解説
キスで増える男性・女性ホルモン
キスは愛情表現のひとつですが、キスをすると実は身体の中でさまざまなホルモンが増えます。すると、身体にいいことが増えたり、不安な感情が打ち消されるといった効果もあるのです。
まず、男性ホルモンの“テストステロン”、そして、女性ホルモンの“エストロゲン”も増加します。テストステロンは男性の唾液にも含まれているのですが、キスをするときに女性が男性の唾液を受け入れることで、女性のテストステロンも増加します。テストステロンは、筋肉を増やしたり、やる気や記憶力を高めたりする働きもあるので、健康的な生活に一役買ってくれそうですね。
一方、テストステロンが不足すると、“男性更年期障害”といわれる体調の変化がおきます。男性更年期障害は女性の更年期障害と同様、根拠のない不安感やイライラ感などが出やすくなり、食欲が低下したり睡眠障害があらわれたりします。その結果、体調不良を引きおこす可能性もあるのです。女性の場合は、エストロゲンが減ると更年期障害の症状があらわれます。男女いずれもホルモンが減少することで体調を悪くしたり、身体の不安が増すのです。

キスには痛みを取り除く効果も
それだけでなく、キスによって“エンドルフィン”というホルモンも増加します。エンドルフィンはリラックスしているときに出る脳波のα波を増やすほか、イライラの原因であるコルチゾールを減らしてくれます。さらに、エンドルフィンそのものには麻薬よりも強い鎮痛効果があるのです。つまり、エンドルフィンは自然の鎮痛薬の役割をしてくれます。人はどこかに痛みが出ると「何かの病気なのかも?」不安になりがちです。キスはこんな痛みに対しても有効なのですね。

なんでも病気に結びつけてしまう「心気妄想」
「愛情ホルモン」「幸せホルモン」という別名をもつ“オキシトシン”も、キスで増えるホルモンです。オキシトシンはセロトニンというホルモンを増やす効果があるので、キスによりオキシトシンもセロトニンも増えることになります。
セロトニンは、不足するとうつ病になるといわれているホルモン。うつ病の症状の中には「心気妄想(しんきもうそう)」という、病気ではないかと過度に心配してしまう症状があります。誰でもあるような軽い頭痛でも「脳腫瘍かもしれない」「死んでしまうかもしれない」と常に考えてしまいます。
キスによってさまざまなホルモンが不安を打ち消し、心身ともに真の健康を手に入れることができるのです。実際に、朝出がけのキスをする男性は、出がけのキスをしない男性と比較して、平均して5年寿命が長かったという報告もあるのです。大事なパートナーとキスを交わして健康に長生きしましょう。

<参考文献>
■Evolutionary Psychology
『What’s in a Kiss?The Effect of Romantic Kissing on Mate Desirability』
■Human Nature
『Menstrual Cycle Effects on Attitudes toward Romantic Kissing』
■PLoS Medicine
『Migration and Health:A Framework for 21st Century Policy-Making』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
週に1回以上、キスをしていない人は、健康状態に不安が起きやすくなるリスクが2.13倍になります。
A: 週に1回以上、キスをしていますか?
B: 人よりも健康状態に不安はありますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
28.8%
89人 |
71.2%
220人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
8.41%
26人 |
20.39%
63人 |
33.33%
103人 |
37.86%
117人 |
Z検定値 | 2.84 |
---|---|
オッズ比 | 2.13 |
信頼度 | 99.5% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
>数値の見かたはこちら