解説
「ウイルス対策」と「免疫力強化」で風邪をブロック!
私たちの最も身近な感染症の1つである風邪。風邪を予防するためには、マスクやうがいをしたり、手洗いをしたりと、感染経路となる口や手を清潔に保つのが基本です。マスクや手洗いによって、体内にウイルスが入り込むのを防ぐというわけですね。
しかし、マスクやうがい、手洗いは、日常に存在するすべてのウイルスの侵入を防ぐことができるわけではありません。マスクや手洗いなどをしないよりは、感染する確率は大幅に変わりますが、それでも必ずウイルスは体内に入ってきてしまうのです。
体内にウイルスが侵入するのを100%防ぐことはできません。そこで、体内に入ったウイルスを認識し、体外へ排出する働きである免疫が重要になってきます。免疫は身体が健康であれば正常に働いてくれます。健康な状態とは、栄養バランスのよい食事や規則的な生活によって、自律神経が整っている状態のこと。ですから、食事や睡眠のバランスが崩れると、免疫が十分に働かず、ウイルスに対する対応も弱くなってしまうのですね。風邪に対処するためには、免疫力を高めることも大切なのです。
では、免疫力が低下している状態で風邪を引いてしまうとどうなるのでしょうか。通常の免疫力を持っている人だと、風邪の初期症状として鼻水や痰などが見られます。実は、これは身体を守る免疫が働いている証拠でもあります。したがって、これらの症状を無理に抑えつける必要はありません。軽めの風邪であれば、気づかないうちに鼻水や痰も治まるでしょう。しかし、免疫力が著しく低下している人では、このような風邪の初期症状すら現れないこともあります。さらには、急に重篤で生命の危険がある状態に陥ってしまう可能性まであるのです。

日光浴で体温も免疫力もアップ
それでは、免疫力を高めるためにはどうすればよいのでしょうか。そのカギは「体温」にあります。人の体温は免疫力と深い関わりがあり、平均体温が1℃下がると免疫力は40パーセント近く下がり、反対に1℃上がると5〜6倍も活性化するといわれています。つまり、免疫力を高めるためには、適度に高い体温であることが大切なのです。
適度に高い体温を保つ方法のうち、比較的簡単にできるのが日光浴。実は、体温と太陽の光は密接に関わっている可能性があるのです。太陽光と身体の内側の“深部体温”との関連を調べると、日中に太陽光を浴びると深部体温の1日の中での変動が改善されたという報告があります。健康の基本である規則正しい生活を作るためにも、太陽光を朝に浴びるとよいでしょう。
太陽の光の刺激を眼から脳に送ることで、身体は朝と夜とをハッキリと区別できるようになります。すると、睡眠ホルモンとよばれる“メラトニン”の分泌が促され、1日の中での体温の変動もうまく調節されます。さらに、太陽光に含まれる赤外線には、心地よいぽかぽかした刺激となって血行を改善し、自律神経を整えてくれる効果があります。
朝、太陽光を身体に浴びることは、活力を高め、元気な生活リズムを作ることにもつながります。日光浴はさまざまな面から免疫力を高める効果が期待できる、非常にパフォーマンスのよい健康法。しかも誰でも手軽にできる方法ですから、風邪がはやる前に習慣にしましょう。

<参考文献>
■福井県立大学論集
『認知症高齢者における日光浴と深部体温および睡眠覚醒リズムに関する研究』
■国立環境研究所
『絵とデータで読む太陽紫外線-太陽と賢く仲良くつきあう法-』
■時事通信社 家庭の医学
『気圧調整健康法と低体温』
■厚生労働省
『健康づくりのための睡眠指針 2014』
執筆 : 理学療法士 田中渉
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
日光を浴びる生活をおくっていない人は、風邪を引きやすくなるリスクが1.79倍になります。
A: 日光を浴びる生活をおくっていますか?
B: 人よりも風邪を引きやすいですか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
64.0%
382人 |
36.0%
215人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
10.72%
64人 |
53.27%
318人 |
9.55%
57人 |
26.47%
158人 |
Z検定値 | 2.85 |
---|---|
オッズ比 | 1.79 |
信頼度 | 99.5% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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