フルーツで腸の環境を改善しよう!
リスク
1.91倍

フルーツで腸の環境を改善しよう!

週に3回以上、生のフルーツを食べていない人は、年に1回以上、腹痛になりやすくなるリスクが1.91倍になります。

解説

フルーツの水溶性食物繊維の効果

フルーツには腸の状態を整える効果があります。これは、フルーツに多く含まれる食物繊維のおかげなのです。食物繊維というと、ごぼうのように噛んでいると口の中に残る筋状のものをイメージしやすく、フルーツにはあまり含まれていないと思われるかもしれませんね。こうした口の中に残る食物繊維は、“不溶性食物繊維”とよばれています。口の中で唾液に溶けないわけですから水にも溶けません。

一方で、「水に溶ける」という意味の“水溶性食物繊維”は、ヌルヌル、ネバネバとした食感が特徴です。たとえばキウイやイチゴ、モモなどフルーツの果肉は、意外とヌルッとしていて、フォークで刺してもつるりと落ちてしまうことがあります。野菜では、トマトの種のまわりやオクラのネバネバ、海藻ではもずくのヌルヌルなども水溶性食物繊維です。この水溶性食物繊維は、便秘にも下痢にも、マルチに便通の改善が期待できる栄養素なのです。

水溶性食物繊維は水に溶けるため、水を含みやすく、便の中の水分量を調節する効果があります。便がカチカチの硬いときには腸まで水分を運ぶことで柔らかくしてくれます。反対に下痢のときは、便の水分を吸い取って形のある便に近づけてくれます。そして、水溶性食物繊維そのものがゼリー状になるため、便が腸の中を移動しやすくしてくれます。

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現代人には水溶性食物繊維が少ない

意外なことに、化学的に見ると、食物繊維は糖の仲間に分類されています。糖というと、甘くエネルギーになる食べ物をイメージするかもしれませんが、食物繊維は砂糖やブドウ糖などのカロリーになるものとは形が異なっています。食物繊維は人間の消化液では分解されず、エネルギーにはならないため、そのまま胃を素通りして小腸や大腸に届きます。そして、そこに住んでいる腸内細菌によってばらばらに分解され、腸の善玉菌の栄養になるのです。善玉菌は、分解された食物繊維を栄養にして乳酸や酢酸を作り出し、善玉菌が住みやすく悪玉菌が増えにくい腸内環境を作っていきます。

つまり、水溶性食物繊維は、便を適度に身体の外に出す、腸の悪玉菌を減らす、というふたつの理由で腸の中をよい環境にして、腹痛を起こしにくくしてくれるのです。

フルーツに含まれている代表的な水溶性食物繊維のひとつが“ペクチン”。ジャムを作るためにイチゴを煮詰めていると、だんだんと粘り気が出てきますね。このネバネバの成分がペクチンなのです。このペクチン加えた栄養剤を、下痢の患者が使用したところ、便の状態が改善したという報告があります。フルーツを食べることで、便秘や下痢といったお腹のトラブルを解消できるかもしれませんね。

水溶性食物繊維と不溶性食物繊維は両方とも取った方がよいとされており、「水溶性食物繊維:不溶性食物繊維=1:2」程度のバランスが理想といわれています。ですが、最近の日本人の食生活を分析すると、「水溶性食物繊維:不溶性食物繊維=1:3」と水溶性食物繊維が理想よりも少ない結果となっています。ぜひフルーツを食事に取り入れて、お腹の状態を改善しましょう。

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<参考文献>
■厚生労働省
『平成27年「国民健康・栄養調査」の結果』

■日本静脈経腸栄養学会
『日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.31(2016) No.4 』

執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部


統計データ

週に3回以上、生のフルーツを食べていない人は、年に1回以上、腹痛になりやすくなるリスクが1.91倍になります。

A: 週に3回以上、生のフルーツを食べていますか?
B: 年に1回以上、腹痛になりますか?

A
はい いいえ
32.9%
239人
67.1%
487人
B
はい いいえ はい いいえ
18.6%
135人
14.33%
104人
47.8%
347人
19.28%
140人
Z検定値 3.96
オッズ比 1.91
信頼度 99.9%
集計数:726人
  • ・オッズ比
    AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。
  • ・信頼度
    信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
    (統計学のZ検定を使用)
    >数値の見かたはこちら

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