解説
年齢と共に塩味を感じにくくなる?
緑黄色野菜とは、体内でビタミンAに変わるカロテンの量が多いほうれん草、かぼちゃ、にんじん、ブロッコリーなど色の濃い野菜のことを指します。ビタミンAだけでなく、ミネラルや食物繊維など身体を整える栄養素が詰まっていますので、不足しないようにしっかりとることが大切です。
生活習慣病予防の観点から、野菜を1日に350g以上、そのうちおよそ3分の1は緑黄色野菜とすることが望ましいとされています。ほうれん草やかぼちゃなどの緑黄色野菜は、火を通して食べることが多いですね。緑黄色野菜をゆでたときには、そのゆで汁は捨てないで。実は、緑黄色野菜をそのゆで汁ごと食べると、生活習慣病になりやすい濃い味付け好みから、薄味でも美味しく食べられる食生活へと改善していくことができるのです。
人の舌には“味蕾(みらい)”という味を感じるセンサーがあり、甘味、塩味、苦味、酸味などの味を感じとっています。しかし年齢を重ねて中高年になるにつれて、このセンサーの数が減って味を感じる感度が落ちてしまいます。個人差はあるものの、最も味の感度の低下が起きやすいのが「塩味」であるといわれています。歳をとるにつれて、味が薄いと物足りなさを感じてしまう場合があるのですね。
また中高年に限らず、食生活の乱れなどでコンビニ弁当や加工食品などを頻繁に食べていると、亜鉛が不足して味覚障害を起こしてしまうことがあります。薄味では物足りなくなり、さらに濃い味付けばかりたくさん食べてしまう可能性も高くなります。
濃い味付けに慣れてしまうと、塩分をとり過ぎて高血圧のリスクを高めてしまいます。それだけでなく、濃い味付けとともに主食(ごはん)をたくさん食べてしまい、糖質過多により肥満になりやすくなります。肥満になると、動脈硬化などを引き起こすリスクも高くなりますので、濃い味付け好みが健康問題に発展する可能性は大いにあるというわけです。

緑黄色野菜は血管を丈夫に!驚くべきパワーとは?
高血圧を予防するためには塩分量を減らすだけではなく、食事で必要なビタミンやミネラルを摂取することが重要になります。緑黄色野菜には、抗酸化作用により血管のさびつきを防止し、免疫力を高めるビタミンCやカロテン、ビタミンE、塩分を排出する役割を持つカリウム、腸内環境を改善する食物繊維などが豊富に含まれています。
カリウムは、ゆでると3割ほどがゆで汁に出ていってしまうと考えられています。ですから、野菜スープや味噌汁など、ゆで汁ごと食べられる調理法ならばカリウムがむだになりません。また、塩分の量を抑えて薄味を心がけるには、だし汁をしっかり使うようにしましょう。
風味の豊かなだし汁を使うことにより、味噌などの調味料の量を減らすことができます。野菜スープならば野菜自体がだしになります。さらにたんぱく質の肉をプラスすると、コクが出て塩や顆粒コンソメなど味付けを濃くしなくても美味しく食べることができます。また、レモン汁などの酸味を料理にプラスすることで調味料を抑えることができますので、こちらもおすすめです。
緑黄色野菜には、血管を丈夫にする抗酸化物質や、塩分を排出してくれるカリウムがしっかり含まれているので、高血圧や生活習慣病の予防が期待できます。血圧が気になる人は、緑黄色野菜を意識し、ゆで汁ごと食べるように心がけましょう。

<参考文献>
■オムロン はじめよう!ヘルシーライフ
『vol.88「味覚の変化」が教えてくれること』
執筆 : 管理栄養士 高橋美枝
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
週に1回以上、緑黄色野菜を煮汁ごと食べていない人は、濃い味付けだけを美味しいと感じやすくなるリスクが2.32倍になります。
A: 週に1回以上、緑黄色野菜を煮汁ごと食べていますか?
B: 濃い味付けだけを美味しいと感じますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
35.3%
109人 |
64.7%
200人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
4.85%
15人 |
30.42%
94人 |
17.48%
54人 |
47.25%
146人 |
Z検定値 | 2.67 |
---|---|
オッズ比 | 2.32 |
信頼度 | 99.2% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
>数値の見かたはこちら