解説
消化酵素の宝庫で身体に優しい大根
私たちが何気なく食べている大根。実は大根の歴史は古く、今から5000年以上前の古代エジプトまでさかのぼります。なんと、ピラミッドの壁画にも大根が描かれていたというほど。私たち人間は、歴史とともに大根を食べてきたということが分かります。
日本では、日本最古の歴史書「古事記」の中で仁徳天皇が詠んだ恋歌にも登場します。室町時代には一般庶民にも普及したといわれています。
大根の旬は11月から2月ごろまでの冬の季節。しかし、現在では、ほぼ一年を通じて手に入る野菜です。旬の季節である冬は甘みが強く、栄養素がぎゅっと詰まっていますので、シーズンにはぜひたくさん食べてほしい野菜です。
大根には、糖質、たんぱく質、脂質の消化酵素がバランス良く含まれているので、食事の消化吸収を助けて胃腸の負担を軽くすることができます。消化酵素を体内で作られる分だけに頼ると、身体への負担が大きくなります。ですから、毎日の食事の中でしっかり補給するとよいのです。
大根のピリッとした辛味の成分は“イソチオシアネート”という栄養素です。抗炎症作用、抗菌作用、発がん抑制などの効果があります。ビタミンCも多く含まれるので、風邪などの感染症予防のためにも大根をしっかり食べて予防しましょう。

カルシウムが決め手?睡眠を助けるカルシウムイオンの役割
大根は消化を助けるので、胃もたれやお腹の不快感を覚えやすい人には嬉しい野菜です。これだけでも快適な睡眠を守るといえますが、大根と睡眠の関係はそれだけではありません。
大根と睡眠との関係を探るカギは、カルシウムにあります。最近では、カルシウムが睡眠と覚醒のバランスをコントロールするとされ、睡眠にとって重要な役割を持つことが分かってきました。カルシウムが細胞内に入ると、神経細胞の興奮を抑えて眠りを助けてくれます。反対に、神経細胞にカルシウムが入らないようにすると睡眠時間が減るという報告もあるのです。
夜、おだやかに寝付けるようにするために、カルシウムが多い食事を心がけたいですね。野菜の中で大根はカルシウムが多い方ですが、生では水分も多いために100gあたりの量は少なくなります。そこで、大根を細く切って乾燥させた“切り干し大根”がおすすめ。カルシウムの多いじゃこや桜エビを補った切り干し大根の炒り煮は、睡眠を助ける総菜といえそうです。大根の青い葉にもカルシウムが多いので、葉付きのものは捨てずにしっかり食べましょう。
牛乳と大根を合わせれば、カルシウムをダブルで取ることができます。牛乳に含まれるアミノ酸は睡眠ホルモンを作る原料にもなりますので、寝付きを良くする効果が期待できます。そこで、大根入りミルクスープはいかがでしょうか。身体が温まるスープは、深い眠りを誘う食事でもあります。眠りが浅くて悩んでいるときには試してみましょう。

<参考文献>
■JAひまわり
『大根のお話し』
■科学技術振興機構 サイエンスポータル
『細胞内カルシウムが眠りを導いていた!?』
■文部科学省 食品成分データベース
『食品成分ランキング』
執筆 : 管理栄養士 高橋美枝
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
月に1回以上、大根を食べていない人は、眠りが浅くなるリスクが2.73倍になります。
A: 月に1回以上、大根を食べていますか?
B: 眠りが浅いですか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
83.2%
257人 |
16.8%
52人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
32.36%
100人 |
50.81%
157人 |
10.68%
33人 |
6.15%
19人 |
Z検定値 | 3.26 |
---|---|
オッズ比 | 2.73 |
信頼度 | 99.8% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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