コーヒーを飲んでお腹の冷え知らずに
リスク
1.92倍

コーヒーを飲んでお腹の冷え知らずに

1日に1杯以上のコーヒーを飲んでいない人は、お腹が冷えやすくなるリスクが1.92倍になります。

解説

コーヒーはお腹に悪い?

「お腹が冷える」=「お腹を壊す」というイメージがありますね。お腹が冷えると腸が刺激されるので、急に腸の活動が活発になってしまい、下痢につながってしまうことがあります。下痢になってしまう原因は、食中毒やウイルス性の感染症、風邪などといった病気だけはありません。身体の内部の物理的な冷えや精神的なストレス、さらには、お酒の飲みすぎや食事のとりすぎなどといった食習慣も下痢の原因になるのです。

ウイルス性の感染症など、他に原因となる病気がないのに、ストレスや冷えなどから慢性の下痢や便秘、あるいはその両方が続くという症状があります。これを“過敏性腸症候群”といいます。下痢を繰り返すことで、日常生活の上で困っている人も少なくないのです。

過敏性腸症候群で起きる下痢をケアする上で、コーヒーを避けるようにいわれることがあります。コーヒーは胃腸に刺激を与え、身体を冷やす飲み物とされており、お腹が冷えて下痢のきっかけになってしまうと考えられているからです。

ですが、コーヒーは本当に下痢を引き起こす飲み物なのでしょうか?香りのよい、美味しいコーヒーがお腹を壊すきっかけになってしまうとすれば安心して楽しめなくなってしまいそうですが、結論からいうと、これはちょっと違うようです。

確かに、「コーヒーは胃腸を刺激する」というのは本当のことです。コーヒーに含まれる成分は胃を刺激し、胃酸の分泌を促します。たんぱく質の消化に必要な胃酸ですが、過剰に分泌されると胃が荒れる原因になり得ます。また、コーヒーは腸を刺激してぜん動運動を促進する働きもあります。イギリスで行われたコーヒーを飲んだ後の腸の活動を調べる実験では、およそ3割の人はコーヒーで排便が促されるということがわかったのです。

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コーヒーの効果をうまく利用するには?

ここで大切なのは、コーヒーの作用によって「下痢になる」のではなく、「排便が促される」という点です。コーヒーを飲んでも、食物の栄養を吸収する小腸の活動にはあまり影響しません。一方、コーヒーは便を排出する大腸の動きを促すという効果があります。小腸で十分に栄養を吸収できないまま食物が排泄されてしまうとこれは下痢になってしまいますが、大腸の動きだけ助けてくれるのであれば、コーヒーはむしろ「便秘に効果的」といえます。

コーヒーの排便効果は上の実験からおよそ3割の人にあると考えられていますが、ではその強さはどうでしょうか?さらなる調査から、カフェインの入った普通のコーヒーは、食事を1回しっかり食べるのと同じ程度に大腸が動く刺激になることがわかりました。飲んだ量は、240mlつまりマグカップ1杯分程度です。

便秘を解消するために、余分に食事を1回食べるというのは現実的ではありませんし、エネルギーのとりすぎになってしまいます。一方でマグカップ1杯のコーヒーを飲むことであれば、簡単に、しかも楽しんで実践できます。大腸へのコーヒーの効果は多くの人で30分以内に現れたといいます。

ここでもう一度、コーヒーと下痢の関係に戻って考えてみましょう。コーヒーで大腸が動く体質の人がその作用に気づかずにコーヒーを飲み、トイレに行きにくい時間に効果が現れてしまうと、これはかなり困ります。下痢と同じように生活の中での問題になってしまうでしょう。ですが、その作用を知った上で、ゆっくりトイレに行く余裕がある時間に効果が現れるようにすれば、便秘知らずですごせるサポーターといえるかもしれません。

過敏性腸症候群の人の中には、便秘と下痢を交互に繰り返す人も少なくありません。美味しいコーヒーで適度にお腹の調子を整え、便秘を解消できれば、突然の下痢からお腹を守る効果も期待できそうです。

コーヒーには、お腹の調子だけでなく血糖値を改善する効果もあると期待されています。これは、コーヒーに含まれるポリフェノールの一種の“クロロゲン酸”のためではないかと考えられています。国立がん研究センターの調査では、1日にコーヒーを3〜4杯程度飲む人は、まったく飲まない人よりも死亡リスクが24%低くなるという結果が得られたそうです。妊娠中の人は、コーヒーに含まれるカフェインに子宮収縮作用があることから、これよりも控えめの2杯程度が推奨されているなど、適切な量は人によって少し異なることに注意してくださいね。コーヒーの作用をうまく利用して、美味しく毎日を健康にすごしましょう。

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<参考文献>
■旦部幸博著、講談社
『コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか』

■Gut
『Effect of coffee on distal colon function.』

■Scandinavian Journal of Gastroenterology
『Coffee and gastrointestinal function:facts and fiction.A review.』

■European Journal of Gastroenterology & Hepatology
『Is coffee a colonic stimulant?』

■国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター
『コーヒー摂取と全死亡・主要死因死亡との関連について』

編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部


統計データ

1日に1杯以上のコーヒーを飲んでいない人は、お腹が冷えやすくなるリスクが1.92倍になります。

A: 1日に1杯以上のコーヒーを飲んでいますか?
B: お腹が冷えやすいですか?

A
はい いいえ
62.1%
192人
37.9%
117人
B
はい いいえ はい いいえ
22.98%
71人
39.16%
121人
20.06%
62人
17.8%
55人
Z検定値 2.76
オッズ比 1.92
信頼度 99.4%
集計数:309人
  • ・オッズ比
    AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。
  • ・信頼度
    信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
    (統計学のZ検定を使用)
    >数値の見かたはこちら

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