解説
「楽しさ」「コミュニケーション」「リラックス」は笑いから生まれる
笑いの種類は、大きく3つに分けられます。1つめは「快の笑い」といい、面白い話をしたり、会話が盛り上がったり、美味しいものを食べたり楽しい時間を過ごしているときの本能的な笑いです。2つめは「社交上の笑い」といいます。たとえば、近所の人や会社で挨拶を交わすときには、誰でもむすっとした表情にならないように気をつけて笑顔を見せることでしょう。このように人とのコミュニケーションや集団生活において心理状態を表現するための笑いや、挨拶での自然な笑顔にみられる笑いのことを社交上の笑いといいます。3つめは「緊張緩和の笑い」。精神的に緊張した状態や緊迫した状況が続いたあと、緩んだ瞬間にふと現れる笑いのことです。
このように、日常生活のさまざまなシーンにみられる笑いには、いくつもの異なる意味があります。その全てはポジティブな感情表現(嬉しさ・楽しさ)、人との交流(笑顔あふれる会話)、不安を払拭する笑顔(安堵感)などになっています。笑うことに悪い要素が見当たりませんね。「日本人は作り笑いが多い」といわれることがありますが、少し笑いを作ったとしても、上手く人と付き合おうとする意思の表れともいえます。

笑いがもたらす健康への恩恵
こうした笑いは、人の身体にも影響をあたえています。その1つは身体的な活動、つまり運動効果です。実は、お腹を抱えて笑うと散歩するよりもカロリーの消費が多いのです。加えて、笑うときには横隔膜や腹横筋などのインナーマッスルから腹直筋や大胸筋などのアウターマッスルまで、お腹周りのさまざまな筋肉が働きます。よく笑う人は、カロリーを消費する代謝の活性化やさまざまな腹筋運動に匹敵するトレーニング効果により、健康状態を維持する効果が期待できます。
また、笑うことで自律神経がうまく調整されるため、体調を維持することが期待できます。笑うときには、ストレスに関わるホルモンや女性ホルモンなどの調整機能を持つ脳の一部が深く関わっています。笑いによってこの部分が刺激されることで、自律神経が身体全体を調整し、ホルモンバランスを整えると考えられているのです。
もし、笑いがなくなってしまうと、脳は自分が不幸な状態であると感じて自律神経によるホルモンバランス調整が不健康なほうに傾いてしまう場合もあります。自律神経を整えて健康を維持する方法は、雑誌やメディアでも多くみられます。笑いやすい環境を作ったり、笑いが伴う行動することも健康のためにとても有効な方法なのです。

<参考文献>
■近畿福祉大学紀要
『笑いの発生メカニズム』
■チャイルド・リサーチ・ネット
『チャイルド・リサーチ・ネットトップページ』
執筆 : 理学療法士 田中渉
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
よく笑う生活をおくっていない人は、週に1回以上、体調不良になりやすくなるリスクが1.86倍になります。
A: よく笑う生活をおくっていますか?
B: 週に1回以上、体調不良になりますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
58.1%
347人 |
41.9%
250人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
7.04%
42人 |
51.09%
305人 |
8.54%
51人 |
33.33%
199人 |
Z検定値 | 2.76 |
---|---|
オッズ比 | 1.86 |
信頼度 | 99.4% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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