解説
発酵で増える味噌の栄養
最近では、多くの人で減ってるかもしれない味噌汁を飲む機会。しかし、日本で長く食べ続けられてきた、いわばソウルフードともいえる味噌汁には、健康を守るための栄養素がたくさん含まれているのです。
味噌の材料は大豆です。大豆は「畑のお肉」といわれるほど、たんぱく質が豊富に含まれています。また、血液中のコレステロールや中性脂肪の量を下げ、体脂肪を減らす効果がある成分も多く含んでいます。さらに、現代の食事で不足しがちなマグネシウムやカルシウム、鉄分や亜鉛などのミネラルも豊富です。そして、味噌は大豆を発酵させてできる食品。つまり、大豆から味噌へと発酵することで増えた栄養も摂取することができるのです。
この発酵によって栄養素が増える、というところが味噌のポイントです。味噌には身体の細胞の酸化を防ぐさまざまな物質が含まれていますが、そのひとつに“メラノイジン”という味噌が熟成する過程で大豆のアミノ酸と糖が結合して作られる栄養素があります。メラノイジンは細胞の老化を進めてしまう活性酸素を除去し、免疫力を高めたり、疲労がたまりにくい身体にしてくれるのです。特に、赤味噌にはメラノイジンがたくさん含まれています。
では、赤味噌がよくて白味噌は栄養学的に劣ってしまうのでしょうか?いえいえ、そうではありません。白味噌にはGABA(ギャバ)がたくさん含まれているのです。一時期、GABAの入ったチョコレートがブームになりましたが、GABAにはストレスを低減する効果があります。神経の高ぶりを抑えて、過剰な興奮を抑制することでリラックス効果が得られるのです。寝つきが悪い不眠症の人にもオススメの成分です。
その他にも、味噌にはがんになる危険性を減らしたり、骨粗しょう症や糖尿病を改善させたり、さらには美白効果まであるという研究発表がされています。

味噌汁の塩分はそれほど心配しなくていい?
味噌汁は「高血圧の人はひかえましょう」と注意されることもあり、塩分のとりすぎが気になるかもしれません。味噌汁は1杯あたりおよそ1.2〜1.5gの塩分を含んでいます。ですが、塩分を味噌からとった場合と、同じ量の塩分だけをとった場合では、味噌の方が血圧は上がりにくいという実験報告があります。これは、味噌にはカリウムも含まれていて、カリウムを尿に排泄するときに塩分も一緒に排出されているためと考えられています。つまり味噌の塩分は身体に溜まりにくいのです。

できるだけ手作りの味噌汁を
健康のことを考えるなら、味噌汁は手作りの方がオススメです。インスタントの味噌汁には、保存のためのアルコールや味を良くするための化学調味料などが入っています。
また、どちらかといえば、インスタント味噌汁は野菜や海藻、豆腐などの具が少なめです。カリウムやビタミンをプラスできる青菜などの野菜、腸の調子を整えるワカメなどの海藻やキノコ、味噌と同じ大豆でできた豆腐など、具をプラスすれば、手作り味噌汁はさらに心強いパワーフードになりますね。

<参考文献>
■日本醸造協会誌
『味噌の種類・調理法および添加香辛料による抗酸化力の変化』
■日本醸造協会誌
『多麹麦味噌の機能性-GABAを中心に-』
■佐々木敏著 女子栄養大学出版部
『佐々木敏の栄養データはこう読む!』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
手作りの味噌汁を飲んでいない人は、週に1回以上、体調不良になりやすくなるリスクが2.45倍になります。
A: 手作りの味噌汁を飲んでいますか?
B: 週に1回以上、体調不良になりますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
76.1%
235人 |
23.9%
74人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
9.39%
29人 |
66.67%
206人 |
6.15%
19人 |
17.8%
55人 |
Z検定値 | 2.76 |
---|---|
オッズ比 | 2.45 |
信頼度 | 99.4% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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