階段上り下りで体調不良を減らそう
リスク
2.62倍

階段上り下りで体調不良を減らそう

階段を使うようにしていない人は、年に1回以上、体調不良になりやすくなるリスクが2.62倍になります。

解説

便利な世の中がもたらす健康への悪影響とは?

高齢化社会が進むにつれて、エスカレーターやエレベーターが日常生活に欠かせないものになってきています。公共施設をはじめ多くの場所に設置されていて、反対に階段は目立たない場所に密かに設置してあることも増えているのではないでしょうか。

当たり前のようにエスカレーターやエレベーターを使用するため、階段を使う機会が減っていることでしょう。高齢者や、大きな荷物を持っている人には必要ですが、しっかりと階段を上れるような健康な人が利便性を追求しすぎると、せっかくの健康を台無しにしてしまうおそれがあります。

階段を使わない生活を続けると、身体にもさまざまな悪い影響が出てきます。最もイメージしやすいのは足腰の筋力が低下してしまうことでしょう。足腰の筋力が落ちてしまうと、身体が疲れやすくなりますし、慢性的な便秘や食欲の低下、さらには睡眠の質の低下といった、一見足腰とは関係なさそうなところにまで影響が及んでしまうのです。「階段を使う」という何気ない日常の動作をしないだけで、なぜこれほど健康を害してしまうのでしょうか。

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階段昇降の運動効果

確かに、「階段の上り下り」は日常生活の中で行う動作というイメージがありますが、階段をゆっくり上るという運動は自転車に乗ることと同じくらいの運動になり、階段を速く上るという運動は縄跳びくらいの運動になります。階段を下りる運動は早歩きと同じくらいの運動です。階段を上ることで筋力トレーニングになり、お尻やふくらはぎの筋力が向上するといった効果も期待できます。

階段上り下りを避けていると、こうした日常生活の中で運動する機会を逃してしまいます。そのため、呼吸して身体に酸素を取り込む心肺機能や、足腰の筋力が低下してしまう可能性があるのです。すると、疲れやすい身体になってしまいます。何をするときも思うように身体を動かせず、疲労感を“体調不良”と感じてしまうかもしれません。

また、階段の上り下りなど、日常的に行うことができるちょっとした運動を行っていないと、運動機能が低下して日常生活に支障が出る“ロコモティブシンドローム”という状態になるリスクも高まります。ロコモティブシンドロームにならないようにするためにも、普段から足腰を使う生活を心がけ、歳をとっても「必要なときに動く身体」を保つ必要があるのです。

さらに、運動不足は自律神経の乱れを引き起こすため、睡眠不足や便秘といった症状が出ることがあります。このように、運動は自律神経の働きにも関わっているので、この点でも階段の上り下りなどといった運動が重要になってきます。

運動を行っているときは、身体を興奮させ活動的にするために、自律神経の中でも交感神経が優位になります。運動が終わると適度な疲労を感じて、今度はリラックスして休息するよう、副交感神経が優位になります。この休息の時間に良質な睡眠をとることができ、胃腸などの消化機能が働きやすくなります。

運動によって筋力を維持し、自律神経の調整がうまく働くようになることで体調が安定しやすくなるのです。仕事などによる精神的な疲れを感じている人は多いことでしょう。そんなとき、身体をしっかり休めてあげるため、適度に身体を疲れさせるように階段へ足を向けてみてくださいね。

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<参考文献>
■中村隆一、齋藤宏、長崎浩著 医歯薬出版
『基礎運動学 第6版』

■国立健康・栄養研究所
『改訂版「身体活動のメッツ(METs)表」』

■豊中市
『段トレ(階段トレーニング)で健康づくり』

執筆 : 理学療法士 田中渉
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部


統計データ

階段を使うようにしていない人は、年に1回以上、体調不良になりやすくなるリスクが2.62倍になります。

A: 階段を使うようにしていますか?
B: 年に1回以上、体調不良になりますか?

A
はい いいえ
51.8%
160人
48.2%
149人
B
はい いいえ はい いいえ
41.42%
128人
10.36%
32人
44.01%
136人
4.21%
13人
Z検定値 2.81
オッズ比 2.62
信頼度 99.5%
集計数:309人
  • ・オッズ比
    AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。
  • ・信頼度
    信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
    (統計学のZ検定を使用)
    >数値の見かたはこちら

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