解説
味の感度が低下?!中高年以上は要注意
健康診断などで「血圧が高めですね」と指摘されたことはないでしょうか。医師から「血圧が高めなので、濃い味付けは控えましょう」と言われたという人も少なくないと思います。確かに、濃い味付け、つまり塩分の高い食事は高血圧を招き、より深刻な病気を引きおこすリスクを高めてしまいます。自分でも知らず知らずのうちに濃くなっていることが多い味付け。味付けが濃くなっていってしまう理由とは何なのでしょうか。
味付けが徐々に濃くなっていってしまう理由の1つとして挙げられるのが、加齢による味覚感度の低下です。年齢を重ねると、舌の上の味を感じる部分である“味蕾(みらい)”の数は減少していきます。すると、特に塩味の感度は大幅に低下してしまいます。塩味を感じにくくなるため、どんどん味付けを濃くしてしまうというわけですね。
味蕾の減少による味覚感度の低下は加齢によるものが大きいのですが、若い世代も油断してはいけません。若くても、普段から味付けが濃い加工食品やジャンクフードなどを多く食べていると、濃い味付けに慣れてしまい、薄味では満足できなくなってしまうことが多いので注意が必要です。
高血圧は中高年以上の方には特に気をつけていただきたい症状ですが、若者には関係ないというわけではありません。濃い味付けのもの、すなわち塩分を多く含む食べ物をとることで、若い世代でも高血圧のリスクは高まります。高血圧は動脈硬化や心臓病、腎臓病、胃がんなどのトリガーにもなりますので、若い頃から食生活には気を付けたいですね。

減塩には根菜や野菜の旨みが決め手!
みなさんは普段から野菜や根菜類をしっかり食べているでしょうか?「野菜は食べているけれど、根菜はあまり気にしたことがない」という人も多いかもしれません。根菜とは、大根やにんじん、れんこん、ごぼう、かぶ、玉ねぎなどの地面の下でできる茎や根を食べる種類の野菜です。特に冬が旬のものが多く、寒い時期にできる根菜は、栄養もぎゅっと詰まっています。根菜は、身体を温めてくれる効果を持っていますので、特に冷えが強くなる寒い冬には意識してとりたい食品です。
根菜、野菜には塩分を排出する作用があるカリウムや、血管の錆びつきを防止するビタミンC、βカロテン、ビタミンEなど身体に優しい栄養素がたっぷり含まれています。根菜、野菜たっぷりのスープや味噌汁は、溶けだした栄養素もまるごととることができるので、具だくさんにしてしっかり食べましょう。
ただし、スープや味噌汁を1日に何度も食べると、やはり塩分を多くとってしまうことになりますので、1日に1〜2回を目安にすると良いでしょう。また、汁物に根菜や野菜を入れることで、だしや旨みがしっかりつきますので、塩分が多い調味料を入れすぎなくてもすむという利点があります。上手に素材の旨みを生かすことで自然に減塩できるのです。
また、根菜、野菜は食感を楽しめるものが多く、サラダにしても美味しく食べられます。しゃきしゃきした歯ごたえがある大根やれんこんのサラダは、お酢やこしょう、唐辛子などを調理の際のアクセントにして食べると良いでしょう。さらに根菜の皮には、ポリフェノールという抗酸化作用が強い栄養素も多く含まれますので、捨てずにきんぴらなどにするのもおすすめです。
和食は洋食に比べて漬物、味噌汁、煮物、塩魚など塩分が多い献立が多いとされています。塩分を一気に減らすことは難しいですが、煮物、味噌汁などの献立はだしや旨みを生かして減塩することが可能です。旨みを楽しみ、薄味でも満足することができるようになれば怖い高血圧のリスクはぐっと低くなりますよ。

<参考文献>
■国立研究開発法人国立循環器病研究センター
『食塩と高血圧と循環器病』
執筆 : 管理栄養士 高橋美枝
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
週に1回以上、根菜や野菜を食べていない人は、でき上がった料理の味が薄いと感じてしまうことが多くなるリスクが2.86倍になります。
A: 週に1回以上、根菜や野菜を食べていますか?
B: でき上がった料理の味が薄いと感じてしまうことは多いですか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
89.6%
277人 |
10.4%
32人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
15.53%
48人 |
74.11%
229人 |
3.88%
12人 |
6.47%
20人 |
Z検定値 | 2.73 |
---|---|
オッズ比 | 2.86 |
信頼度 | 99.3% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
>数値の見かたはこちら