解説
誰もが気にしている口臭
口臭を気にしている人はとてもたくさんいます。「家族の口臭が気になる…」というように、他の人の口臭が気になる場合もあります。また、他人から指摘されたわけではなくても、自分の口臭がひどいのではないかと心配する人も多いのです。
口臭の原因の1つは、誰の口の中にでもいる歯周病菌です。「私は歯周病ではないから歯周病菌はいないはず」と思う人もいるかもしれませんが、歯磨きなど口の中のケアをきちんと行っていれば、菌がいても歯周病にはなりません。しかし、口の中の歯周病菌の多さに関わらず、歯周病菌は口の中の古くなってはがれた粘膜などをエサにして、いつもにおいを作り出しています。つまり、口の中がまったく無臭という人は存在しないのです。
とはいえ、他の人も迷惑をかけるような強い口臭は避けたいですね。職場の身だしなみでは多くの人が口臭や体臭を気にしているという調査もあります。

ゴマの3つの抗酸化作用
他の人にもわかるような強い口臭がある場合、歯ぐきが炎症を起こす歯周病が悪化していることが考えられます。歯周病菌が食べかすやはがれ落ちた粘膜などをエサにして作り出す物質の1つに、“硫化水素”があります。この硫化水素が口臭の原因の1つなのです。また、硫化水素は温泉や火山の近くで発生し、ときには人が亡くなることもある毒ガスです。もちろん口臭の中に含まれる硫化水素はごく微量ですから、直接命に関わるようなことはありません。しかしこの成分には歯ぐきを溶かす作用があり、活性酸素を増やすことで、歯周病をさらに悪化させてしまいます。
また、ある調査によると、歯周病にかかっている人はそうでない人と比べて体内の抗酸化物質の量が少ないそうです。抗酸化物質とは、細胞を傷つける活性酸素を減らし、身体を守る物質です。口の中の活性酸素を減らすことで歯周病を防ぎ、歯周病が原因の口臭を減らすことにつながるのです。
そこで、ゴマの出番です。ゴマにはビタミンE、ミネラルの一種の“セレン”、ポリフェノールの一種“ゴマリグナン”といった3つの種類の抗酸化物質が含まれています。ビタミンEの抗酸化作用はよく知られていますね。セレンは活性酸素から身体を守る酵素が作用するときに必要なミネラルです。ゴマグリナンは名前に「ゴマ」が含まれていることからわかるように、ゴマから見つかったもので“セサン”を含む機能性成分です。こうした多様な成分が、活性酸素の害を抑えてくれるのです。
ゴマは固い殻に包まれているので、こうしたゴマの成分を効率的にとるには殻を壊して食べるとよいでしょう。手軽な食べ方は、料理にすりゴマをかけることです。また、ゴマをよくすりつぶしたペースト状の練りゴマもおすすめです。いったん殻を壊すと空気中の酸素と結びついて酸化が進んでしまうため、できれば食べる直前にすりつぶすようにしましょう。保存するときには、空気の入りにくい器に入れて早めに使い切るようにしましょう。

<参考文献>
■日本歯科医師会 テーマパーク8020
『口臭』
■THE JOURNAL OF NUTRITION
『The Prevalence of Inflammatory Periodontitis Is Negatively Associated with Serum Antioxidant Concentrations』
■農林水産省
『特集2 食材まるかじり ごまのチカラ』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
月に1回以上、ゴマを食べていない人は、人よりも自分の口臭が強くなるリスクが2.15倍になります。
A: 月に1回以上、ゴマを食べていますか?
B: 人よりも自分の口臭は強いですか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
67.0%
207人 |
33.0%
102人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
10.03%
31人 |
56.96%
176人 |
9.06%
28人 |
23.95%
74人 |
Z検定値 | 2.62 |
---|---|
オッズ比 | 2.15 |
信頼度 | 99.1% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
>数値の見かたはこちら