解説

手軽に食べられるファーストフード店の朝食メニュー。ボリュームも控えめで、ヘルシーな感じがしますが、実はそこが落とし穴。
定番のデニッシュやビスケット、植物性コーヒークリームには、動脈硬化のリスクを上げるトランス脂肪酸が多く含まれているのです。
見た目にはわからない、この隠された油脂で、コレステロール値が上がってしまう可能性が高まります。つい習慣化して、食べすぎてしまうことにならないよう、ご注意を。

朝食メニューに隠された「油脂」とは
ファーストフード店によくある、モーニングセット。朝限定のメニューや、控えめなボリュームがうれしくて、つい利用してしまうことはありませんか。
定番メニューのデニッシュ、ビスケットなどを使ったサンドイッチは口当たりが軽く、すぐに食べられる手軽さも忙しい朝にはぴったりですよね。サラダやヨーグルトがついているセットもあり、イメージではなんとなくヘルシーな感じもします。
ですが、つい習慣化して食べすぎてしまうのは危険です。知らず知らずにある油脂を取りすぎて、コレステロール値が上がってしまうリスクがあるのです。
パンやビスケット類の、サクサクした軽い食感の元となっているのが、ショートニングなどの油脂類です。ショートニングとは、植物油や魚油など、常温ではさらさらしている液状の油に水素を添加することで加工し、ラードのような固形の脂に近い性質にして酸化しにくくしたもの。乳製品などにも少し含まれていますが、通常の天然の油脂とはそもそもの分子の構造が異なります。
そして近年注目されているのが、ショートニングの中に含まれている“トランス脂肪酸”。これが、コレステロール値に大きく影響を与える正体なのです。

動脈硬化につながる!?トランス脂肪酸
トランス脂肪酸のリスクは、これまで世界で大規模な研究がいくつも行われてきました。WHO(世界保健機関)の報告では、トランス脂肪酸が、血管の中にこぶ状の老廃物として溜まって動脈硬化を引き起こすLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を上昇させること、逆に動脈硬化を防ぐはたらきがあるHDLコレステロール(善玉コレステロール)を減少させることがわかっています。
2種類のコレステロールを単純に“悪玉”“善玉”と分けていいものかどうか、実はまだ議論があります。とはいっても、少なくともトランス脂肪酸が動脈硬化を促すことは、間違いなさそうです。
日本人の平均的なトランス脂肪酸の摂取量はそんなに多くなくて、1日平均ではWHOが「このくらいまでなら」とする量の7割ほどです。決して高くないのですが、脂肪の多い食品を食べすぎたり、偏った食事を続けると、平均を超える可能性があると指摘されています。油断しちゃだめですよね。
普段の食生活で、多くの人が気にしているコレステロール値。明らかに油で揚げてあるメニューなら、「これはコレステロール多いかも」と意識して控えめにしやすいですよね。ですが、パンなど、見た目に油っぽくない食品に隠された油までは、どうしても意識しにくいもの。そこが落とし穴なのです。
ファーストフード店のモーニングセットにはほかにも、パンケーキに添えたマーガリンや、コーヒーに入れる植物性のクリームなどにも、トランス脂肪酸が含まれています。「ハンバーガーにフライドポテト」とは違う、見た目が少しヘルシーっぽいモーニングセットでも、手軽さからつい食べすぎてしまわないように気をつけたいですね。

<参考文献>
■内閣府 食品安全委員会
『トランス脂肪酸ファクトシート』
■佐々木敏、菱田明監修 第一出版
『日本人の食事摂取基準 2015年版』
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
朝食にファーストフードを食べている人は、コレステロール値が基準値を超えるリスクが3.24倍になります。
A: 朝食にファーストフードを食べないようにしていますか?
B: コレステロール値は基準値を超えていますか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
87.8%
253人 |
12.2%
35人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
13.54%
39人 |
74.31%
214人 |
4.51%
13人 |
7.64%
22人 |
Z検定値 | 3.13 |
---|---|
オッズ比 | 3.24 |
信頼度 | 99.8% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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