解説
笑いがもつ鎮痛剤の効果
あなたは1日に何回笑っていますか?アメリカの調査によると、大人は1日平均17回笑っていたという報告があります。性別では女性の方が、年齢では若いほうがよく笑うという調査結果もあります。さて、あなたは最近、声を出して笑ったことを思い出すことができるでしょうか?笑うことにはさまざまな効果があることがわかってきています。今回は免疫との関係についてみてみましょう。
笑いが痛み止めと同じように効果を持つことを証明した実験があります。関節に継続的な炎症を起こす病気があり、この病気の患者は慢性的に続く痛みと付き合わなければならず、ストレスが溜まります。病気の治療には一般的に消炎鎮痛剤(痛みどめ)を服用します。この病気の患者を2つのグループに分け、片方には病気に関する講義、もう片方には落語を聞いて笑ってもらったあとで唾液の成分を測ってみました。すると、落語を聞いて笑ったグループの方がストレスホルモンが減少していることがわかりました。しかもたった1回の落語で1週間分の鎮痛剤の効果に相当したというのです。
インフルエンザにかかったときにも、熱を下げたり頭痛や関節痛を抑えるために消炎鎮痛剤を使用することがあります。つまり、笑いはインフルエンザにも効果的だと考えられます。

笑いによりNK細胞を活性化する!
笑いで活性化すると考えられているのは、免疫を司る細胞の“ナチュラルキラー細胞(NK細胞)”です。NK細胞は全身の血液中に存在し、病原体の侵入がないかを監視しています。NK細胞は病原体と出会うと即座に攻撃を行い、やっつけてしまいます。もちろん、相手がインフルエンザウイルスでも同様の働きをしています。
インフルエンザに感染すると、ウイルスが体内で急激に増加し、2日後にはウイルス量がピークになります。インフルエンザの症状は感染からおよそ24時間後に出始めるので、症状が出た時点では体内でウイルスはかなり増えていることになります。つまりインフルエンザは発症してからの対策よりも、インフルエンザにかからないためにどうするのかという予防が重要なのです。
もちろんインフルエンザであれば予防接種も重要ですが、普段から笑うことでNK細胞を活性化しておくこともインフルエンザの予防につながります。NK細胞はインフルエンザだけではなく、ほかの感染症やがんも抑制する効果があります。最近笑っていないな…と思ったら、積極的に笑いを日常生活に取り入れてみましょう!

<参考文献>
■大阪府
『大阪発笑いのススメ』
■サワイ健康推進課
『“笑い”がもたらす 健康効果』
■浜松医療センター
『感染症について』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
よく笑う生活をおくっていない人は、インフルエンザや感染症にかかりやすくなるリスクが3.33倍になります。
A: よく笑う生活をおくっていますか?
B: インフルエンザや感染症にかかりやすいですか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
60.5%
187人 |
39.5%
122人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
2.27%
7人 |
58.25%
180人 |
4.53%
14人 |
34.95%
108人 |
Z検定値 | 2.64 |
---|---|
オッズ比 | 3.33 |
信頼度 | 99.1% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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