解説

栄養の偏ったジャンクフードは、身体だけでなく、心にも悪い影響を及ぼします。ジャンクフード中心の食生活は、気分が落ち込む、集中力が続かないなど、うつ病の症状につながりやすいことがわかってきました。
さらに、ジャンクフードに多く含まれる脂肪も危険です。脂肪をとりすぎると、脳で記憶をつかさどる部位、海馬が小さくなり、記憶力が低くなってしまうという報告もあります。バランスのとれた食事で、心と身体の健康を保ちましょう。

うつ病につながるジャンクフード
ハンバーガーにピザ、市販のドーナッツにスナック菓子、インスタントラーメン…高カロリーかつ高塩分なジャンクフードは、一瞬で食欲が満たされた気になる危険な食べ物。栄養がかたよっていて身体に悪いことはわかっていても、ついやめられなくなっていませんか。実際に、炭水化物や加工肉などを油で揚げたものがメインの食生活は、肥満や高血圧など、生活習慣病につながる可能性が高いといわれています。
それだけではありません。ジャンクフードは、心の健康にもよくないことが研究によって明らかになってきました。
スペインのある大学では、これまでうつ病と診断されたり、うつ病の薬を飲んだことがない人たち約9000人を対象に、およそ6年にわたって生活習慣と健康状態を調査しました。すると、このうちの約500人に、気分が落ち込む、集中力が続かないなどのうつの症状が出るようになりました。彼らの食生活をみてみると、ジャンクフードを日常的に食べていることがわかったのです。
この中には、タバコを吸う、週に45時間以上働くなど、ほかの健康リスクを併せ持つ人も多くいました。時間に追われ、ストレスの多い生活が続くと、手軽に食欲を満たせるジャンクフードで食事を済ませがちになります。これらの悪しき生活習慣が、身体だけでなく心の健康をおびやかすことになるのかもしれません。
ジャンクフードとうつ病の関係について調べた研究は他にもいくつかあります。それらによると、ジャンクフードの多い食生活をしている人は、そうでない人よりもうつ病になるリスクが50%以上高くなると報告されています。

脂肪が記憶力を下げる?
ジャンクフードと脳の機能の関係を調べた研究もあります。オーストラリアのある大学によると、60代前半の人たちの脳を調べたところ、ジャンクフードを日常的によく食べている人とそうでない人で、脳の機能に違いが出たといいます。
その差は、記憶をつかさどる部位、海馬に現れました。砂糖の入った甘い飲み物やしょっぱいスナック菓子、ベーコンやソーセージなどの加工肉などのジャンクフードを多く食べていた人たちは、野菜や果物、魚を多く食べていた人よりも海馬が小さくなっていたというのです。海馬が小さくなると、物忘れが増え、認知症になりやすくなってしまいます。この結果は、性別や運動、タバコを吸う習慣など、他の影響を取り除いても同じでした。
なぜ、ジャンクフードが脳の機能を損なってしまうのでしょうか?その理由として、栄養のかたよりが考えられます。ジャンクフードは、エネルギーの代謝を助けるビタミンB1などの、脳の働きにとって大切な栄養素が少ない食べ物。さらに近年、ジャンクフードに含まれる脂肪の多さが、悪影響の原因ではないかと研究されています。
米国ジョージア医科大学は、エネルギーの60%以上が脂肪という、非常に高脂肪の食べ物をマウスに与え、その脳を調べました。すると、本来は脳を守るはずの免疫細胞が、脳の中で情報のやりとりをしている神経細胞のつながりを壊してしまったといいます。このため、マウスは新しいことを覚えられなくなってしまいました。
同じことが、人間の脳で起こる可能性は十分に考えられます。脂肪分の高いジャンクフードを食べ過ぎると、脳がうまく働かなくなり、集中できない状態になってしまうかもしれません。その結果、気持ちが落ち込んだりやる気が出なくなったりと、健康な心でいられなくなることもあるでしょう。
幸いなことに、マウスの食事を脂肪分の低いものにしたところ、2ヶ月で体重は元に戻り、脳の機能も回復したそうです。最近ジャンクフードが多いな…というあなたも、今日からその習慣をやめれば大丈夫です!野菜や果物、魚の多い、しっかりとバランスの取れた食生活で、心と身体の健康を保ちましょう。

<参考文献>
■Public Health Nutrition
『Fast-food and commercial baked goods consumption and the risk of depression.』
■ディーキン大学
『Does junk food shrink your brain?』
■リンク・デ・ダイエット 世界の最新健康・栄養ニュース
『高脂肪食は脳のシナプスを食べるよう免疫細胞を促す』
編集 : my healthy(マイヘルシー)編集部
統計データ
ジャンクフードをあまり食べないようにしていない人は、人よりも集中力が続かなくなるリスクが1.93倍になります。
A: ジャンクフードをあまり食べないようにしていますか?
B: 人よりも集中力が続かないほうですか?
A | |
---|---|
はい | いいえ |
57.6%
166人 |
42.4%
122人 |
B | |||
---|---|---|---|
はい | いいえ | はい | いいえ |
15.28%
44人 |
42.36%
122人 |
17.36%
50人 |
25.0%
72人 |
Z検定値 | 2.59 |
---|---|
オッズ比 | 1.93 |
信頼度 | 99.0% |
- ・オッズ比
AをしないとBになるリスクがX倍になることを示しています。 - ・信頼度
信頼度はデータの関連性の正しさを表しています。
(統計学のZ検定を使用)
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