誤った“除菌”に予防効果なし!?
リスク
2.62倍

誤った“除菌”に予防効果なし!?

除菌し過ぎないようにしていない人は、インフルエンザにかかると長引きやすくなるリスクが2.62倍になります。

解説

インフルエンザ予防に薬用石けんはいらない?

毎年、秋冬の時期になるとインフルエンザの流行が心配ですね。インフルエンザの感染経路は主に2つあります。1つは”飛まつ感染”。飛まつ感染は、インフルエンザに感染している人の咳やくしゃみを、別の人が吸い込んでしまうことで起こります。もう1つは、”接触感染”。接触感染は、ウイルスがついた手で口や鼻などをさわることでおこります。インフルエンザにかかっている人に近づかなくても、その人が触れたり、その人の咳がかかったりした場所をさわることで、インフルエンザウイルスが手についてしまうこともあるので要注意です。

インフルエンザウイルスの感染を防ぐために大切なのは、なんといっても手洗いです。せっけんや液体ソープを手につけて十分に泡立て、指の間や手首までしっかり洗って十分にすすぎましょう。手洗いによってウイルスを手から取り除くことができます。また、自分自身がウイルスを周囲に広めてしまわないよう、咳やくしゃみがでるときはマスクをして、しぶきをまかないようにする「咳エチケット」も大切です。

インフルエンザのみならず、さまざまな感染症の予防には、毎日の手洗いが大切です。もしかすると、感染症の予防効果を高めるために、”抗菌”や”殺菌”、”除菌”といった効果をうたった”薬用せっけん”を使用している人もいるかもしれませんね。確かに、薬用せっけんは、普通のせっけんよりもしっかり病原体を取り除いてくれそうな気がします。

しかし、そもそもインフルエンザはインフルエンザウイルスによっておこる病気です。インフルエンザウイルスは”ウイルス”であり、”細菌”ではないので、すべての除菌剤がインフルエンザウイルスの不活性化に効果があるわけではありません。また、最近では、薬用○○と呼ばれる製品には特に効果がないばかりか、薬用成分の問題点も明らかになってきているのです。

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薬用せっけんの成分で薬剤耐性菌が増えるリスクも

米国食品医薬品局(FDA)は、薬用せっけんやボディウォッシュに含まれる“トリクロサン”と呼ばれる抗菌成分のリスクについて長年調査してきました。そしてついに、「1年以内にトリクロサンなどの19種類の成分を含む抗菌せっけんの販売を停止する」という強い措置を、2016年に発表したのです。

FDAの発表によれば、薬用せっけんを使って手を洗うと手はきれいになりますが、「普通のせっけんと比べて感染症が減る」といったことにはつながらないことが明らかになりました。そうであれば、特別な抗菌成分が入っていなくても普通のせっけんで手を洗えば十分ということになります。

特にトリクロサンの場合、たくさん使うことによって、薬剤耐性菌を生み出してしまうリスクが指摘されています。通常の抗生物質が効かない薬剤耐性菌による感染症は、子供や高齢者など体力の弱い人では重症になりかねません。「薬用せっけんで除菌ができる」と信じてせっせと手を洗っていたら、除菌どころか新しい感染症につながりかねないのです。

また、風邪やインフルエンザなど、鼻やのどから感染する病気をうがいによって予防できるかどうか調べた報告によると、水によるうがいならば感染症にかかりにくくなったとされていますが、ヨード液を使ったうがいではそれほど効果がなかったとされています。ヨード液がのどの常在菌のバランスを変えてしまい、かえってウイルスが入り込みやすくなったり、のどの細胞にダメージを与えている可能性も考えられています。

日本でも、厚生労働省が薬用石けんにトリクロサンなどの成分を使わないように指導を進めています。また、うがい薬によるうがいは、インフルエンザの予防法として推奨する方法ではなくなっています。イメージだけの除菌、抗菌グッズよりも、基本的なせっけんでの手洗い、水でのうがいをしっかり行い、十分な睡眠とバランスのとれた食事で基本的な免疫力をアップさせましょう。

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<参考文献>
■U.S. FOOD&DRUG ADMINISTRATION
『5 Things to Know About Triclosan』

■厚生労働省
『FDAの措置の根拠となる有効性及び安全性の情報について』

■American Journal of Preventive Medicine
『Prevention of Upper Respiratory Tract Infections by Gargling』

■東京都感染症情報センター
『インフルエンザ(seasonal(regular) influenza)』

編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部


統計データ

除菌し過ぎないようにしていない人は、インフルエンザにかかると長引きやすくなるリスクが2.62倍になります。

A: 除菌し過ぎないようにしていますか?
B: インフルエンザにかかると長引きますか?

A
はい いいえ
67.3%
208人
32.7%
101人
B
はい いいえ はい いいえ
6.47%
20人
60.84%
188人
7.12%
22人
25.57%
79人
Z検定値 2.93
オッズ比 2.62
信頼度 99.6%
集計数:309人
  • ・オッズ比
    AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。
  • ・信頼度
    信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
    (統計学のZ検定を使用)
    >数値の見かたはこちら

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