解説
誰もが目指したいポジティブシンキング
「ポジティブシンキング」、または「肯定的思考」や「プラス思考」と呼ばれる考え方は、ストレスから身体を守るための素晴らしい思考回路であるといえます。
どんなことも失敗なく、順風満帆に進むなら、ストレスと無縁ですごすことができますが、実際は人生には必ず失敗や事故がつきものです。それでも、常に次のステップに向けた行動を自分で前向きに選ぶことができれば、本当に幸せな人生が歩めるはずです。いつでもポジティブに考えることができれば、自分から幸せな人生をつくり出すことができるというわけですね。
ポジティブシンキングをしっかり身につければ、仕事や遊び、家庭、スポーツなど、人生の全ての場面において楽しく、前向きに、そして次の成功に向けた行動が可能となるでしょう。では、ポジティブシンキングと行動の変化との関係は、科学的に検証されているのでしょうか?

心理学的に実証されたポジティブシンキングと行動の変化との関係
心理学の分野において、ポジティブシンキング(肯定的思考)がストレスを軽減、回避したり、不健康な状態から回復したり、社会に復帰したりといった変化に関連があると、複数の研究で報告されています。
ポジティブシンキングにも種類があり、新しいことに興味や関心をもち、さまざまなことにチャレンジしていく「新奇性追求」、自分の感情をうまく制御できる「感情調整」、明るくポジティブな未来を予想し、その将来に向けて努力しようとする「肯定的な未来志向」といった考え方があります。
ある研究報告では、こうした考え方やコントロール方法を身につけていることは、ストレスを打破しやすい精神的回復力を持つ人の思考回路の特徴であると述べています。まさしく、ポジティブシンキングは「精神的に柔軟で強い人」の特徴となるのですね。
反対に、常に否定的な考えを持っている人はストレスを抱えやすいだけではなく、人生設計を立てることや目標をつくることが上手くできないこと、問題解決能力が低いことが報告されています。そのため、何かのトラブルを抱えるとストレスを強く感じ、そのストレスが原因によって生活がよりいっそう困難になってしまう…と悪循環を招いてしまうことがあるのです。
また、感謝したことを2週間にわたって毎日書き続けた人は、愚痴などの否定的な感情を書き続けた人よりも、肯定的な感情を抱くことが多くなったという報告もあります。
ただし、人それぞれの関心事や感情、経験などが全く異なるため、誰もが同じ方法でポジティブシンキングを身につけることは難しいとされています。テレビなどで「これなら簡単」という方法が紹介されていたとしても、自分に合わなければ全く効果がないことになります。
ポジティブシンキングに関連する情報は書籍をはじめ、たくさんあります。「きっと自分に合う方法がある」と考えて出会いを待つのも立派なポジティブシンキング。自分で幸せな人生をつくり出せるよう、前向きに目指しましょう。

<参考文献>
■埼玉学園大学紀要. 人間学部篇
『肯定的感情に関する心理学的実証研究の紹介』
■聖徳大学 研究紀要
『心理的ストレスプロセスにおけるレジリエンスの機能について:大学生を対象とした検討』
■カウンセリング研究
『資料 ネガティブな出来事からの立ち直りを導く心理的特性--精神的回復力尺度の作成』
執筆 : 理学療法士 田中渉
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
ものごとを肯定的に考えるようにしていない人は、ストレスを感じやすくなるリスクが4.73倍になります。
A: ものごとを肯定的に考えるようにしていますか?
B: ストレスを感じやすいですか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
65.4%
202人 |
34.6%
107人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
38.19%
118人 |
27.18%
84人 |
30.1%
93人 |
4.53%
14人 |
Z検定値 | 5.12 |
---|---|
オッズ比 | 4.73 |
信頼度 | 99.9% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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