解説
日光で増やそうビタミンD
インフルエンザのシーズン、手洗いなどの基本的な予防だけでなく、普段の生活でかかりにくい身体を作っておきたいですね。インフルエンザなどの感染症にかかりやすいのは免疫力が低下したときです。そこで、午前中に日光を浴びることと免疫力との関わりについて説明しましょう。
ここで大切なのが、ビタミンDです。カルシウムの吸収を助け、骨を強くすることで有名なビタミンDですが、実はこのビタミンDは免疫にも関わっているのです。実際にインフルエンザの予防にビタミンDが有効であったという報告もあります。
ビタミンDは細かく分類すると6種類ありますが、人間にとって大切なのは、日光(紫外線)を浴びると体内で作られるタイプのビタミンDです。普段の食事からとることができるビタミンDは、必要な量の半分未満。残りの半分以上は、日光を浴びることによって皮膚で作られ、まかなわれているのです。ですが、最近では日焼けや皮膚がんを避けるために、日光にほとんど当たらない人が増えています。
また、新生児を対象にした調査では、2割近くの赤ちゃんにビタミンDが不足しているとされています。ビタミンDは免疫細胞の発生に関係があり、ビタミンDが不足すると免疫力が低下してしまうのです。

体内時計を整えると免疫力が上がる
ビタミンDを作るだけであれば、日光を浴びる時間帯はいつでもOKです。しかし、日光を浴びることによって得られる効果は、ビタミンDの合成だけではありません。日光には、体内時計をリセットとするという効果もあります。
免疫力の強さは1日の中で変動していて、免疫力が強くなる時間と弱くなる時間があり、このリズムは体内時計の影響をうけています。日光を午前中のできるだけ早い時間に浴びると、体内時計が正しい時間になるように調節されるため、免疫力のリズムも整えられるというわけです。
体内時計が乱れると、免疫力にどのような影響が出るのでしょうか。たとえば、がん細胞は免疫細胞によって排除することができます。しかし、体内時計が乱れることで、免疫力のリズムも崩れてしまうと、免疫細胞によって排除しきれなかったがん細胞が大きくなってしまうおそれがあります。
しかし、がん細胞ができてしまった後でも、体内時計を整える操作をおこなうことで、がん細胞の増殖を抑えることができたという研究結果もあります。体内時計を整えるということは、免疫にとってそれほど大きな役割をもっているのです。

どのくらい日光を浴びるといいの?
では、実際にどの程度の時間、日光を浴びればいいのでしょうか。体内時計のリセットのためにはたった30秒程度でよいといわれています。また、ある研究によると、ビタミンDを1日に必要な量作るためには日光の強い沖縄のお昼で夏は約3分程度、冬で8分程度、日光を浴びる必要があるそうです。
冬の北海道では1時間以上も必要ともいわれています。雲がどの程度出ているのかといった天気や皮膚の色、日焼け止めの使用、服装など、浴びる人の要因でも大きく異なります。顔と手だけでなく、腕や足など日差しをうける場所を増やすと日光浴の時間を短くすることができます。
カーテンを開けて窓ガラス越しに浴びるだけでも、体内時計のリセットには効果がありますが、ビタミンDを増やすために必要な紫外線は窓ガラスを通り抜けられません。外で日光を直接浴びる時間を増やして、インフルエンザに備えましょう。

<参考文献>
■国立環境研究所
『体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定−札幌の冬季にはつくばの3倍以上の日光浴が必要−』
■MSDマニュアル 家庭版
『ビタミンD』
■産業技術総合研究所 産総研TODAY
『体内時計遺伝子がもつがん増殖を抑える力』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
午前中に、日光を浴びる生活をおくっていない人は、インフルエンザや感染症にかかりやすくなるリスクが3.38倍になります。
A: 午前中に、日光を浴びる生活をおくっていますか?
B: インフルエンザや感染症にかかりやすいですか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
60.8%
188人 |
39.2%
121人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
2.27%
7人 |
58.58%
181人 |
4.53%
14人 |
34.63%
107人 |
Z検定値 | 2.68 |
---|---|
オッズ比 | 3.38 |
信頼度 | 99.2% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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