解説
β-カロテンの意外な効果とは
ニンジンはスーパーなどで手軽に購入しやすく、料理や野菜ジュース、菓子などにも応用できる万能野菜です。ニンジンは今でも小学生、中学生が嫌いな野菜の上位に入っているという報告がありますが、子供の野菜嫌いは多様な調理や食材を経験すると克服しやすいといいます。和洋どちらの献立にも取り入れやすいニンジンは、「野菜が食べられた!」というよい経験をしやすいかもしれません。
ニンジンは、緑黄色野菜の代表野菜でもあり、体内でビタミンAに変わる“β-カロテン(ベータ-カロテン)”が豊富に含まれています。β-カロテンは、活性酸素を抑えて免疫力をアップさせたり、ガンを予防したり、皮膚や粘膜を保護して風邪などの感染症を予防したりといったように、強い抗酸化作用により血管系疾患や感染症などの疾患を予防してくれる頼もしい栄養素です。ニンジンは、身体の健康を守ってくれる野菜なんですね。
また、β-カロテンは、血糖値の改善にも効果があると期待されており、今後も注目していきたい栄養素のひとつなのです。実際に、2型糖尿病になりやすい遺伝子を持った人の中で、血液中のβ-カロテン濃度が高い人は、糖尿病の発症リスクが低いという報告があります。2型糖尿病の発症には体質や食習慣、生活習慣が大きな影響を与えますが、食事でβ-カロテンを取ることが予防につながる可能性があるのです。高血糖ぎみの方は、ニンジンなどに含まれるβ-カロテンを意識して取りましょう。

メタボ予防にふたつの「黄色」に注目
β-カロテンは油との相性がよく、油と一緒に取ることで吸収率が高めることができます。したがって、ニンジンのバターソテー、肉料理など、適度な量の油と一緒に取るようにしましょう。皮のすぐ内側に栄養素がしっかり含まれていますので、皮はなるべく薄くむくように調理しましょう。柔らかく煮る料理や、千切りにする料理の場合は、皮つきのまま調理してもよいでしょう。
タバコを吸っている人や日常的にお酒を多く飲む人は、血液中のβ-カロテン濃度が低いといわれています。メタボリックシンドロームを予防するためにも、ぜひ積極的にβ-カロテンを取るように心がけましょう。
ニンジンに含まれるβ-カロテンは、野菜や果物の黄色の元となる色素でもあります。黄色い野菜や果物に含まれる黄色い色素には、β-カロテンのほかにも“β-クリプトキサンチン”があります。β-クリプトキサンチンを含む野菜や果物には、うんしゅうみかん、パプリカ、トウガラシなどがあり、β-クリプトキサンチンはβ-カロテンと同じく、体内で必要に応じてビタミンAに変わる性質を持っています。
このβ-クリプトキサンチンには、高血糖、肝機能障害、動脈硬化、骨粗しょう症などを予防する効果が期待できるという研究結果があります。このように、β-クリプトキサンチンはβ-カロテンとともに、今後、生活習慣病を予防できる栄養素として期待されています。ただし、みかんは果物で糖分もありますので、1日に2個程度までに抑えるように注意しましょう。

<参考文献>
■Stanford Medicine News Center
『Beta carotene may protect people with common genetic risk factor for type-2 diabetes,researchers find』
■農業・食品産業技術総合研究機構 食品機能性研究センター
『食品機能性研究センターニュース』
■農業・食品産業技術総合研究機構
『喫煙・飲酒習慣と血中カロテノイド値との新たな関連を発見!』
■日本食品科学工学会誌
『ミカンの摂取と健康に関する栄養疫学調査:三ヶ日町研究』
執筆 : 管理栄養士 高橋美枝
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
週に1回以上、ニンジンを食べていない人は、高血糖と診断されやすくなるリスクが2.88倍になります。
A: 週に1回以上、ニンジンを食べていますか?
B: 高血糖と診断されたことはありますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
73.2%
437人 |
26.8%
160人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
2.18%
13人 |
71.02%
424人 |
2.18%
13人 |
24.62%
147人 |
Z検定値 | 2.73 |
---|---|
オッズ比 | 2.88 |
信頼度 | 99.3% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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