解説

みなさんは“ロコモティブシンドローム(ロコモ)”という言葉を知っていますか?
これは、年を重ねるにつれて、筋肉の量が減ったり筋力が衰えたりして、身体を思ったように動かせなくなってしまう症状です。「お年寄りがなるものだから関係ないな」と思った方、要注意ですよ!
ロコモは寝たきりや要介護のおもな原因となっている、いわば国民病です。若いころから気をつけて筋力を維持していないと、気づかないうちにロコモになってしまうおそれがあるのです。
とはいえ、何も激しい筋力トレーニングをし続けなければならないということではありません。筋力を維持するためには、手軽なウォーキングでOKなんです。
厚生労働省は、ウォーキングのような軽く汗をかく程度の運動を、週に2日以上・1回30分以上行うことを勧めています。
「まとまった運動の時間はとっていないけれど、通勤でかなり歩いているはず」という人は、歩数計を使って確認してみましょう。最近ではスマートフォンに歩数計アプリが入っていることもあるので、そちらでチェックするのもOKです。3000歩以上ウォーキングしている時間帯があれば、バッチリ筋力を維持しているといえるでしょう。

歩かないと身体はどうなるの?
人の身体は、歩く、走る、重いものを持ち上げる、姿勢をまっすぐに保つ、といった運動をするようにできています。
しかし、年を重ねると、どうしても筋肉の量は減りますし、筋力は衰えていってしまいます。そうすると、身体を動かす能力が衰えてしまい、年をとってからは転びやすくなったり、歩くのが難しくなったりします。
転んでケガをすると、しばらく動けない状態が続きます。そのうちに筋力が低下して、さらに転びやすく、歩きにくくなる…。そんな悪循環が続くと、筋肉や骨・関節といった、身体を動かすのに重要な部分がうまく働かなくなってしまい、ついには普通の生活を送るのも困難になってしまいます。
このように、身体の運動機能が落ちてしまうことで、日常生活を送ることができなくなることを“ロコモティブシンドローム(ロコモ)”といいます。
ロコモになってしまうと、外出はもちろん、家事やトイレなどの基本的な動作まで難しくなりますから、生活の質が落ちてしまうことは想像できますよね。ロコモになる前に、若いうちからしっかりとロコモ対策をすることが重要です。
ロコモにならないようにするためには、運動を続けて筋肉が衰えないようにすることが一番。しかし、筋肉の量を増やすには、習慣的に筋力トレーニングを続け、筋肉のもとになるたんぱく質を多くとらなければなりません。こうした生活を意識して続けるのはなかなか難しいですよね。
筋肉の量を増やすのは難しい…。
それならば、筋力を落とさないようにするのはどうでしょう。実は、筋力は日常生活の中の簡単な運動で維持することができるので、筋肉の量を増やすよりも取り組みやすいのです。
ただし、筋力は筋肉の量が減るよりも早く落ちてしまいます。筋力を維持するために、まずは、毎日運動することから始めましょう。

筋力維持に、週に2回・1日30分以上のウォーキングが効果あり!
「じゃあ、筋力を維持するためにはどんな運動がいいの?」という疑問が出てくると思います。何と、筋力の維持には日常生活にウォーキングを取り入れるだけでも効果があるのです。
厚生労働省では、筋力の維持のために、ウォーキングのような軽く汗をかく程度の運動を、週に2日以上・1日30分以上行うことを勧めています。
1日30分のウォーキングというと、3kmほど歩くことになるので、運動を始めたばかりの人には「ややきつい」と感じるかもしれませんが、この「きつさ」が筋力の維持には大切なのです。
また、忙しく毎日を送る人には、「ウォーキングの時間を新しくとることができない…」といった悩みもあるでしょう。
そんな人は、通勤や通学の時間を使ってウォーキングをしてみてはどうでしょうか?週に何日か、最寄り駅の一駅前からウォーキングをしてみましょう。きっと「徐々に筋力がついてきた」と感じるようになりますよ。
ウォーキングは、筋力の維持だけでなく認知症の予防にも効果があるそうです。ウォーキングは、身体も心も健康にしてくれるんですね。
週に2回・1日30分以上のウォーキング。簡単にできる運動ですので、積極的に取り入れて、いつまでも若々しい生活を送れるようにしましょう。

<参考文献>
■厚生労働省
『健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)』
■日本医事新報
『サルコペニアに対する運動療法の実際』
■日本老年医学会
『サルコペニア:定義と診断に関する欧州関連学会のコンセンサスの監訳とQ&A 』
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
1日に30分以上、歩いていない人は、同年代の人よりも筋力の衰えを感じやすくなるリスクが2.17倍になります。
A: 1日に30分以上、歩いていますか?
B: 同年代の人よりも筋力の衰えを感じていますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
37.5%
108人 |
62.5%
180人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
13.89%
40人 |
23.61%
68人 |
35.07%
101人 |
27.43%
79人 |
Z検定値 | 3.13 |
---|---|
オッズ比 | 2.17 |
信頼度 | 99.8% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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