解説
感情を司る大脳辺縁系
ものごとを肯定的に考えるようにしていない、ということはつまりものごとを否定的に考えがち、ということになります。何でも悪いほうに考えてしまうということが、どうして便秘と結びつくのでしょうか?
ものごとを否定的に考えると、悲しくなったり、ときには怒ったりすることに結びつきます。こうした感情が生まれるのは、脳の中の“大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)”という部分です。そして大脳辺縁系でおきた感情の刺激は、近くにある“視床下部(ししょうかぶ)”へ影響します。この視床下部は自律神経を司っており、悪感情は自律神経を乱してしまうのです。
たとえば早く便を出そうとして「腸よ動け!」と祈っても腸の動きは活発にはなりませんね。腸は食べた量や便の量によって自動的にその働きが調節されています。この調節を行っているのが自律神経です。自律神経そのものは、意識的にコントロールすることはできない神経です。この自律神経が悪感情によって乱れると、便があるのに腸が動かなくなり、便秘になることがあるのです。

ストレスと便秘
さらに、否定的な考えはストレスを生み出します。ストレスも便秘の原因になります。人にストレスがかかると、自律神経の中でも交感神経が活発になります。しかし、腸の動きがよくなるのは、自律神経のもう一方の神経である副交感神経が活発になるとき。したがって、ストレスを長く感じているとお腹の動きは低下し、便秘になります。
加えて、ストレスは腸内細菌のバランスを変えることもわかっています。狭い空間に閉じ込められるなど心理的・身体的ストレスをかけると腸の中の善玉菌が減り、悪玉菌が増加したという実験結果もあります。腸内細菌の変化は便の硬さに関連しており、便が硬くなれば便秘になりやすくなってしまいます。
もし、いつも否定的な考えをしてしまっていると思う人は、意識して肯定的に考えてみましょう。考え方にはクセがあり、初めは意識しないと否定的になりがちですが、肯定的な考えを繰り返していくうちに考え方は変えることができます。ものごとには必ずいい面と悪い面があるもの。宝探しのように、どんなことでもいい面を探してみましょう。

<参考文献>
■フロイド・E・ブルーム著、久保田競監訳、中村克樹監訳 講談社
『新・脳の探検(上)—脳・神経系の基本地図をたどる』
『新・脳の探検(下)—脳・神経系の基本地図をたどる』
■福岡医学雑誌
『腸内細菌と脳腸相関』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
ものごとを肯定的に考えるようにしていない人は、月に1回以上、便秘になりやすくなるリスクが1.96倍になります。
A: ものごとを肯定的に考えるようにしていますか?
B: 月に1回以上、便秘になりますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
65.4%
202人 |
34.6%
107人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
24.6%
76人 |
40.78%
126人 |
18.77%
58人 |
15.86%
49人 |
Z検定値 | 2.8 |
---|---|
オッズ比 | 1.96 |
信頼度 | 99.4% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
>数値の見かたはこちら