解説
風邪の頭痛は血管拡張が原因
風邪のときに頭痛を伴う場合があります。この頭痛はなぜ起きるのでしょうか?風邪のときの頭痛はズキンズキンと脈を打つような痛みが現れます。これは血管の脈と連動して起きている頭痛の特徴です。
風邪を引くと、身体は侵入したウイルスや細菌と戦うために、免疫成分を頭部に届けようとします。そのためには頭部の血管を拡張させて血流を増やし、たくさんの血液を頭部に届ける必要があるのです。しかし頭部の血管が拡張すると、血管の周囲にある神経を刺激してしまいます。血管の脈は拡張と収縮の繰り返し。血管が拡張するときに周りの神経を押して刺激しているために痛みが起きるのです。

どうして塩分をとると頭痛が起きやすいの?
通常、血管の拡張と収縮は自律神経が調節を行っています。自律神経とは命に関わる重要な部分を24時間、絶え間なくコントロールしている神経です。この神経が問題なく働いていることにより、私たちは寝ていても呼吸ができ、どんな姿勢をとっていても一定の血圧が保たれるようにできているのです。
ところが、塩分をとり過ぎると、自律神経のひとつの交感神経を興奮させてしまいます。塩分は主にナトリウムからできていますが、ナトリウムは身体にたまると血圧が上がるなどの害があるため、腎臓で余分なナトリウムを尿に排出しようとします。ところが、交感神経が興奮しすぎるとナトリウムを排出しづらくなってしまうのです。食事で塩分をたくさんとり過ぎると血圧が上がるというのは、この交感神経が興奮し過ぎてしまうことによる自律神経失調が原因です。
そうでなくとも、ストレス社会である現代において、交感神経は緊張しやすい環境にあります。本来は身体が活動しているときには交感神経が、食事をしたり眠っているときには副交感神経が優位に働くことで身体のバランスをとっています。ですが、塩分をとり過ぎることによる自律神経のバランスの乱れは頭部の血管の拡張と収縮の調節を妨げてしまうのです。
実際に、塩分を減らすと頭痛が減ったという報告もあります。報告によると、1日の塩分量を9gから最終的に3gまで減らしたところ、実験に参加した頭痛持ちの人のうち、約3分の1の人で頭痛が改善したそうです。風邪のときだけでなく、普段から頭痛で悩んでいる人は減塩を試してみてはいかがでしょうか。

<参考文献>
■東京大学・先端科学技術研究センター 臨床エピジェネティクス講座
『1)塩分の摂りすぎによる血圧上昇のしくみを解明(Rac1-MR系)』
■味の素「からだごはんラボ」
『塩分の過剰摂取は万病の元!?』
■Consensus Action on Salt and Health(CASH)
『Lowering Salt Intake Reduces Headaches by a Third』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
塩分を控えるようにしていない人は、年に1回以上、頭痛を伴う風邪を引きやすくなるリスクが2.0倍になります。
A: 塩分を控えるようにしていますか?
B: 年に1回以上、頭痛を伴う風邪を引きますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
53.4%
165人 |
46.6%
144人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
16.18%
50人 |
37.22%
115人 |
21.68%
67人 |
24.92%
77人 |
Z検定値 | 2.93 |
---|---|
オッズ比 | 2.0 |
信頼度 | 99.6% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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