解説

私たちの身体の中では、代謝の過程でさまざまな化学反応が起きています。「化学反応なんて自然じゃないのでは!?」なんて驚かないでくださいね。脂肪が分解されてエネルギーに変わるのも、お酒が無害な水と二酸化炭素になって身体の外に出て行くのも、どれも化学反応なんです。
そしてこの化学反応が円滑に進めるためには、体温を36~37℃に保つことが重要です。体温を維持するのに必要なことは、ずばり食事をすること。食べることによって身体の中で熱が発生するのです。食事の後に身体が温かくなるのは、このしくみがあるからこそ。
なかでも、肉や魚などのタンパク質は、食事の後に生みだされる熱の量が多いことがことがわかっています。野菜だけしか食べないダイエットは冷えのもと。肉を食べて身体を温めましょう。

体温調節が大切なワケ
私たちは、食事からさまざまな栄養素を取り入れて、体内で消化吸収し代謝しています。身体の中では、この代謝の過程でさまざまな化学反応が起きています。
体内の化学反応が円滑に進むには、体内の温度が適切である必要があります。体温を36~37℃に保つことが、体内の代謝を円滑にする条件なのです。体温が高すぎても低すぎても代謝は円滑には進みません。気温が高くなってくると、汗を出して身体の熱を冷ますようにしたり、寒くなってくると身震いをして熱を作ろうとしたり、身体の体温調節機構が働いているのは、体内の化学反応を円滑にして代謝をスムーズにできるようにするためだったんです。

食べるだけで体温アップ!?
“食事誘発性熱産生”というちょっと難しい言葉があります。これは「食事をした後、安静にしていても代謝量が増大すること」をいいます。つまり、何かを食べると運動しなくても身体が温まり、エネルギーを消費するということなんです。実はダイエットのカギともいわれている身体のしくみなので、もうしばらくおつきあいくださいね。
食事をした後、体内に吸収された栄養素が分解され、その一部が熱となって放出されます。このため食後は、安静にしていても代謝量が増えます。食事をした後、身体が温かくなるのはこのしくみによるものなんです。熱いスープや鍋もののような、温かいものを食べたから起きるというわけではなく、常温のものを食べても熱が発生します。
このとき生みだされる熱量、つまり消費カロリーは栄養素の種類によって異なります。いちばん熱に変わりやすいのが、肉や魚などのタンパク質。摂取エネルギーの約30%と大きなエネルギー消費になります。ご飯や麺、パンなどの炭水化物のみの場合は約6%、脂質のみ摂取した場合は約4%代謝量が増えることが分かっています。タンパク質は体温の上昇に重要な働きをしているといえますね。
普通の食事は、タンパク質と炭水化物、脂質を組み合わせて食べますから、食事誘発性熱産生は全体で約10%くらいと考えられています。

タンパク質と体温上昇
タンパク質をちゃんと取ると、体温の上昇につながることがわかっていただけたと思います。ところで、過度なダイエットで「太るから野菜しか食べてない!」という人はいませんか?しかし、それでは逆効果。タンパク質をとった方が、熱が多く生みだされるのですから、エネルギー代謝量も増えるんです。タンパク質を多く含む食材を食べて体温を上昇させ、体内の代謝を円滑にしてあげることで、余分なエネルギーも利用することができるというわけ。
そこで、肉の中でもタンパク質を効率よく取れる脂肪の少ない赤身の肉を選びましょう。食べたときに熱に変わり、そしてタンパク質が筋肉になれば、その後もずっと身体を温めてくれます。肉を食べて体温上昇を!

<参考文献>
■構成労働省e-ヘルスネット
『食事誘発性熱産生 / DIT(しょくじゆうはつせいねつさんせい)』
執筆 : 管理栄養士キクチエミコ
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
月に1回以上、肉類を食べていない人は、平熱が36度未満になるリスクが13.94倍になります。
A: 月に1回以上、肉類を食べていますか?
B: 平熱は36度未満ですか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
98.1%
303人 |
1.9%
6人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
25.89%
80人 |
72.17%
223人 |
1.62%
5人 |
0.32%
1人 |
Z検定値 | 3.09 |
---|---|
オッズ比 | 13.94 |
信頼度 | 99.7% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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