解説
楽しいコミュニケーションで腸の機能を改善
「ストレスでお腹が痛い…」こんな経験を持つ人は多いことでしょう。繰り返す下痢の悩みを抱えている人もいるかもしれません。実際に、ストレスのようなメンタル面での負担は、下痢や腹痛につながることがあるのです。
下痢や便秘、腹痛などがあるにも関わらず、通常の検査で明らかな大腸や小腸の病気が見つからないことがあります。その代表といえるのが、“過敏性腸症候群”といわれる症状。テレビのCMやポスターでこの言葉を見かけることもがあるかもしれません。これは、消化管機能の異常やストレスなどが原因で発症する病気といわれています。
日本消化器病学会の過敏性腸症候群の診療ガイドラインによると、過敏性腸症候群はおもに薬物療法を中心として治療を進めていくように示されています。また、ストレスや不安や抑うつなどの心理的な問題が症状に関わっていることが明らかな場合には、薬物療法に加えて専門家による心理療法を行うことも推奨されています。
心理療法の手法はいくつかありますが、その代表的なものに集団で面接する方法があります。これは何人かの人が集まったときに見られる活動の中で生まれる会話や行動をもとに、専門家が患者の精神状態を分析したり、ストレスに対する治療を行ったりする方法です。
こうしたことから、家族や親しい人同士のコミュニケーション中で、笑顔がみられる会話をお互いに行うことは心理状態に良い効果を与えるとされています。また、人生や生活における活力(バイタリティ)が低い人は、下痢症状が出やすいとも報告されています。つまり、楽しい・面白い話を家族や友人と共有して活き活きと過ごすことは、ストレスや不安や抑うつなどの心理的異常が関わっている下痢の症状を改善させる効果が期待できるのです。

現代人に不可欠なスマホは使い方に要注意
楽しい・面白い話を共有する方法として、昭和の時代では家族が食卓を囲み、会話をするフェイス・トゥ・フェイスでのコミュニケーションが当たり前でした。ですが、現代ではツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどのSNSのように、インターネットを使って楽しい・面白い話をシェアする方法が急速に普及しています。特にスマホでは時間や場所を気にせずに家族や友人と楽しい・面白い話を共有できるため、ストレスを解消する方法として有効な場合があるかもしれません。
しかし、スマホには膨大なエンターテインメント要素があるので、ゲームや動画に没頭しすぎてしまい、家にいるのに家族の誰とも会話せずに1日が終わってしまう…ということもあるかもしれません。できれば、スマホでのコミュニケーションだけでなくフェイス・トゥ・フェイスで生まれる笑顔あふれる会話を大切にして、下痢や腹痛のないすっきりした心とお腹にしていきましょう。

<参考文献>
■日本消化器病学会編、南江堂
『機能性消化管疾患診療ガイドライン2014』
■九州大学心理学研究
『心理臨床場面における笑いの取り扱い:その効用と実際, 展望について』
■東北大学大学院教育学研究科研究年報
『家族療法研究グループによるコミュニケーション研究は「臨床に役立つ基礎研究」なのか?』
執筆 : 理学療法士 田中渉
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
楽しい・面白い話を家族や友人と共有していない人は、週に1回以上、下痢になりやすくなるリスクが3.34倍になります。
A: 楽しい・面白い話を家族や友人と共有していますか?
B: 週に1回以上、下痢になりますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
82.2%
254人 |
17.8%
55人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
9.71%
30人 |
72.49%
224人 |
5.5%
17人 |
12.3%
38人 |
Z検定値 | 3.58 |
---|---|
オッズ比 | 3.34 |
信頼度 | 99.9% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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