8%とされています。これを人数に直すとおよそ3780万人。3~4人に1人は何らかの花粉症の症状を持っていることになります。中でもスギ花粉症の人がもっとも多く、26.5%ですから3360万人ほどになります。

スギ花粉症について都道府県別に見ると、症状を持つ人の割合がもっとも高いのは山梨県で44.5%、続いて愛知県が41.2%、栃木県と埼玉県が39.6%、静岡県が39.3%となっています。

花粉症を持つ人の割合は、増えているのでしょうか?東京都は、10年に1回、都内の3地域で花粉症患者の詳細な実態調査を行っています。その報告書によると、平成8年から平成18年にかけて10年の間にスギ花粉の症状を持つ人の割合が2倍に増加したといいます。また、厚生労働省によると15歳以下で花粉症の症状が出る人も増えており、日本でスギ花粉症を始めとする花粉症の患者は増えてきていると見られています。東京都は平成28年に第4回の調査を行っており、平成29年の秋ごろに調査報告が公表される予定ですから、花粉症の有症状者の推移が注目されます。

花粉症、とりわけスギ花粉症が増えた背景には、日本の山林にスギが多く植えられてきた政策と大きな関わりがあります。戦時中に大量に伐採された樹木を補い、木材を増産するために、戦後には多くのスギやヒノキが植えられました。スギは植えられてから30年ほど経つと花粉を多く生産する時期に入ります。昭和40年代以降の木材需要の低下によって利用されずに山に残っているスギ林は、現在では雄花がさかんに花粉を生産する時期に入っているため、花粉症の人に届く花粉の量は増えてきています。

花粉症の症状が増える要因として、花粉の量そのものだけではなく、食生活の変化などが関係しているのではないかとも考えられています。肉や乳製品、卵などを含む欧米型の食事をとる機会も増えたことがそのひとつです。中でも、調理に使われる食用油に多いn-6系脂肪酸は、身体の中でアレルギー反応に関わる“ロイコトリエン”に変わることが知られており、とりすぎることでアレルギー反応を強くしてしまう可能性が指摘されています。

もうひとつ、花粉症の症状を悪化させる要因として指摘されているのが大気汚染と喫煙の影響です。大気汚染物質の中でも“黄砂”とは、中国大陸から飛来する細かい土や鉱物のちりのことで、飛んでくる途中に人為的な大気汚染物質をさらに付着させてしまいます。また、ディーゼル自動車の排気に含まれる物質や二酸化硫黄、二酸化窒素などが大気汚染には含まれます。

現代の住宅は気密性が高く室内でカビが生えることがあります。カビはアレルギー性鼻炎のリスクとなるため、換気して湿度を調節するなどカビが生えにくい環境を作ることも大切です。また、冷暖房設備が整った屋内では、ほこりの中にダニが生息しやすくなっています。ダニはそれ自体がアレルギー性鼻炎のアレルゲンとなりますが、スギ花粉症とダニアレルギーは共通して起こることが少なくないため、ほこりをよく掃除しておきましょう。
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花粉症と腸内環境

花粉症の症状は花粉を浴びると誰でも起きるというわけではなく、遺伝的にアレルギーを持つ人が血縁にいるかどうかも関係してきます。また、短い期間に花粉に接しただけですぐに症状が出るというわけではありません。数年から数十年にわたって花粉を浴びると身体の中に異物を判定する“IgE抗体”と呼ばれるものが作られるようになります。この抗体は、スギやヒノキなどの樹木、カモガヤやブタクサといった草など花粉の種類によって異なり、対応する花粉が身の回りに増える環境になると、症状が出るようになります。

鼻の中に花粉(抗原)が入ってくると、抗体は抗原に対応してアレルギーに関連する細胞と結びつき、この細胞から“ヒスタミン”や“ロイコトリエン”といった物質が出てきます。鼻や目の粘膜はヒスタミンなどの物質に反応して、くしゃみや鼻水を使って花粉を身体の外に出そうとします。つまり、花粉症の症状は身体を異物から守る免疫の働きそのものであるため、まるっきりなくしたり抑え込むことが難しいのです。

花粉症が「免疫の働きすぎ」で起こるのであれば、それを整えて花粉症の症状を減らすことはできないのでしょうか?残念ながら免疫の働きは複雑で、簡単に変えることは難しいのです。とはいえ、さまざまなアプローチが考えられており、そのひとつが免疫の機能とかかわりの深い腸の環境を調整することです。身体の中には、数100兆個という膨大な数の細菌が住んでいて、ほとんどが腸など消化器の中にいます。腸内の細菌は花畑や草むらのように“腸内フローラ”または“腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)”と呼ばれるバランスを作っています。このバランスを整えることで、花粉症の症状を軽減することができるかもしれません。
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花粉症を改善する食事

腸の環境を整える食生活といえば、“プロバイオティクス”と呼ばれる、宿主に健康上の効果をもたらす乳酸菌やビフィズス菌などの微生物が挙げられます。代表的なものは、ヨーグルトなどの乳製品。2004年に日本でビフィズス菌の一種の“ロングム菌(BB536)”を入れたヨーグルトと、そうでないヨーグルト(プラセボ)を14週間にわたって食べたグループを比較したところ、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状が有意に少なかったという研究が行われ、ヨーグルトと花粉症の効果が注目されるようになりました。

プロバイオティクスの研究により、腸内環境改善というと「乳酸菌などが生きていないと意味がない」というイメージもありますが、必ずしもそうでもありません。もうひとつ、菌そのものや“乳酸菌産生物質”と呼ばれる菌が作った代謝産物などを合わせて“バイオジェニックス”と呼びます。

菌そのもの(菌体成分)は、乳酸菌が生きている、生きていないに関わらず腸の組織に働きかけるもので、免疫調節作用やコレステロール低下の効果などが期待されています。

乳酸菌の代謝物質には乳酸、酢酸(有機酸)、バクテリオシン、ロイテリンなどがあり、腸内の環境を有害な菌を住みにくくすることで腸内フローラを整え、免疫の機能を調整すると考えられています。乳酸菌産生物質であれば、キムチ料理のように火を通して調理してもその効果が得られるため、「生きたまま」にこだわらなくてもよいといえます。また、強力な胃酸が分泌される胃の環境も通ることができます。

酢酸などの物質は、乳酸菌が作り出す食品以外にも含まれています。酢酸はつまり、お酢。お酢と腸内の良い細菌が好む食物繊維が一度にとれる野菜の酢漬け(ピクルス)や海藻の酢の物は、腸の環境を整える食品といえるかもしれません。野菜を食べることで血糖値の急な上昇を防ぐなど、花粉症の症状改善以外の健康効果も期待できます。

ただし、食品などの民間療法の効果は個人差が大きく、身体に影響するしくみもよくわかっていないことが少なくありません。アレルギー症状を持つ患者がヨーグルトや乳酸菌製剤などを使用して、何らかの効果があったと判断された割合は3割程度という調査もあります。医薬品のように「飲めば効く」というものではないため、長期的な生活習慣の改善を目指して、無理のないように取り入れていきましょう。

反対に、花粉症の症状にとってリスクになる食べ物もあります。先に触れた食用油には、花粉症の鼻づまりやかゆみの元になるロイコトリエンに変わるリノール酸が多く含まれています。揚げ物などの加工食品を通して大豆油、コーン油などの食用油をとる機会は多く、知らず知らずのうちにたくさんとってしまうことも考えられます。油をたくさん使った食べ物は、おおむね高カロリー。このことから、太りやすい食べ物は花粉症にはあまりよくないと考えてもよさそうです。

また、お酒に含まれるアルコールは血管を拡張する作用があります。血行がよくなるという側面もありますが、鼻づまりを悪化させてしまうため、花粉症の症状がある季節には飲みすぎは避けましょう。

そして、生活習慣病とかかわりのある血糖値は、花粉症にも関係があります。血糖値が急に上昇したり下降するなど血糖コントロールがよくない場合、花粉など空気中のアレルゲンに反応しやすくなることが報告されています。砂糖のたくさん入った食べ物は血糖値を急に上げやすいため、ひかえるようにしましょう。
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生活習慣を見直そう

食べ物以外にも、生活習慣も花粉症の症状と関係があります。睡眠不足や対人関係などからくる心理的ストレスは免疫細胞に影響を与え、アレルギー反応を強めてしまうリスクになります。まずは規則正しい生活でしっかり睡眠をとるようにしましょう。また、生活リズムを安定させ、よい睡眠をとるためにも適度な運動が大切です。花粉症の季節に屋外で運動することは難しいですが、屋内でできるストレッチや筋力トレーニング、階段の上り下りなどを取り入れて適度な運動を続けましょう。

飲酒は短期的に鼻づまりを悪化させるだけでなく、身体に負担をかけるストレス源でもあります。そして、喫煙によりタバコを吸っている本人の鼻の粘膜が傷ついてしまうだけでなく、副流煙を通して周囲の人も同様に影響を受ける受動喫煙が花粉症の症状を悪化させてしまうのではないかと考えられています。

スギ花粉症の症状が出ないようにし、アレルギー反応を止める根本的な治療法として、現在では“減感作療法”という抗原となるスギ花粉から作られた製剤を使う治療法があります。ただ、治療に2年から3年という長い時間がかかって負担が大きく、スギ花粉成分に反応し、 アナフィラキシーショックを誘発するリスクもあります。そこで危険の少ない、スギ花粉症ワクチンの開発が進められており、将来はより一般的で利用しやすい治療法となると期待されています。それまでは、マスクなどアレルゲンを身体に入れない方法や、医療機関で処方される医薬品など対処療法を適度に利用して、「花粉症から逃げ切る」ケアが大切ではないでしょうか。

そして食生活や生活習慣の改善といった花粉症の症状ケアは、生活習慣病の予防と共通する部分が多くあります。バランスのとれた食事と運動、生活リズムで花粉症をケアしていくうちに、身体全体を病気のリスクから守っていた…といったよいサイクルを目指しましょう。
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<参考文献>
■斎藤博久著、講談社
『アレルギーはなぜ起こるか』

■鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会、ライフ・サイエンス
『鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症-』

■大久保公裕編集、全日本病院出版会
『イチから知りたいアレルギー診療』

■厚生労働省 花粉症特集
『はじめに~花粉症の疫学と治療そしてセルフケア~』

■東京都福祉保健局
『花粉症患者実態調査報告書 平成19年9月 』

■環境省
『花粉症 環境保健マニュアル2014』

■林野庁
『森林・林業とスギ・ヒノキ花粉に関するQ&A』

■アレルギー
『1.アレルギー性鼻炎と生活習慣』

■日本調理科学会誌
『乳酸菌の生理機能とその要因』

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