適度なアルコールは疲労回復の救世主
リスク
3.07倍

適度なアルコールは疲労回復の救世主

月に1回以上、グラス一杯程度のアルコールを飲んでいない人は、歩いて5分の距離でも疲れてしまいやすくなるリスクが3.07倍になります。

解説

日本には疲れている人が増えている

「たった5分の距離なのに、歩いていくのは面倒くさい…」こんなふうに感じることが多いとすれば、それは疲れがたまっているせいかもしれません。仕事や日々の生活でやらなくてはならないことはたくさんあるのに、身体が追いついていないのかもしれません。

インターネットやスマートフォンの普及、長時間労働の増加、会社で求められる成果主義の浸透などにより、生活や労働環境が変化しています。そのため、現代の日本人はストレスが多く、疲れていると感じている人が増えているといわれています。

2012年に厚生労働省が行った調査によると、一般の人の4割近くが半年以上も続く疲労を感じていました。中には生活に支障をきたすほどの慢性的な疲労を感じている人もいたのです。同じ年には文部科学省も同様の調査を行い、やはり4割以上の人に疲労がたまっていると報告しています。

疲労は、集中力の低下や身体の不調だけでなく、うつ病など心にも不調も起こすことがあります。また、疲れがたまっていることで仕事の能率が落ちる、といった経済損失も大きく、国の試算では1年間あたり1.2兆円にものぼります。

疲れというのは、健康を維持するための身体からの大事なサインです。見逃してしまうと過労死を招く可能性もあるので注意が必要です。特に、人から褒められたり、気力で乗り切ろうとしたりすると脳内を興奮させる物質が出るため、疲労感が隠れてしまうことがあります。自分の疲れは自分で気付くしかありません。疲れたときには、無理をせずゆっくり休むようにした方がよさそうです。

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適度なアルコールは疲労回復に効果的!?

「酒は百薬の長」という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。アルコールの飲みすぎは、肝機能障害や肥満などを引き起こすので注意が必要ですが、適度な飲酒であれば身体によい効果をもたらす可能性があります。

例えば、適度なアルコールは胃液の分泌を促し、消化を助けるので食事と一緒に飲むと美味しく感じられます。アルコールには精神の緊張をゆるめる作用もありますし、血行をよくするので疲労回復効果も期待できます。また、動脈硬化予防や認知症予防にもよいという報告もあります。

ただし、適度なアルコール量は人によって違います。日本人は遺伝的にアルコールの分解に関わる酵素をもつ人が少ない傾向にあるといわれているので、少量で酔ってしまう方や全く飲めない方もいます。また、アルコールやカフェインには、一時的に疲労を回復する効果がありますが、慢性的に蓄積した疲労を取り除くのは難しいため、お酒に頼ることはやめましょう。

適度な運動や十分な睡眠、バランスのよい食事、リラックスできる音楽や香りなども疲労回復に有効な可能性があるので、試してみるとよいでしょう。寝ても疲れがとれない、週末に休んだのに身体に疲れが残っているという方は、疲れすぎている可能性があります。心や身体に深刻な影響が出る前に、毎日の生活を見直したいものです。

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<参考文献>
■大阪市立大学大学院医学研究科
『疲労研究の最前線~疲労克服戦略~』

■文部科学省科学技術振興調整費 生活者ニーズ対応研究『疲労および疲労感の分子・神経メカニズムとその防御に関する研究』班
『みえてきた疲れのメカニズム』

■アルコール健康医学協会
『適正飲酒の10か条』

■タニタの健康応援ネット からだカルテ
『ほどほどならOK?「お酒」の健康小話』

執筆 : 医師 大塚真紀
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部


統計データ

月に1回以上、グラス一杯程度のアルコールを飲んでいない人は、歩いて5分の距離でも疲れてしまいやすくなるリスクが3.07倍になります。

A: 月に1回以上、グラス一杯程度のアルコールを飲んでいますか?
B: 歩いて5分の距離でも疲れてしまいますか?

A
はい いいえ
43.7%
135人
56.3%
174人
B
はい いいえ はい いいえ
2.27%
7人
41.42%
128人
8.09%
25人
48.22%
149人
Z検定値 2.63
オッズ比 3.07
信頼度 99.1%
集計数:309人
  • ・オッズ比
    AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。
  • ・信頼度
    信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
    (統計学のZ検定を使用)
    >数値の見かたはこちら

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