漫画で味わった「あの感動」を大切に
リスク
2.25倍

漫画で味わった「あの感動」を大切に

週に1回以上、漫画を読んでいない人は、人よりも感動することが少なくなるリスクが2.25倍になります。

解説

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「漫画を読んで感動したことがありますか?」と聞けば、「大人になってから『ドラえもん』を読み返したら不覚にも泣いちゃった〜」という人も多いのではないでしょうか?(カッコ内には、お好きな作品タイトルを当てはめてお読みください)。

素晴らしい漫画作品を読んで、感動して泣いたり笑ったりして、大好きな漫画作品があるから生きてこられた、という人はたくさんいることでしょう。

こうした漫画の力が、心理学の面からもだんだん実証されつつあります。漫画を読むことで、どのように心が動いて、そして心の健康につながっていくのでしょうか?

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ノンフィクションよりも物語のほうが感動する?

「フィクションには、自分を変え他者を知る力がある」というカナダのトロント大学の心理学者による研究があります。ストーリーに深く入り込み、登場人物の心の動きや起きているできごとを理解しようと努力することで、読者は自分と周りの社会をもっと理解できるようになるということです。大好きな作品に深くのめりこんで読むことが、自分自身の成長につながっていくのですね。

こうした読書体験を何度も繰り返すことで、読者は共感する能力や、人の心がどのように動くのかを学んでいくことができるというのです。

フィクションの中には、動物や架空の生き物、宇宙人などを主人公にした作品もたくさんありますが、そうした生き物の姿を借りて、人と同じように社会を作ってお互いに協力したり対立したり、問題を解決する姿が描かれます。キャラクターの姿は動物でも、読者がそこから読み取っているのは人間のことなんですね。

架空のストーリーを描くフィクションに対して、実際に起こったできごとを描くノンフィクションでは、現実の社会に起こったことや関係する人々の感情、思考などを追体験できるので、これも同じように人を理解する力になります。したがって、「現実のことのほうが、より実感できるのでは?」と思いがちですが、実は物語を読むほうが理解と共感力が高まるというから驚きです。

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感動のプロセス

物語が共感力アップにつながるのは、読者がストーリーに深く入り込んで感動するからですよね。では、物語を読んで生まれる「感動」って、何から来るのでしょう?

心理学の立場からは、「感動」は2つのタイプに分類できるといいます。ひとつは「ストーリー」に感情を揺さぶられるタイプの感動。漫画や文学作品、映画やドラマなどを読んだり観たりしたときの感動はこちらですね。

ストーリーに感動する場合に感じる感情の中でも大きなものが、“喜び”。キャラクターたちが課題に直面してくじけそうになったときの不安や緊張、それを乗り越えて何かを成し遂げたときの「よかったー!」という素直な喜びの気持ちは、感動そのものです。スポーツや冒険ものの漫画で味わうことができますね。

また、“悲しみ”もストーリーに伴って現れる大きな感情ですね。大切な人との出会いと別れをていねいに描いたストーリーで大泣きした、といったことがある人も多いでしょう。日本の複雑で豊かなストーリー漫画では、“喜び”と“悲しみ”の感動を生むシーンが1本の作品にいくつも含まれている作品も少なくありません。

もうひとつのタイプは、ストーリー性のない感動。自然の素晴らしい景観や芸術作品を見たときの感動です。

さて、「そもそも、心理学でいうところの『物語』に漫画は含まれるの?」と気にしている人もいるかもしれません。漫画を否定する言葉も多い中で、そこは大事なポイント。世界最大の図書館協会である、アメリカ図書館協会の発行する研究誌では、漫画を「ヤングアダルト文学を拡張したもの」と位置づけています。つまり、図書館研究の世界でも漫画は立派な文学の一形式と考えられているというわけです。

最初に説明した、物語によって共感力をアップする力、これはキャラクターが立っている作品に強いといいます。漫画は、ビジュアル面でもストーリー面でもキャラクターの存在が強く感じられますよね。大好きな漫画をゆっくり読んで、豊かな感動を味わいましょう。

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<参考文献>
■リンク・デ・ダイエット 世界の最新健康・栄養ニュース
『フィクションはなぜ心の健康に良いのか?』

■Cognitive Studies
『『感動』喚起のメカニズムについて』

■Young Adult Library Services
『Are You There God? It's Me, Manga:Manga as an Extension of Young Adult Literature』

編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部


統計データ

週に1回以上、漫画を読んでいない人は、人よりも感動することが少なくなるリスクが2.25倍になります。

A: 週に1回以上、漫画を読みますか?
B: 人よりも感動することが少ないほうですか?

A
はい いいえ
36.2%
112人
63.8%
197人
B
はい いいえ はい いいえ
7.12%
22人
29.13%
90人
22.65%
70人
41.1%
127人
Z検定値 2.94
オッズ比 2.25
信頼度 99.6%
集計数:309人
  • ・オッズ比
    AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。
  • ・信頼度
    信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
    (統計学のZ検定を使用)
    >数値の見かたはこちら

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