解説
その脚の症状、むずむず脚症候群では?
“むずむず脚症候群”、という言葉を聞いたことがあるでしょうか。その名の通り、脚がむずむずして動かし続けたくなる症状で、レストレスレッグス症候群といわれています。むずむずというと、脚の表面を何かが這い回るような感覚を想像するかもしれません。人によっては「うずうずしてじっといしてられない」「ひきつってぴくぴくする」感覚だともいわれます。レストレスとは「休めない」という意味なので、レストレスレッグは「休めない脚」という意味になります。
むずむず脚症候群は命に関わる病気ではありません。そして症状があるからといって、必ず治療が必要というわけでもありません。ですが、夕方から寝るころにかけて症状が出ることが多くなります。そのため、脚が気になって寝つきが悪くなったり、横になっていても何度も身体を動かしたくなって眠りが浅くなってしまう、など睡眠の妨げになることがよくあります。
こうした症状があることで、日中も眠気が出たり、集中力が低下したりと日常生活にも影響が出てしまいます。また、こうした睡眠不足は“睡眠負債”といって、長期間続くことで身体に影響が出やすくなってしまうことがあります。また、長く続く睡眠負債は、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病などのリスクを高めてしまうこともあるのです。

肉の摂取でむずむず脚症候群が治るかも
むずむず脚症候群にはいくつかの原因が考えられています。服用している薬の副作用として現れることもありますし、慢性腎不全、パーキンソン病、慢性関節リウマチなどの病気に伴って起きることもあります。しかし、内服薬や病気が原因でない場合は脳に蓄えられた鉄、“フェリチン”不足の可能性があります。
脳内の鉄の量を直接測ることはできないのですが、血液検査をすることである程度は調べることができます。炎症などの病気がある人以外は、血液のフェリチンの濃度が一定以下の場合はフェリチン不足と判断されます。フェリチンとは鉄とたんぱくがくっついたもの。つまり、鉄分とたんぱく質をしっかり摂取すれば、フェリチン不足は改善できるのです。
実際、むずむず脚症候群の患者に鉄剤を服用してもらったところ、約3割の患者が改善したという報告もあります。
鉄分だけならばサプリメントで簡単にとることが可能ですが、服用すると人によっては吐き気や胃もたれ、便秘になることがあります。また、やみくもにサプリメントを服用していると、鉄が体内で過剰になり、肝臓に害がでることがあります。そのため、サプリメントは使用するにしても最小限にして、食事できちんと鉄をとれることが理想的です。そこで、肉を食べるようにしましょう。
肉にはたんぱく質はもちろん、体内に吸収されやすいヘム鉄が多く含まれているので、効率的にフェリチンを増やすことができます。このとき気をつけたいのは、鉄の吸収に関係する食物です。ビタミンCを多く含む野菜や果物を一緒にとると、鉄分は吸収されやすくなります。反対にコーヒーなどのカフェインやお茶のタンニンは鉄の吸収を妨げるので、食事のときに肉と一緒にとることはできるだけ避けるようにしましょう。
成人が1日にとるべきたんぱく質の量は50〜60gくらいで、これは牛肉の赤身もも肉では230〜280gくらいになります。男性ならば、これで1日に必要な鉄分の最低ラインはとれるのですが、女性は月経のためもう少し鉄分が必要です。肉だけでなく、卵の黄身や貝類、野菜の中でも鉄分豊富な小松菜やえだまめをプラスするとよいでしょう。

<参考文献>
■厚生労働省 e-ヘルスネット
『レストレスレッグス症候群/むずむず脚症候群』
■神経治療誌 特別プログラム抄録
『レストレスレッグス症候群』
■菱田明、佐々木敏監修 第一出版
『日本人の食事摂取基準 2015年版』
■文部科学省
『日本食品標準成分表 2015年版(七訂)』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
月に1回以上、肉類を食べていない人は、足にチクチクした痛みが起きやすくなるリスクが12.13倍になります。
A: 月に1回以上、肉類を食べていますか?
B: 足にチクチクした痛みはありますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
98.1%
303人 |
1.9%
6人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
3.88%
12人 |
94.17%
291人 |
0.65%
2人 |
1.29%
4人 |
Z検定値 | 3.43 |
---|---|
オッズ比 | 12.13 |
信頼度 | 99.9% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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