肉を食べないことで起きる「しびれ」
リスク
12.13倍

肉を食べないことで起きる「しびれ」

月に1回以上、肉類を食べていない人は、全身がしびれることがおきやすくなるリスクが12.13倍になります。

解説

全身のしびれはどんな病気?

『my healthy(マイヘルシー)』アンケートでは、月に1回も肉を食べない人にしびれが起きやすいという結果が出ています。肉といっても牛肉・豚肉・鶏肉などがあり、種類も食べ方もさまざまです。肉を使ったメニューはたくさんあるにもかかわらず、牛肉・豚肉・鶏肉などのどの肉も、月に1度も食べないということは、肉アレルギーがあったり、ベジタリアンだったり、偏食をしていたりといったことが考えられます。

アレルギーの場合は、医師の指導のもとでたんぱく質など身体に必要な栄養素を肉以外の食品からとる必要があります。ほかの理由で肉を食べない人も、同じように栄養を補うことが必要です。たとえば肉などの動物性食品をまったくとらない厳しいベジタリアンなどの場合、肉に含まれているある種のビタミンなどの栄養素が不足してしまう可能性があるのです。

さて、全身のしびれは“末梢神経障害(まっしょうしんけいしょうがい)”の可能性があります。神経には脳や脊髄といった中枢神経と、そこから全身の皮膚に広がる細い末梢神経の2種類があります。末梢神経障害はこの神経が傷ついてしまった状態です。末梢神経の中には、皮膚などの感覚を伝える役割をもった“知覚神経”があります。しびれは感覚の異常であり、触っていることを感じる知覚神経の異常です。

1本の神経が病気であることもあれば、いくつもの神経が傷ついていることもあります。1本の神経の障害であれば、たとえば神経に達するようなけがをした場合でも起きます。ですが、全身で障害が起きているのであればその原因を考えなくてはなりません。全身の知覚神経に異常をきたす原因となる病気といえば糖尿病などがあります。栄養素ではビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12の不足が考えられます。

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肉に含まれるビタミンがしびれを防ぐ!

末梢神経障害に関係する3つのビタミンのうち、ビタミンB1は特に豚肉に多く含まれています。ビタミンB1が不足すると、“脚気(かっけ)”という病気が起きます。脚気は平安時代から病気として知られていましたが、江戸時代に白米を食べる習慣が江戸や京都で広がったことが原因で患者数が急増しています。明治時代には、脚気の原因がビタミンB1の不足であることを日本人の研究者が突き止めましたが、脚気は昭和初期ごろまで多数の死者を出しています。このように、過去のものと思われがちな脚気ですが、実は昔の病気ではなく、現代でも偏食やアルコール依存、胃の手術後や透析中の人にはみられることがある病気なのです。

ビタミンB6は牛肉に多く含まれています。ビタミンB6欠乏の原因の1つには、結核の治療に処方される薬によるものがあります。この薬はビタミンB6が体内でうまく働かないようにしてしまい、ビタミンB6欠乏症になって末梢神経障害を引き起こすものもあるのです。

ビタミンB12は牛肉に多く、レバーであれば牛・豚・鶏いずれでも多く含まれています。野菜など植物性の食品にはほとんど含まれていないため、動物性の食品を一切とらない人は、このビタミンの不足が問題になることがあります。ビタミンB12には傷ついた神経を修復する効果があり、欠乏するとしびれの症状が治りにくくなります。もし、アレルギーなどで肉を食べることができない場合は、これらのビタミンをサプリメントなどでとるようにしましょう。

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<参考文献>
■MSDマニュアル プロフェッショナル版
『多発神経障害』

■医療法人育生会篠塚病院 北関東神経疾患センター 患者様向け情報誌みどり
『ビタミン欠乏と神経疾患①』

■国立健康・栄養研究所
『ビタミンB6解説』

■「統合医療」情報発信サイト
『ビタミンB12』

執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部


統計データ

月に1回以上、肉類を食べていない人は、全身がしびれることがおきやすくなるリスクが12.13倍になります。

A: 月に1回以上、肉類を食べていますか?
B: 全身がしびれることはありますか?

A
はい いいえ
98.1%
303人
1.9%
6人
B
はい いいえ はい いいえ
3.88%
12人
94.17%
291人
0.65%
2人
1.29%
4人
Z検定値 3.43
オッズ比 12.13
信頼度 99.9%
集計数:309人
  • ・オッズ比
    AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。
  • ・信頼度
    信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
    (統計学のZ検定を使用)
    >数値の見かたはこちら

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