解説
贅肉とはたまった中性脂肪
贅肉とはいったい何でしょうか?下腹部やお尻、二の腕や太ももなどがたるんで指でつまめるような部分をイメージするかと思います。ではこの中身は何でしょうか?その正体は、ほとんどが皮下脂肪です。中性脂肪が増えすぎると、皮下脂肪となって蓄えられていきます。ということは、贅肉を減らすためには中性脂肪が増えないことが重要ということですね。
なんとかして中性脂肪を増やしすぎないようにして、贅肉を減らしたいもの。実は、発酵食品がその役に立ってくれるかもしれません。
まずは中性脂肪が作られるしくみを見ていきましょう。中性脂肪は体内で主に2つのルートをたどって増えていきます。1つは食事から摂取する脂肪です。脂肪の含まれた食品を食べると、消化酵素により細かく分解された脂肪が小腸から吸収され、肝臓を経て水になじみやすい成分に変化していきます。その過程で中性脂肪が作られて、全身の脂肪細胞に取り込まれていきます。そしてもう1つ、肝臓で作られる脂肪もあります。

腸内細菌が中性脂肪の量を決める
さて、発酵食品である納豆には納豆菌、ヨーグルトには乳酸菌というように、発酵食品を生み出すカギとなるのは善玉菌です。この善玉菌を摂取して腸内で増やすと、中性脂肪の分解が進みます。これによって脂肪をためずにエネルギーとして使ってしまいやすくなります。
しかし、実は乳酸菌は食べ物で摂取してもそのほとんどは腸まで届くことができません。最近ではヨーグルトなどで「腸に届く」乳酸菌というキャッチフレーズがふえていますが、これはもともとは乳酸菌が腸に届きにくかったために、さまざまな工夫をしているからこそいえるのです。
「それなら、腸に乳酸菌が届く特別なヨーグルト製品を食べなくてはいけないの?」と思ってしまいますよね。しかし、特別なヨーグルト出なくても、実は乳酸菌は納豆菌と一緒にとることで腸に届きやすくすることができます。これは、納豆菌が十二指腸で酸素を使って増えるため。そのおかげで、酸素の苦手な乳酸菌が多く生き残ることができる環境を納豆菌が作ってくれるのです。
腸内細菌と脂肪の関係をわかりやすく証明した実験があります。太ったマウスの腸内細菌と、太っていないマウスの腸内細菌を他のマウスの腸に移して2週間育てたところ、太ったマウスの腸内細菌を移されたマウスの方が明らかに体脂肪が増えたのです。その他に腸内細菌と中性脂肪の量を調べた研究では、特定の腸内細菌が多い人では中性脂肪が低くなるという結果が出ています。
腸内細菌は1000種類以上あり、そのバランスによって中性脂肪だけに関わらず、さまざまな病気の発症や予防に関連していると考えられており、とても重要な存在なのです。贅肉が目に見えて、ダイエットしたい気持ちが高まったら、腸内環境を整えるよいきっかけ。食事で脂肪分をとりすぎないようにすることも必要ですが、加えて発酵食品を試してみましょう。

<参考文献>
■同友会medicalニュース
『食習慣と腸内細菌の関係 〜 代謝異常の視点から 〜』
■田地陽一編 羊土社
『基礎栄養学 改訂第2版』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
週に3回以上、納豆やヨーグルトなどの発酵食品を食べていない人は、人よりもお腹の贅肉が気になりやすくなるリスクが1.66倍になります。
A: 週に3回以上、納豆やヨーグルトなどの発酵食品を食べていますか?
B: 人よりもお腹の贅肉が気になりますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
60.5%
428人 |
39.5%
279人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
28.85%
204人 |
31.68%
224人 |
23.76%
168人 |
15.7%
111人 |
Z検定値 | 3.27 |
---|---|
オッズ比 | 1.66 |
信頼度 | 99.8% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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