解説
笑いの健康効果
日本では昔から、「笑う門には福来る」ということわざがあります。日本だけでなく、世界でも、笑うことは健康によいというのは感覚的に知られていました。医学的にもいくつかの研究で笑うことによる健康効果が明らかにされています。
たとえば、喜劇や漫才を約3時間見せた後と前で免疫細胞の活性化を測定したところ、笑った後の方が明らかに免疫細胞のはたらきがよくなったという報告があります。ほかにも、落語を見て笑った後に血糖値が下がったとする報告もあります。笑うことは、免疫力の向上だけでなく、脳の活性化、血行促進、自律神経のバランスの調整、鎮痛効果、幸福感の上昇、ストレスへの適応能力の向上などの効果を期待できることがわかっています。
そして、興味深いことに声を出して笑わなくても、作り笑顔をするだけで脳が笑っていると錯覚し、身体がリラックスできるそうです。

ストレスによる胃痛が笑いで改善する可能性
現代人は生活習慣の乱れや職場での人間関係などにより、多くのストレスを抱えているといわれています。ストレスは免疫力の低下だけでなく、自律神経のバランスを崩すと考えられています。“自律神経”とは、私たちの身体が正常にはたらくために必要な神経のことです。
自律神経は、“交感神経”と“副交感神経”から成り立っています。活動的なときや集中しているときには交感神経が主にはたらき、寝ているときやリラックスしているときには副交感神経がはたらきます。
しかし、過剰にストレスを感じると交感神経ばかりがはたらくようになり、だるくて身体が重い感じ(倦怠感)や頭痛、胃痛、下痢、微熱などさまざまな症状が出ることがあります。このように交感神経と副交感神経のバランスが乱れた状態を、自律神経失調症とよびます。
笑いは、免疫力を上げるだけでなく、自律神経のバランスも整える効果があるといわれています。つまり、ストレスからくる自律神経失調症により胃痛などの症状が起きている場合には笑うことを心がけると改善する可能性があるのです。自律神経失調症は、治りにくい病気として知られていますが、「最近はあまり笑ってないなあ…」と思ったら、まずは笑顔を作るようにしてみるとよいかもしれません。

<参考文献>
■岡山大学学術成果リポジトリ
『健康における笑いの効果の文献学的考察』
■日本臨床内科医会
『わかりやすい病気のはなしシリーズ19 自律神経失調症』
■浅川クリニック
『自律神経失調症』
執筆 : 医師 大塚真紀
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
よく笑う生活をおくっていない人は、月に1回以上、胃痛になりやすくなるリスクが2.15倍になります。
A: よく笑う生活をおくっていますか?
B: 月に1回以上、胃痛になりますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
55.6%
160人 |
44.4%
128人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
7.99%
23人 |
47.57%
137人 |
11.81%
34人 |
32.64%
94人 |
Z検定値 | 2.58 |
---|---|
オッズ比 | 2.15 |
信頼度 | 99.0% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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