解説
人の身体が持つ体温調節機能
人はさまざまな機能を用いて体温を調節し、一定に保っています。たとえば暑いときに汗をかくのは、身体の表面から水分が蒸発するときに一緒に熱を冷ましてくれるため。寒いときに身体がブルブル震えるのは、筋肉を伸び縮みさせて熱を作っているからです。しかしこの体温調節がうまく働かないと、普段とは違う体温になってしまいます。
普段から階段を使っていない人は、エレベーターやエスカレーターをよく利用したりすると考えられますね。どちらかといえば身体を動かすことが少なくなっているのではないでしょうか。では、そういった人はどうして熱が出やすくなるのでしょうか?

運動不足が原因となる発熱の理由
考えられる理由は3つあります。1つは運動不足による自律神経のトラブル。自律神経は身体の調子を整える神経で、体温調節も担っています。自律神経が狂えば、体温調節もうまくできなくなり熱が出やすくなる人もいます。
2つ目の理由は「うつ熱」です。聞きなれない言葉ですが、うつ熱のうつは漢字で書くとうつ病と同じ「鬱」です。ただし、心の病気のうつ病とは関係しません。これは、熱が体の中にたまってしまうことで出る熱のことなのです。よく知られているのは熱中症です。
夏の炎天下でエアコンのついていない車の中にいると、それだけで体温は40℃を超えてしまいます。これほど極端ではなくても、暑さを感じにくくなった高齢者が服を着すぎて体温が上がる場合もうつ熱です。実は、肥満で運動不足の人は動脈硬化になりやすく、普段なら熱を放出する手足への血流が減少してうつ熱をおこしやすくなります。
3つ目の理由は、心因性の発熱です。運動はストレス発散でもあり、他のストレス発散の方法がない場合はストレスから熱がでてしまうことがあります。ストレスが強くなると、自律神経で興奮や緊張状態のときに働く交感神経が働きすぎてしまい、熱が出ます。
「心因性ならたいしたことはないのでは?」と思われるかもしれませんが、急に39℃の熱が出る場合や、37℃程度の微熱が長く続くこともあります。検査をしても熱が出るような他の病気がなく、解熱剤を飲んでも効果がないのが特徴です。心因性発熱になってしまったら、とにかく心身を休めることが重要で、この時期の運動は勧められません。しかし普段から軽い運動を続けることで、ストレス解消になり、心因性発熱を予防できると考えられるのです。
こうした3つの原因にもし思い当たることがあれば、体調の良いときにはふだんから階段を使って身体を動かしましょう。有酸素運動の方が効果が高いので、肺に空気がたくさん入るよう胸を張って、腕を振って歩くことがおススメです。

<参考文献>
■厚生労働省
『生理』
■九州大学大学院医学研究院心身医学
『心因性発熱の治療法の確立に向けた基礎研究』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
階段を使うようにしていない人は、熱が出やすくなるリスクが3.39倍になります。
A: 階段を使うようにしていますか?
B: 熱が出やすいですか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
51.8%
160人 |
48.2%
149人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
2.27%
7人 |
49.51%
153人 |
6.47%
20人 |
41.75%
129人 |
Z検定値 | 2.81 |
---|---|
オッズ比 | 3.39 |
信頼度 | 99.5% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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