解説
運動不足はストレスが溜まる原因
ストレスの多い現代人。その原因のひとつは運動不足にあります。仕事や人間関係の問題など、脳を疲れさせるような出来事は日々多く発生しますが、それに比べて身体を動かすことが少ないと、脳と身体の疲労のアンバランスが生じます。このバランスを整えるには、運動して身体を適度に疲れさせることが効果的なのです。
海外の研究では、運動をするとさまざまな出来事をポジティブにとらえることができるという報告もあります。さらに他の調査では、20分の運動をするとその後の幸福感が12時間も続くと報告されています。
もちろん運動には血行促進や肥満の解消などいろいろと良い効果があります。ここではストレス解消としての運動の効果に注目してみましょう。

運動の効果
運動で増える成分には、心の安定をもたらす物質の“セロトニン”があります。このセロトニンがしっかり分泌されることで、ストレスに負けない脳を作ることができます。また、“エンドルフィン”も運動で増える成分です。マラソンの虜になる人がその理由にあげることの多い「ランナーズハイ」は、ランニングによって脳の中にエンドルフィンが放出されることで幸福感や満足感が高まった状態です。
エンドルフィンは、恋をしているときや人に褒められたときに増える物質。このような幸せ感を、運動でも得ることができるのですね。さらに、運動により身体が温まることで、お風呂に入るのと同じようにリラックス効果が得られます。運動で身体が温まると、筋肉の緊張がゆるみ、血流も良くなります。
さらに、有酸素運動を行うと、リラックスしたときに活発になる副交感神経が刺激され、気持ちが落ち着きやすくなります。ストレスがかかっているときには交感神経の方が刺激されるので、バランスよくこのふたつの自律神経を刺激することが大切なのです。運動により血流が良くなることで、しっかり睡眠をとることにもつながります。
血行が悪いと疲労物質が溜まり、眠気をもたらすホルモンであるメラトニンの分泌を妨げてしまいます。結果として、しっかりとした睡眠がとりにくくなります。しかし、血流を良くすることで疲労物質はとり除かれ、良い睡眠が得られるのです。しっかり睡眠がとれないと、物事をネガティブに受けとりがち。ストレスを増やしてしまいますね。

ストレス解消のための運動のポイント
ストレス解消のための運動のポイントは、あまり強すぎる運動を行わないことです。ウォーキングやジョギング、水泳やヨガといった有酸素運動がオススメです。1回だけの運動ではあまり効果がないので、できるかぎり1回あたり30分から1時間程度の運動を週3回以上、これを目標にしましょう。

<参考文献>
■日本成人病予防協会
『ストレス解消法〜運動〜』
■中小企業基盤整備機構 J-Net21
『メンタルヘルス ガイドブック』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
週に3回以上、汗をかくような運動をしていない人は、ストレスを感じやすくなるリスクが3.03倍になります。
A: 週に3回以上、汗をかくような運動をしますか?
B: 人よりもストレスを感じやすいですか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
10.4%
32人 |
89.6%
277人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
3.56%
11人 |
6.8%
21人 |
55.02%
170人 |
34.63%
107人 |
Z検定値 | 2.94 |
---|---|
オッズ比 | 3.03 |
信頼度 | 99.6% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
>数値の見かたはこちら