サイレントキラー 実は怖い高血圧!検査法と重病化を予防する生活習慣(食事・環境等)

忍び寄る高血圧の恐ろしさ


血圧が高くてもあまり不調を感じません。しかし、高血圧が続くと、動脈硬化やそこから起きる脳卒中、脳梗塞、大動脈瘤、心筋梗塞といった命を奪う病気につながります。このように、高血圧は自覚症状なく重大な病気を引き起こすことから“サイレントキラー”と呼ばれています。高血圧を予防するためのポイントや生活習慣をチェックしてみましょう。

<内容>

サイレントキラー 実は怖い高血圧!検査法と重病化を予防する生活習慣(食事・環境等)

サイレントキラーとは

体に潜む暗殺者


1945年2月にクリミア半島のヤルタで、第32代アメリカ合衆国大統領フランクリン・D・ルーズべルトは、第2次世界大戦終結後の世界情勢についてソビエト連邦のスターリン、イギリスのチャーチルとヤルタ会談を行い、戦後の国際政治の方向性を決定づけました。しかし、そのその2ヵ月後に急な脳出血で亡くなってしまいます。亡くなったときのルーズベルトの血圧は、収縮期血圧(最高血圧)が300、拡張期血圧(最低血圧)が190。現在の基準からするととてつもない高血圧です。アメリカ合衆国大統領という要職にあったルーズベルトの命を奪ったのは、知らない間に進行していたサイレントキラー(沈黙の殺人者)だったといえます。
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高血圧が引き起こす心血管病

血管の健康、気にしていますか?


心臓はよく、全身に血液を送り出すポンプにたとえられます。このポンプは、血液を送る経路である血管につながっていて、血管は水を流すホースに相当する役割を果たしています。新品のホースは柔軟で、水が流れるときの圧力に応じて少し膨らんだり、折れたり曲がったりしていてもすぐにもとに戻ります。ですが、時間が経つにつれて、ホースが硬くなったり内側に汚れがこびりついたりすると、水の流れが悪くなってきます。

こうした状態が血管で起きている状態が、“動脈硬化”の状態。無理に水を流すと、ホースが破れたりすることがあります。また、流れの悪い状態では、目的の場所に十分な水を届けることができにくくなります。これが血管で起きると、脳の本来あるべきでない場所で出血したり(脳出血)、血管が詰まって大切な脳に十分な血液を届けることができなくなったり(脳梗塞)、大動脈の内側が裂けて破れやすくなったり(大動脈解離)、大動脈が膨らんで破れやすくなったり(大動脈瘤)、心臓での血液の流れが止まってしまったり(心筋梗塞)といった重大な病気につながるのです。

こうした恐ろしい病気を、心臓と血管をあわせて心血管病とも呼びます。本来ならば強くて弾力性に富んでいる血管ですが、加齢や高血圧によって血管の壁に圧力がかかり続けること、コレステロールが作るこぶが内側に張りついて血管の弾力が徐々に失われていくことから、心血管病が起こります。しなやかさを失った血管は傷ついて破れやすくなり、重要な場所の血管が破裂したりして、初めて重大な症状が現れるのです。
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血管力を検査してサイレントキラーとの距離を知ろう

検査する場所や時間帯でも異なる血圧


WHO(世界保健機構)の指標では、最高血圧が140mmHg、最低血圧が90mmHgを超えると高血圧の範囲になります。心血管病につながる動脈硬化の指標として、血圧の測定はもっとも手軽で家庭でも行いやすい方法です。「血圧は健康診断のときに測定しているよ」という人もいるかもしれませんが、実は健康診断など特別なときにしか血圧を測らないために、正しい血圧が測れていないことがあるのです。

血圧は軽い運動や緊張、トイレの前後などで1日の中でもすぐに上がったり下がったり変動します。健康診断で医療機関へ行くと、いつもと違う環境で病気や健康についていやでも考えさせられるといった緊張から、血圧はいつもより高めに出る“白衣高血圧”になることが少なくありません。

また、厄介なのが病院では比較的正常な血圧になるのに、家庭で測ると高い数値が出る“仮面高血圧”です。診察室では問題があるように見えないので、高血圧のリスクが見過ごされやすくなってしまいます。本来の血圧を把握するためには、家庭で落ち着いた環境で測る“家庭血圧”をみると、本来の血圧が分かりやすいのです。

自分で血圧を測るポイント


家庭用血圧計はドラッグストアでも手に入りやすく、使い方は簡単。スマートフォン向けの記録アプリや、薬局でもらえる血圧手帳など記録支援ツールも揃っていますから、季節による血圧の違いもわかるように続けて測るとよいでしょう。測るときには、朝起きてまずトイレを済ませ、できるだけ背もたれのあるいすに腰掛けて、安静な状態で測定します。

病院・クリニックで行える検査


これ以外にも、医療機関では動脈硬化の指標となる血液検査や血管のしなやかさを測ってサイレントキラーに備えることができます。“PWV(脈波伝播速度)”とは、脈のスピードを測ってそこから血管の硬さを推測する方法。また、血管にこぶがないか調べる“頸動脈エコー検査”や血管の内側の細胞の状態を調べる“FMD検査(血管内皮機能検査)”によって、血管年齢ともいえる健康状態を調べることができます。また、血液検査で調べられるコレステロール値や血糖値、直近2ヶ月間の血糖コントロールの状態を示す“HbA1c”などは、動脈硬化が起こりやすいかどうか調べる大切な検査ですから、診断結果をよく読んで数値をチェックしましょう。
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高血圧を引き起こす原因、生活習慣

禁煙・減塩


2011年、国連は「生活習慣病対策のために世界全体がとるべき5つのアクション」を発表しました。その中でも注目したいのが「タバコをやめること」と「食塩を減らすこと」。タバコと塩分の取りすぎ、これはふたつとも高血圧の原因になる生活習慣です。タバコには血管を収縮させる作用があり、喫煙そのものが血圧を上げるばかりでなく、長い喫煙習慣は腎臓病を引き起こし、腎臓病からくる高血圧の原因になります。

また、「塩分で血圧が上がらない人もいる」と反論されることもあります。確かに“塩分非感受性”といい、食塩をとっても血圧が上がりにくい遺伝子を持っている人もいます。ですが、全体の傾向では、特に年をとってからの血圧の上がり方と食塩の摂取量には関係があるのです。遺伝子の性質に“賭ける”よりは、減塩習慣のほうが確実なサイレントキラー対策だといえるでしょう。

肥満・運動不足


肥満と運動不足は、2型糖尿病や高コレステロール症、脂質異常症などの生活習慣病と関係があります。血糖値が基準を超えて高くなると、これも血管を傷つけて動脈硬化の原因にもなります。糖尿病の主な合併症である糖尿病性腎症で腎臓の機能が下がり、高血圧になることも。また、血糖で傷ついた血管にコレステロールが増えると、血管の内側で“プラーク”を作る原因になり、アテローム性動脈硬化と呼ばれる動脈硬化を引き起こす原因になります。

ストレスも高血圧に関係が


高血圧は、ストレスから来る心理状態や寒暖差のような環境とも関係があります。強いストレスは身体を緊張させ、高血圧の原因になります。また、高血圧からくる心不全の発作は、暖かい部屋から急に寒いところへ移動したときの“ヒートショック”を経験したときに起きることが少なくありません。
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サイレントキラーを近づけない!食生活見直しで高血圧予防・改善

できることから生活習慣改善を


サイレントキラーを防ぐ生活は、生活習慣病対策とほぼ共通します。食生活の面では、なんといっても減塩が大切です。加齢とともに味覚が鈍くなり、濃い味つけを好むようになりがちですが、味の濃い食事を続けることで、知らず知らずの内に塩分取りすぎになりやすくなります。薄味で満足できるトマトなどうまみの多い野菜をたっぷり食事に取り入れるとよいでしょう。塩分取りすぎの代表のようにいわれる味噌汁ですが、意外にもナトリウム(塩分)を身体の外に出す“カリウム”を野菜から効率よくとれる食べ方です。出汁を濃くして味噌の量を控えめにすれば、おいしく食べられて塩分対策にもなります。フルーツにもカリウムが多いので、かんきつ類やバナナなどおいしく食べて塩分を排出しましょう。

いつもの料理は味が濃いのでは?と思ったら、スプーンですくうだけで料理の塩分を測ることができる家庭用の塩分計で試してみるといった方法も。外食や総菜を利用する場合は、塩分量が書いてあるラベルをしっかり見ましょう。日本人では、食塩の摂取量の目標は1日あたり男性で8g、女性で7gですから、これを食事の回数で割った量が1食あたりの目標になります。ラベルによって食塩量ではなく「ナトリウム」の量をmgで示してあることがあります。こんなときには、ナトリウム量(mg)×2.54÷1000で計算します。たとえば「ナトリウム1600mg」の場合は、食塩相当量にすると約4gになります。

肥満対策も含めて、運動習慣はとても大切です。血圧を下げ、血糖を消費する有酸素運動は生活習慣病対策に有効ですから、ウォーキングなどの手軽に始められる運動から習慣的に取り入れましょう。毎日の食生活と運動習慣で血管の健康を守り、サイレントキラーを近づけないようにしたいですね。

<参考文献>
■国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス
『病気について』

■TERUMO 健康ガイド
『血圧の話』

■厚生労働省 e-ヘルスネット
『高血圧(こうけつあつ)』

■KOMPAS 慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト
『PWV (Pulse Wave Velocity, 脈波伝播速度)』

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