解説
うつに関連している神経伝達物質
うつに関連した神経伝達物質は、副腎皮質ホルモンの中でも“カテコラミン”という種類で、アドレナリンとノルアドレナリンのふたつがあります。アドレナリンは気分が高揚した時に分泌、ノルアドレナリンは不安を感じたときに分泌されます。どちらかの物質だけが増えたままでいると心が疲れてしまうので、この2つの物質がバランスよく分泌されるよう整える役割を持つセロトニンも関係してきます。
うつ病の治療薬の主流は“選択的セロトニン再取り込み阻害薬”と呼ばれるものですが、これは脳の中で一度分泌されたセロトニンが、身体に再吸収されるところをブロックして、セロトニンの効果を長く保つことでうつに関連する神経伝達物質のバランスを整えます。つまり薬に頼らずともセロトニンの量が増えれば、うつ病が改善、もしくはうつになりにくくなると考えられます。

多方面からうつを予防できる小松菜
そこで紹介するのが小松菜です。小松菜はこれらの神経伝達物質がきちんと作られ、正しく作用するように整える栄養素を備えています。
まずは、カテコラミンを作るのに必要な葉酸です。うつ病の薬だけで治療した群と、うつ病の薬と一緒に葉酸を摂取した群では、葉酸も摂取した群のほうがより改善が見られたと報告されています。
また、セロトニンの材料となるトリプトファンもふくまれています。トリプトファンは必須アミノ酸のひとつ。体内で作ることができないので、食べ物で摂取しなければなりません。さらにセロトニンから睡眠に関連しているメラトニンも作られるため、トリプトファンが不足するとうつに加えて不眠にもなります。
カテコラミンやセロトニン産生に関与する鉄分も豊富です。鉄はカテコラミンやセロトニンを作るときに必要な補酵素なので、不足すればこれらの物質が作りにくくなります。鉄分が不足すると貧血になり、脳に十分な酸素が届きにくくなってぼーっとしたり、朝起きづらくなったりうつと似た症状があらわれます。
そして、セロトニン放出に関連するカルシウムです。カルシウムは天然の精神安定剤とも呼ばれ、興奮している精神を鎮める役割がありますが、これはセロトニンの放出に関係しているからです。カルシウムが不足するとセロトニンがうまく放出されなくなります。
葉酸・トリプトファン・鉄分・カルシウムはサプリでも摂取できますが、中にはとりすぎると身体に良くない成分もあります。食事でうつを予防できる成分がバランスよくとれるのであれば、毎日の食事に小松菜を取り入れたいですね!

<参考文献>
■日本臨床栄養協会
『New Diet Therapy Vol.31 No.1』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
週に1回以上、小松菜を食べていない人は、うつと診断されることがおきやすくなるリスクが2.63倍になります。
A: 週に1回以上、小松菜を食べていますか?
B: うつと診断されたことはありますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
19.8%
118人 |
80.2%
479人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
1.34%
8人 |
18.43%
110人 |
12.9%
77人 |
67.34%
402人 |
Z検定値 | 2.59 |
---|---|
オッズ比 | 2.63 |
信頼度 | 99.0% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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