解説
いい寝汗と悪い寝汗
寝汗というと、「気持ち悪い」「せっかくお風呂に入って寝たのに朝またシャワーが必要」など、良いイメージがないかも知れません。ですが、実際には寝汗といっても良い寝汗と悪い寝汗があります。
良い寝汗は良い睡眠をとるために必要なものです。寝つきを良くするためには身体、特に脳の温度を下げる必要があります。そのために通常でも1晩にコップ1杯以上の寝汗が出ていて、そのほとんどは寝つくときに出ています。このときの汗は“エクリン腺”という場所から出ていて、汗の成分はほとんどが水です。ですからこの寝汗はサラサラしていて、起きたときにはもう汗がひいているので、あまり苦にはならないのです。
一方の悪い寝汗とは、寝ている間にずっと出ている汗で、水分以外の成分が多くベタベタしています。朝起きたときに身体がベタついたり、ひどい場合には不快感で夜中に目が覚めるほどです。このように悪い寝汗は睡眠を妨げる原因になり、体臭が強くなったり、皮膚が乾燥する原因にもなります。
悪い寝汗の原因は、風邪をひいたときなど病気による発熱や、ストレスなどで自律神経が乱れたとき、アルコールを摂取した後に体内で作られ、二日酔いの元になる有害な“アセトアルデヒド”の排出などがあります。

寝汗には水で大丈夫
たくさん汗をかいたときには、水分補給が必要です。とくに発熱やアルコールの分解のために水分を失った後は、しっかり補給しなくては脱水になってしまいますね。では、運動でたくさん汗をかいたらスポーツドリンクを飲むのと同じように、寝汗のときにもスポーツドリンクが必要なのでしょうか?
スポーツドリンクの主な成分は、水以外に塩分や糖分、製品によっては筋肉疲労の回復を目的としたアミノ酸が含まれています。しかし、寝汗は基本的にエクリン腺から分泌されていて、いい寝汗であれば塩分はあまり含まれていません。もし水分補給をするのであれば、何も含まれていない水でよいのです。就寝中は筋肉に負担をかけているわけではないので、糖分やアミノ酸も余分です。
ただし、風邪や胃腸炎などで栄養が十分にとれず、嘔吐や下痢で体液が著しく失われてしまっている場合であれば、スポーツドリンクを飲むことは病状に合っています。ですが、それ以外であれば基本的に水で十分でしょう。
スポーツドリンクには実はかなりの糖分が含まれています。汗をかくからといって必要でもない糖分をとりすぎると、そのエネルギーは余ってしまいます。積み重なれば肥満や糖尿病へとつながり、糖尿病の合併症による発汗異常で大量の汗をかく…ということにもなりかねません。
寝汗で困っている場合は、まずはその原因をとりのぞきましょう。お酒を飲み過ぎている人は控えて、ストレスが多い人は規則正しい生活を心がけましょう。脳の温度が下がると寝つきが良くなることを紹介しましたが、エアコンで部屋を涼しくしすぎると、汗の出口が閉じてよい寝汗が出ず良い睡眠が得られないことがあります。エアコンはあまり温度を下げすぎず、むしろ湿度を下げる除湿機能を使いましょう。汗が蒸発することで体温を下げるので、2つの意味で効果的です。そして暑いときには冷感のある枕などを使うのがオススメです。

<参考文献>
■花王株式会社
『汗の基礎知識』
■久留米大学 内分泌代謝内科
『清涼飲料水ケトーシスをご存知ですか?』
執筆 : 医師 春田萌
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
清涼飲料水代わりにスポーツドリンクを飲まないようにしていない人は、年に1回以上、パジャマや寝具が濡れるほどの寝汗をかきやすくなるリスクが2.14倍になります。
A: 清涼飲料水代わりにスポーツドリンクを飲まないようにしていますか?
B: 年に1回以上、パジャマや寝具が濡れるほどの寝汗をかきますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
57.3%
177人 |
42.7%
132人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
9.39%
29人 |
47.9%
148人 |
12.62%
39人 |
30.1%
93人 |
Z検定値 | 2.76 |
---|---|
オッズ比 | 2.14 |
信頼度 | 99.4% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
>数値の見かたはこちら