解説

食事で最初に野菜を食べることはコレステロール値上昇を防ぐだけでなく、食後の血糖値が急激に変化する血糖値スパイクの抑制にも有効です。記事ではコレステロールや血糖値のコントロールに良い食材とその理由について解説します。

コレステロールは必要なもの?
健康診断でコレステロール値を注意されることも多いので、「コレステロールは悪いもの」というイメージがある人も少なくないでしょう。しかし、コレステロールの全部が悪者、というわけではありません。コレステロールは、身体を作る上で欠かせない材料のひとつなのです。
ですが、コレステロールのひとつである、LDLコレステロールが多くなりすぎると、これが血管の壁に張り付くようにしてたまってしまうことがあります。これが動脈硬化の原因となってしまうので、こっちは危ない方のコレステロール。この危険をチェックするために、健康診断では血液の中にどのくらいコレステロールがあるかを調べます。
血液中のコレステロール値を下げるには、食物繊維、特に水に溶けやすい水溶性食物繊維がとっても効果があります。水溶性食物繊維は、野菜や果物、海藻に多く含まれているので、積極的に食事に取り入れましょう。
それだけでなく、食物繊維は糖の吸収を穏やかにしてくれる働きももっています。食事のときに、野菜や海藻などから先に食べると、糖の吸収が抑えられて中性脂肪が増えにくく、ダイエット効果という嬉しいおまけもついてくるんですよ。腸の環境がよくなって、こちらも太りにくくなる効果アリ。
野菜の食べ方ひとつで、健康もスリムな身体も守れるんです。

血管を詰まらせるコレステロールの種類を知ろう!
コレステロールは、細胞どうしを仕切る細胞膜やホルモンなどの材料になる、身体に欠かせない脂質のひとつです。何かと悪者にされがちなコレステロールですが、本当は生きていくのに必須な成分です。
コレステロールは身体に欠かせない物質なので、身体の中で必要な量を作ることができるようになっています。また、血液中のコレステロールの量は、だいたい一定の量になるように身体がバランスをとっています。たとえば、食事からコレステロールをたくさん取ったときには作る量を減らし、食事に含まれる量が少なければ多めに作る、といった具合ですね。
コレステロール値が高いと生活習慣病を引き起こすおそれがあることから、以前は食べてもいい目標量が決められていました。ですが、血液中のコレステロールの量は、身体がある程度まで調節してくれるので、今の日本ではコレステロールの摂取目標量は特に決めなくてもよくなりました。
また、コレステロールをたくさん含む食材として有名だった卵。
これも、実は悪者ではなかったことが明らかになっています。卵を1日に2個以上食べている人と、そうでない人を比べても、血液中のコレステロールが原因とされる心臓の病気や脳卒中での死亡率に、大きな差はなかったそう。
このように、コレステロールは身体に必要な物質で、そのすべてが健康に悪いわけではないことがおわかりいただけたと思います。それなのに、健康診断でコレステロール値を注意されるのは、なぜなのでしょうか。
コレステロールには、“LDLコレステロール”と“HDLコレステロール”の2種類があります。このうち、LDLコレステロールが血液中にたくさんある状態がよくないのです。
余分なLDLコレステロールは、血管の壁に張り付いて塊をつくることがあります。この塊は、血管の壁を分厚く硬くして、いずれは動脈硬化の原因になってしまいます。したがって、余分なLDLコレステロールを血液中から減らすことが大切なんですね。

動脈硬化予防とダイエット。食物繊維の効果とは?
とはいえ、コレステロール値が高くてもそのせいで身体の調子が悪くなることはないので、「病気じゃないから気にしない」という人もいるかもしれませんね。
ですが、血液中のコレステロール値が高いと、生活習慣病になりやすく、将来は動脈硬化や脳こうそくなどの病気を発症しかねません。やはり、自覚症状のない頃から、コレステロール値を下げるよう対策しておくことが重要です。
動脈硬化の原因となってしまうLDLコレステロールを減らす最も簡単な方法は、食物繊維をしっかりと取ること。特に、水に溶けやすい水溶性食物繊維は、コレステロールを包んで便として身体の外に出す働きをもっています。
水溶性食物繊維の代表は、フルーツに含まれていてジャムを固まらせる成分“ペクチン”です。ほかにもトマトの種の周りのトロッとした部分や、にんじん、キャベツなどといった野菜にも豊富に含まれています。イタリア料理にかかせないトマトソースがオリーブオイルとなじんでおいしくできるのは、このペクチンのおかげでもあるんですよ。ですから、トマトソースはホールトマトで作るのがおすすめ。
また、食べる順番にも気をつけると、コレステロールの上昇をより効果的に抑えることができます。野菜から先に食べると、ある程度の満足感を野菜だけで得ることができますね。ですから、LDLコレステロールが増える原因となる、脂身たっぷりの肉などの食べすぎを防ぐことができるのです。
血糖値の急上昇を抑える血糖値スパイク対策にも有効!
また、食事の最初に野菜を食べることは、ダイエットにもつながります。野菜に多く含まれる食物繊維は、糖の吸収を穏やかにしてくれる働きをもっています。“血糖値スパイク”という血糖値の急上昇を抑えてゆるやかに上がるため、糖が中性脂肪に変わりにくくなるのです。
そしてもうひとつ。水溶性食物繊維の整腸作用が今とっても注目されています。水溶性食物繊維が腸の中の善玉菌の栄養となって、腸内環境を改善してくれるのです。腸内環境が改善されると太りにくくなるので、この点でもダイエットに効果がありそうですね。
食事はなるべく野菜から食べる、水溶性食物繊維が豊富な野菜や海藻をとる、このふたつを意識して食事を取りましょう。コレステロール値の改善とダイエットとが同時にできて、一石二鳥ですよ。
<参考文献>
■菱田明、佐々木敏監修 第一出版
『日本人の食事摂取基準 2015年版』
■日本動脈硬化学会
『動脈硬化の病気を防ぐガイドブック』
■厚生労働省 e-ヘルスネット
『野菜、食べてますか?』
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
食事をなるべく野菜から食べるようにしていない人は、コレステロール値が基準値を超えるリスクが2.25倍になります。
A: 食事はなるべく野菜から食べるようにしていますか?
B: コレステロール値は基準値を超えていますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
72.2%
208人 |
27.8%
80人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
10.42%
30人 |
61.81%
178人 |
7.64%
22人 |
20.14%
58人 |
Z検定値 | 2.58 |
---|---|
オッズ比 | 2.25 |
信頼度 | 99.0% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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