解説

現代人は多くのストレスを抱えて生活していますよね。ストレスは精神的にもつらいものですが、身体にも大きな負担をかけています。
胃や腸などといった身体の器官は、自律神経によって調節されています。自律神経には交感神経と副交感神経があり、この2つがバランスよく働くことで、身体の器官が正常に活動することができます。
しかし、ひとたびストレスを受けると、自律神経のバランスが崩れてしまい、身体の器官はいつも通りの正しい働きをしてくれなくなります。このとき、身体は非常事態となっているので、大きな負担がかかっています。そうなると、免疫力も弱まってしまうので、風邪にかかりやすくなってしまうというわけです。
ストレスを感じている人は、腹式呼吸にチャレンジしてみましょう。腹式呼吸は、ストレスで緊張した身体をリラックスさせることができ、免疫力を元の状態に戻してくれます。
鼻からゆっくり息を大きく吸って、お腹が膨らむようイメージしながら、口からゆっくり息を吐くのがコツです。最初は、お腹まで動くような呼吸をするのは難しいかもしれません。ですが、あまり気にせず、リラックスして深呼吸する時間を1日10分程度とりましょう。

ストレスで免疫力が弱まる!?
仕事や人間関係、現代社会に生きる私たちのまわりには、ストレスのもとがたくさんありますよね。ストレスは精神的にもつらいものですが、身体にも影響が出てしまいます。身体は、長く続くストレスを外敵とみなします。そして、この外敵から身体を守るために、非常事態モードになってしまうのです。
身体が非常事態モードに入ると、たとえばお腹が痛くなることがあります。胃腸の働きは、自律神経によって調節されていますが、ストレスによって自律神経のバランスが崩れるとうまく働かなくなってしまい、胃腸がいつも通りの働きができないことで、お腹が痛くなってしまうのです。
そして、胃腸がうまく働かなくなると、食べ物が正常に消化されなくなってしまいます。身体を動かすエネルギーは、消化された食べ物から得ていますので、非常事態におちいった身体はエネルギー不足になってしまいます。
エネルギー不足を解消するために、身体は自律神経のうち、交感神経を働かせて血液の量を増やし、エネルギーを全身にたくさん運ぼうとします。この状態がずっと続いてしまうと、大量の血液が血管を押し上げながら流れる状態、つまり高血圧になってしまうのです。
また、身体の非常事態モードが続くことで、免疫力にも悪い影響を及ぼします。副交感神経よりも交感神経が強く働いている状態では、免疫の仕組みに重要な働きをしているリンパ球の数が減ってしまうのです。つまり、免疫力が下がって風邪を引きやすくなるといった影響が出てしまうということですね。

腹式呼吸で非常事態モードから身体を切りかえよう
ストレスの原因はさまざまですが、終わりが見えているものも少なくありません。たとえば、仕事のストレスは勤務時間が過ぎれば終わりです。ぎゅうぎゅう詰めの満員電車に乗るといった行動もかなりのストレスですが、降りる駅までのことです。
こうしたことは頭ではわかっていますが、身体はそれを感じることがなかなかできません。ですので「もう非常事態モードはおしまい」と身体にも教えてあげることが大切なんです。それでは、身体を非常事態モードから切りかえるには何をしてあげればよいのでしょうか?
そこでオススメなのが腹式呼吸。特別な道具なしで、いつでもどこでもできるんです。
腹式呼吸は、お腹の上のほうまで膨らむほどたっぷり息を吸って吐く呼吸です。「お腹が膨らむ」ことに対して抵抗感を感じる人もいるかもしれませんが、呼吸が終わればもちろんお腹は引っ込みますので、気にする必要はありません。
まずは、身体の力を抜いてゆったりと座るか横になるなど、リラックスできる体勢になりましょう。最初から腹式呼吸ができなくても大丈夫。数回は普通の呼吸を行い、続いてゆっくり、鼻から息をたっぷり吸います。お腹のほうまで、息で膨らむ感じをイメージしましょう。そしてゆっくり口から息を吐きます。鼻から吐くほうが楽な場合は、そうしてもOKですよ。
腹式呼吸は1日2回、10~20分ほど行うとよいでしょう。まずは、ゆったり座れる、または横になれるお気に入りの場所を作るとよいですね。
腹式呼吸をする時間帯でオススメなのが、夜のお休み前。習慣化しやすく、リラックスした状態でゆっくり眠れるといったところがよいポイントです。
最初は腹式呼吸がうまくできない人も多いと思います。うまくできないことがあっても、徐々にできるようになってきますので気にしないようにしましょう。

<参考文献>
■ハーバード・ヘルス出版部
『Relaxation techniques: Breath control helps quell errant stress response』
■公益財団法人 パブリックヘルスリサーチセンター
『呼吸法』
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
週に3回以上、腹式呼吸を行っていない人は、年に1回以上、風邪を引くリスクが2.27倍になります。
A: 週に3回以上、腹式呼吸を行っていますか?
B: 年に1回以上風邪を引きますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
22.2%
64人 |
77.8%
224人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
14.58%
42人 |
7.64%
22人 |
63.19%
182人 |
14.58%
42人 |
Z検定値 | 2.65 |
---|---|
オッズ比 | 2.27 |
信頼度 | 99.1% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
>数値の見かたはこちら