解説

亜鉛は、身体の機能を維持するための微量ミネラルです。体内に2gほどしか存在しませんが、亜鉛が不足すると味覚障害や食欲不振、免疫機能の低下を引き起こします。亜鉛は、身体にとって必要不可欠なミネラルなのです。
しかし、亜鉛には体内に吸収されにくいというやっかいな特徴があります。ところが、そんな亜鉛をしっかり体内へ運び届ける手助けをしてくれる食材があります。それはズバリ、味噌。
ある研究結果によれば、味噌に含まれる成分が亜鉛の運び屋を増やすことが報告されています。もともと大豆食品には亜鉛が豊富に含まれているので、味噌汁に油揚げや豆腐を入れればまさにスーパースープ。味噌汁を定期的に飲めば、亜鉛不足からくる食欲不振やダルさをスッキリ解消できます。

ご飯がおいしく感じられない…それって亜鉛不足かも!?
亜鉛。あまり聞きなれない栄養成分かもしれませんが、亜鉛は鉄分と同じように身体の機能を維持するために大切な微量ミネラルです。体内にたった2gしか存在しませんが、亜鉛が不足すると私たちの健康に大きな影響が生じます。
亜鉛不足は、味覚障害、食欲不振、倦怠感、皮膚炎、慢性の下痢、脱毛、免疫機能の低下や認知機能の障害などさまざまな症状を引き起こします。
ご飯の味が感じられなくなると、食欲が失せて体はダルくなります。栄養がきちんととれなくなるので、さらに体調を崩すはめに。わずかな亜鉛不足が深刻な悪循環を生むのです。2gの亜鉛の力を侮るなかれ、ということですね。
そんな大切な栄養素である亜鉛ですが、現代の日本人の間ではきちんととれていないのが現実です。厚生労働省の調査結果では、推奨量の7~8割しか亜鉛がとれていないのだそう。
それならば、亜鉛の多い食品を意識して食べればいいんじゃない?と考えるかもしれません。
確かに牡蠣などは亜鉛の含有量が非常に多く、数個食べれば1日に必要な亜鉛の量を軽くクリアできてしまいます。
しかし、ここで問題があります。実は、亜鉛は吸収されにくいミネラルなのです。
牡蠣のほかにも亜鉛は魚介類、肉類に多く含まれていますが、これらの食材をたくさん食べたとしてもおよそ7割の亜鉛しか体内に残りません。
ところが、そんな亜鉛をしっかり体内へ吸収させてくれる頼もしい食材があります。

その頼もしい食材はズバリ、味噌
食事から取った亜鉛は、腸で吸収され“トランスポーター”と呼ばれるたんぱく質の一種によって、細胞へ運び込まれます。この運び屋である“トランスポーター”が増えれば、それだけ亜鉛の吸収力もアップすることになります。
中央味噌研究所の研究結果によると、“ソヤサポニン”と呼ばれる味噌に含まれる成分が、亜鉛のトランスポーターを増やす働きをしたということが分かっています。どんな働きで味噌に含まれている成分が亜鉛の“トランスポーター”を増やすのか、まだまだ解明されていない点は多いですが、味噌が亜鉛を吸収しやすくすることは確かなのです。
もともと大豆食品には、亜鉛が豊富に含まれています。味噌汁に油揚げや豆腐を入れれば、ダブルで亜鉛をとりつつ吸収率もアップで一石二鳥です。和食の定番、味噌汁がスーパースープであるわけ、おわかりいただけたでしょうか。
味噌汁を定期的に飲めば、亜鉛不足からくる食欲不振やダルさをスッキリ解消できるのです。
ただし、気を付けておきたい点もあります。亜鉛は、大量摂取すると腎障害をおこしたり銅の吸収を妨げてしまうことがあります。食事でとれば、“お腹いっぱい”という歯止めがかかるので、特定のミネラルだけのとり過ぎを防ぐことができるのですが、サプリメントだとこうした歯止めがかからないのですね。
亜鉛をサプリメントで摂取する場合は、過剰にとりすぎないように注意しましょう。

<参考文献>
■日本醸造協会誌
『亜鉛吸収を向上させる食品因子の探索』
■中央味噌研究所研究報告第36号
『亜鉛欠乏予防における味噌の効能に関する基盤研究とその応用展開』
■菱田明、佐々木敏監修 第一出版
『日本人の食事摂取基準 2015年版』
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
週に1回以上、味噌汁を飲んでいない人は、体のダルさや食欲不振を感じやすくなるリスクが2.55倍になります。
A: 週に1回以上、味噌汁を飲んでいますか?
B: 人よりも体のダルさや食欲不振を感じていますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
72.9%
210人 |
27.1%
78人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
15.63%
45人 |
57.29%
165人 |
11.11%
32人 |
15.97%
46人 |
Z検定値 | 3.34 |
---|---|
オッズ比 | 2.55 |
信頼度 | 99.9% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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