解説
アルコールの効果
適量のアルコールは身体によい効果をもたらします。風邪をひくと熱が出ますが、この熱は病原体が発しているのではありません。身体が病原体をやっつけるために体温を上げているのです。
体温が1度上がると、免疫力が上がるともいわれていますが、アルコールにも身体を温める効果があります。普段から適度にアルコールを摂取して免疫力を上げることで、身体に入り込んだ病原体を症状が出る前に退治することができるのです。さらに、アルコールは血管を広げる作用があるので、普段から適量のアルコールを摂取していると、身体の隅々に酸素や栄養が回りやすくなり、丈夫な身体を作ることができます。

適量のアルコールとは?
では、適量のアルコールとはどの程度の量を指すのでしょうか?厚生労働省は、1日当たりの適度な摂取量として、純アルコール20g程度としています。これは、ビールなら中ビン1本、日本酒なら1合ほどになります。
この量はあくまで目安であり、誰もが当てはまる数字ではないことに注意しましょう。女性は男性よりもアルコールの分解が遅いので、男性の半分以下がよいとされていますし、高齢になればアルコールの摂取量を減らさなければなりません。肝臓に病気があったり、薬を服用している人は、医師の指示に従ってお酒をやめる必要があります。
アルコール量と健康はかなり微妙な関係。アルコールと死亡率を示したグラフには、“Jカーブ”という関係がみられます。アルコールを全く摂取しない人と比べて、少し摂取する人の方が死亡率は低下します。しかし、アルコール量が増えてくると、全く飲まない人よりも死亡率が上がってしまう、という結果になったのです。
つまり、アルコールは飲めば飲むほど身体によいのではなくて、適量を飲むことが身体によいのですね。個人にとっての適量はその人の体質やその日の体調によるので、見極めが必要です。

風邪をひいてしまったらアルコールは避ける
普段から適量のアルコールを摂取することは、風邪に強い身体を作る可能性がありますが、一旦風邪をひいてしまったら、アルコールは逆効果になることがあります。肝臓にアルコールの処理という負担をかけることで免疫力が低下してしまったり、アルコールを尿から排出するときに身体の水分を奪ってしまうからです。
風邪をひいたときに民間療法として飲む卵酒やホットミルクは、熱を加えてアルコール分を飛ばしているもの。自分にとって適切な量を知った上で、上手にアルコールの力を生かしていきましょう。

<参考文献>
■厚生労働省 e-ヘルスネット
『飲酒のガイドライン』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
週に1回以上、飲み過ぎない程度にアルコールを飲んでいない人は、風邪を引くと長引きやすくなるリスクが2.28倍になります。
A: 週に1回以上、飲み過ぎない程度にアルコールを飲んでいますか?
B: 風邪を引くと長引きますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
31.7%
98人 |
68.3%
211人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
6.8%
21人 |
24.92%
77人 |
26.21%
81人 |
42.07%
130人 |
Z検定値 | 2.95 |
---|---|
オッズ比 | 2.28 |
信頼度 | 99.6% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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