解説
ワカメと味噌の整腸効果とは?
ワカメなどの海藻類の歴史は大変古く、縄文時代から弥生時代までさかのぼるといいます。海藻の一部が遺物の中で発見されており、さらには、飛鳥時代につくられた日本最古の法典である“大宝律令”でも、海藻を租税として納めるよう定められていたようです。このように、日本では古くから日常的にワカメなどの海藻類を食べてきたと考えられます。
歴史の古いワカメですが、こうした海藻を具にした味噌汁を飲んでいると、下痢になるリスクを減らせる可能性があります。これは、海藻類と味噌、両方の整腸作用の効果と深く関係しています。
ワカメなどの海藻類には、食物繊維が豊富に含まれており、特に水溶性(水に溶けやすい)の食物繊維が多く含まれています。海藻に含まれる食物繊維のひとつである海藻のぬめり成分には、コレステロールや中性脂肪を下げ、血糖値の上昇をゆるやかにして便秘を解消するといった効果があります。
ワカメなどの海藻類に含まれるフコイダンとよばれる食物繊維は、便秘だけでなく、下痢や便秘を習慣的に繰り返す人に対し、これらの症状を緩和させる作用を持っているといわれています。
さらに味噌は、腸内環境を良くしてくれる発酵食品です。ワカメなどの海藻類を入れた味噌汁は、海藻と味噌のダブルの効果が期待できるので、便秘や下痢などでお悩みの方には特におすすめです。

まずは腸内環境を整えよう
原因となる病気が特になくても下痢や便秘を習慣的に繰り返す症状を、“過敏性腸症候群”といいます。過敏性腸症候群は、ストレスに起因して下痢や便秘を繰り返す疾患ですが、症状そのものがさらにストレスになっている場合も多くあります。まずは、腸内環境を整えて症状を軽くしていくことが大切です。
腸内には、悪玉菌、善玉菌、状況によって悪玉菌的にも善玉菌的にも働く日和見菌(ひよりみきん)が存在しています。これらの菌がバランス良く存在していることで、腸内環境や身体の健康が保たれています。しかし、このバランスが崩れたときに、腸内環境が悪化し便秘や下痢などを引き起こしてしまいますので、腸に良い発酵食品やワカメなどの海藻類を取るように心がけましょう。
ワカメの味噌汁に、大豆の栄養を消化しやすくした豆腐をプラスするのも良いでしょう。また、腸は、免疫機能の大部分を司る重要な器官といわれています。便秘や下痢を予防するほかにも、風邪や感染症を予防したり、さらには代謝が高まり痩せやすくなるといったダイエット効果も期待できます。風邪をひきそうなときは、温かい味噌汁で身体を温めつつ、抗酸化作用が強いビタミンCが豊富なキャベツなどの野菜も入れて食べると、風邪を予防することができますよ。

<参考文献>
■アステラス製薬
『IBSネット 下痢型情報ナビ』
■大塚製薬
『食物繊維の分類と特性』
■神州一味噌
『おみそ汁で乳酸菌』
執筆 : 管理栄養士 高橋美枝
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
週に1回以上、ワカメなど海草の味噌汁を飲んでいない人は、週に1回以上、下痢になりやすくなるリスクが2.28倍になります。
A: 週に1回以上、ワカメなど海草の味噌汁を飲んでいますか?
B: 週に1回以上、下痢になりますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
60.4%
198人 |
39.6%
130人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
7.01%
23人 |
53.35%
175人 |
9.15%
30人 |
30.49%
100人 |
Z検定値 | 2.76 |
---|---|
オッズ比 | 2.28 |
信頼度 | 99.4% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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