解説
リンゴのさまざまな効果
西洋に「1日1個のリンゴで医者知らず」ということわざがあります。その理由として、リンゴを日常的に食べていると、血中コレステロールが増えにくくなることが挙げられます。血中コレステロールが多くなると、肥満につながり、心臓や血管の病気になるリスクが上がってしまいます。リンゴは血中コレステロールの増加を防ぐことで、肥満からくる病気を防いでくれるというわけですね。
さらには、癌や喘息などの予防につながるといった効果も考えられています。そしてリンゴは、風邪のときにも大活躍。風邪に対するリンゴの効果を見てみましょう。

風邪のときはいつも以上のカロリーが必要
とにかく、風邪をひいたときはエネルギーになるものが必要です。なぜなら、熱が上がると代謝が上がって、静かに寝ているだけでも普段より消費カロリーが増えるからです。たとえば、体温が36℃から38℃になると1.44倍のエネルギーが必要になります。これは成人男性なら平熱のときよりも660kcal、女性なら528kcalも余分にエネルギーを消費するということです。
そもそも風邪のときはなぜ熱がでるのでしょうか?それは、身体の中の免疫にかかわる細胞が、風邪の原因となるウイルスや細菌を攻撃しているからです。病原体を倒すのに発熱が避けては通れないとはいえ、あまりにも体温が高いと、眠れなかったり飲食ができなかったりして自分自身が弱ってしまうこともありますね。発熱によって消費されたエネルギーを補う必要があるのに、食欲が低下してエネルギー源となるものを十分食べられないことも。そんなときこそリンゴの出番です。
リンゴは口当たりがさっぱりしていて熱が出たときにも食べやすく、小さなお子さんでもすりおろしリンゴなどであれば口にすることができます。リンゴは1個で約150kcal。そして、糖分が多いので、すぐに体内でエネルギーとして使用することができます。うれしいことに、リンゴには身体を冷ます効果もあります。解熱剤は効果的ではありますが、軽い熱の場合は下がりすぎてしまうこともあります。リンゴならば、身体を冷ます効果をうまく利用できるので、解熱剤を使いすぎなくとも体温を調節することができます。

リンゴは皮ごと食べるとさらに効果が
さらに、リンゴを皮ごと食べると、皮にたくさん含まれているポリフェノールの効果も得ることができます。リンゴには何種類ものポリフェノールが含まれていて、ほかのポリフェノールと同様に抗酸化作用があります。風邪による炎症を抑え免疫力を上げてくれる効果もあります。せっかくリンゴを食べるなら、このポリフェノールの効果も取り入れたいですね。
始めに紹介したリンゴに関することわざですが、アメリカでは実際に1日1個の生のリンゴを食べている人が、食べていない人に比べて「医者知らず」なのかどうか検証した論文があります。すると、リンゴを食べている人は、少しではありますが処方薬を服用することが少ないという結果がでました。現代では、リンゴのおかげで医者知らずというより「薬知らず」になれるかもしれません。

<参考文献>
■JAMA Internal Medicine
『Association between apple consumption and physician visits:appealing the conventional wisdom that an apple a day keeps the doctor away.』
■NPO法人PDN(Patient Doctors Network)
『栄養必要量の算出』
■テルモ体温研究所
『冷え性対策「食」編』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
りんごを皮ごと食べていない人は、風邪を引くと人より完治するまでに時間がかかるリスクが1.85倍になります。
A: りんごは皮ごと食べていますか?
B: 風邪を引くと人より完治するまでに時間がかかりますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
27.0%
161人 |
73.0%
436人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
5.53%
33人 |
21.44%
128人 |
23.62%
141人 |
49.41%
295人 |
Z検定値 | 2.83 |
---|---|
オッズ比 | 1.85 |
信頼度 | 99.5% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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